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妊娠は想像以上に大変だった

妊娠は、想像以上に大変だった。

つわりがあるのは知っていた。
数日で回復するノロウイルスや夏風邪でもだいぶつらいのに、
それが数週間、数か月と続くのは恐ろしかった。

実際、それは妊娠発覚とほぼ同時にやってきた。

全く嘔吐しない日もあれば、1日に5回嘔吐する日もあった。
「食べたい」と思うものしか食べられなくなった。
逆に、揚げ物でも麻婆豆腐でも、
そのとき「食べたい」と思うものは、たいてい食べられたから不思議だった。
いちばんひどいときには、水も思うように飲めなかった。
経口補水液にはだいぶ助けられた。
携帯を見ることも、本を読むこともできず、
ただひたすら眠り、眠れないときは天井を眺めて、
1日、1日と数えて過ごした。

それでも、「つわりはつらい」と知っていたから、
どこかで「こんなものだろう」と思えていた。

***

「安定期に入ったら楽になるから。」なんて言ったのは、どこの誰だろうか。

双子妊娠に安定期はないとはいえ、胎盤ができあがると体調は安定する(可能性が高い)と聞いていた。
5ヶ月に入ったあたりから、少しずつではあるが、水が飲めるようになり、食べられるようにもなっていった。
しかし、それと引き換えに、お腹が重くて苦しくて、
トイレに行くために立ち上がるのも億劫だった。
便秘になり、それによって吐き気が増し、
頻尿になり、夜中に何度もトイレに起きた。
つわりで体力が減っていて、家の中を歩くだけでも息が切れた。
お風呂に入るとふらつくし、吐き気が増すので、
4日に1度、意を決してシャワーを浴びた。
頭がかゆくなるほうが、その後の気持ち悪さよりまだマシだった。
画面や活字を見ると目が疲れて、吐き気と頭痛が増した。
ラジオや音楽も頭の中でガンガン響いた。
ただ、何もせず寝ていることしかできなかった。

一般的な妊娠であれば、体力をつけるために運動をしなさいと言われる時期。
でも、双子だから安静にしなさいと言われる時期。

妊娠してから、まだ折り返し地点でしかなくて、
お腹はこれからどんどん重くなるはずで、
便秘もどんどんひどくなるはずで、
運動さえできず、体力が戻らない中で、
残りの妊娠期間を過ごして、出産して、
産後になって、子育てをしなければならない。
いったいどうなってしまうのだろうと、不安が増すばかりだった。

***

つわりが終われば仕事に戻れるなんて幻想だったし、
みんな働いているのだから、という事実は、
励ましどころかプレッシャーでしかなかった。
歩くのさえままならない、車に乗るのも吐き気がする状態で、
なんとか病院にたどり着き、待合室で待って、
診察を受けて、途中休める場所を確保して、
なんとか家にたどり着き、布団の中に倒れ込んだ。

通院後はいつもより吐き気が増して、頭痛も増して、
1週間かけて回復し、その翌週には通院の繰り返しだった。

***

何度も何度も、気持ちが、折れそうになった。
いや、折れたままなんとかやり過ごした。

妊娠は、想像以上に大変だった。

※この記事は、出産前に書いていたものを、加筆修正して公開しています。

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