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年の差夫婦と死なない約束

佐々木ののかさんのツイートから考えはじめた。

結婚式での約束

友人の結婚式に出席した日のこと。
新郎が新婦に改めてプロポーズをした返事として、
新婦は、「3つの約束してください。」と言った。

そのうちのひとつが、

先に死なないこと。
せめて、そのための努力を怠らないこと。

だった。

新郎は、新婦の9歳年上。
人の生死のタイミングなど、コントロールできるものではないし、
その順番が順当だったとすれば、新郎がだいぶ先に死ぬことになる。

でも、だからこそ、約束を交わすのだろう。
願いをかけるように。祈るように。

約束を確認してしまう

私たち夫婦も、夫が年上の年の差夫婦。
結婚を考えたとき、何度となく頭をよぎった。

先に死ぬ可能性が高いこの人と、結婚していいのだろうか。

結局、結婚したのだけれど、
先立たれる覚悟が決まったわけではない。

結婚してからも、意味がないとわかっていても、何度も確認してしまう。
「先に死なないと約束して。」
「長生きすると約束して。」

そのたびに夫は、「死なないよ。」と言う。
保証など何もないのに。希望を重ねるように。

死を赦す

父の恩師が亡くなった。癌だった。
70歳を過ぎたくらいだっただろうか。

葬儀から帰ってきた母が、こう言った。

いつもニコニコしていて、奥ゆかしい雰囲気だった奥さんが、
「もう、頑張らなくていいと、赦してあげました。」と言っていたのには、驚いちゃった。
赦す、なんていう言い方をする人だったんだなって。

確かに、「赦す」という言葉は、きつい印象を与えるのかもしれない。

でも、こちらも年の差夫婦。
年上の夫に先立たれることは、何度となく考えてきたのだろう。

そして、もしかしたら、約束をしていたのかもしれない。
前述の結婚式での夫婦のように。
ときどき確認しあってしまう私たちのように。

この先、夫を失った人生を歩んでいかないといけない。
それでも最期の瞬間、奥さんは、夫が死にゆくのを赦したのだ。

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