2021年の100冊 #24 「檸檬」(梶井基次郎)
鮮明で克明な風景画を観ているような小説でした。八百屋に並んだ果物のシワまで、絵の具で細かく描かれているような。
2021年の100冊、ジャンル問わずとにかく本を読んで勉強することを目的に開始。ログはスマホで15分で書き上げることを目標にしています。
2021年2月27日、24冊目はこちら。青空文庫で無料で読めます。
繊細な風景画と、そこに描かれている、じっと見ないとわからない心の動き。美術館に行って、一つの大きな絵の前に立ってじっくり観ているような小説。時間的にも、ちょうどそのくらいの時間で読み終わる短文です。
京都のうらぶれた街の風景。どこかへ行ってしまいたい。そんなときに目にとまったレモンの美しさ、そしてその美しさが興奮を誘い、ちょっとした猟奇的な行動に。一般人の日常に、興奮という非日常的な感覚が理性にモヤをかけ、気まぐれを起こすちょっとした背徳感。
・・・というほど主人公は大げさなことはしていないのですが、そういうドキドキ感に通ずるものがあると感じました。
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とても短い文章なので、これはこの文章がそのまま評価されたのか、梶井基次郎が書いたから評価されたのか、どちらなのか気になりました。
梶井基次郎の代表作で、初出の6年後に単行本化されて小林秀雄などが本格的に高く評価してから認められるようになった日本文学の傑作だそうです。
梶井基次郎(1901〜32)・・・20篇余りの小品を残し、31歳の若さで肺結核で没した。
梶井基次郎は当時のごくふつうの文学青年の例に漏れず、夏目漱石や森鷗外、有島武郎や志賀直哉などの白樺派、大正期デカダンス、西欧の新しい芸術などの影響を受け、表立っては新しさを誇示するものではなかったが、それにもかかわらず、梶井の残した短編群は珠玉の名品と称され、世代や個性の違う数多くの作家たち(井伏鱒二、埴谷雄高、吉行淳之介、伊藤整、武田泰淳、中村光夫、川端康成、吉田健一、三島由紀夫、中村真一郎、福永武彦、安岡章太郎、小島信夫、庄野潤三、開高健など)から、その魅力を語られ賞讃されている。(Wikipediaより一部改変)
それにしても、とりあえず解説を見ずにちょっとイイコトを書いてみようと思ったのですが、何も出てこないようでサボらずに言語化すれば、新たな味わい方ができるものだとわかりました。
たぶん、これを読み終わるよりも上の数文を書く方が時間がかかりました。そう考えると小説って料理みたいですね。作るのに時間がかかるけど、味わうのは一瞬。満腹感があとにひく。
こうしてnoteに書くことで、檸檬を二度味わえる読み方ができてよかった気がします。思ったほど、酸っぱくなかった。
そうそう、Wikipediaにあって面白かったのは、
(モデルとなる)丸善・京都店には、八百卯で買ったレモンを置き去る人があとを絶たなかったといわれる。(Wikipedia)
とのことです。わかる気がする。
死後50年経って著作権が切れた小説を集めているWebの文庫「青空文庫」で無料ですぐ読めるのでどうぞ。
紙の本なら、素敵な表紙の角川文庫がおすすめです。
(noteログ45分)
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