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Dr.STONEとボヤボヤ病とメガネ(障害について考える)

 長男が「面白いよ!」と教えてくれたアニメ「Dr.STONE」には「スイカ」というド近眼のかわいいこどものキャラクターが出てくる。このアニメはなんらかの理由で人類が石化し、主人公の天才科学少年「石神千空」も石化してしまうのだが、そこから時が経って人類が科学力を失い、原始時代化してしまった未来に石化の解けた主人公が現れて、様々な知識と科学力で仲間を助けていくという話である。そして長男がいうように確かに面白いし、勉強になる。

 そしてその「スイカ」という少年はド近眼で全然物が見えないため、当初は「役立たず」と言われ、ご丁寧に「ボヤボヤ病」という病名までつけられている。しかし主人公の少年が科学の力で「レンズ」を開発し、スイカは「メガネ」というツールを得ることによって大活躍できるようになるのである。

 私もメガネをかけています。この文章をメガネをかけて読んでいる人も多いことでしょう。さてメガネをかけているあなたは、自分を「ボヤボヤ病になった視力障害者」と思っているでしょうか。たぶん思っている人はほとんどいなくて「目が悪いだけのメガネをかけている人」だと思っているはずです。しかし原始時代にタイムスリップしてメガネをマンモスに踏んづけられた瞬間に、あなたもわたしも視力障害者になります。原始時代においては視力が低いことは著しく生存に不利で、獲物を捕まえられず、草むらに潜むライオンの発見が遅れて、あえなく食べられてしまうでしょう。

 このように、障害というのは環境や時代との兼ね合いで相対的に決まるものです。過去に障害であったことが、科学の進歩あるいは人々の考え方の変化によって、障害でなくなることはたくさんあります。ちょうどこれを書いているときに、全く同じことを伝えているtweetを見つけました。

 ここにあるようにその障害の弱点を、
・使用することで生活上の支障を改善できる
・使用しても誰も文句を言わない
・簡単に手に入る
 ツールを「合理的配慮」の下で改善できるのであれば、障害は障害でなくなります。合理的配慮というのは、たとえば学習症のこどもに読み上げ機能のついた教科書を使わせてあげるといった、その子の特性をカバーするツールを使わせてあげることをいいます。刺激に敏感で集中しにくいこどもが教室の一番前に座れるようにするのも合理的配慮です。では気温変化に敏感な自閉スペクトラム症のこどもだけ、クーラーの聞いた部屋で快適に授業をうけるのは・・・。「誰かが文句を言いそう」な気もしますね。

 このように合理的配慮は難しい問題をはらんでいますが、発達障害は現代の日本社会において「障害」と名前がついているものの、性同一性障害がLGBTQとなり、どちらかというと医療の問題ではなく社会の問題になっていったように、発達障害も医療の問題ではなくなって、社会の問題になっていくことが正しい方向であると思っています。おそらく近い将来「相手の気持ちがわかるメガネ」が実用化され、リアルタイムでコミュニケーションをサポートしてくれるようになるでしょう(優秀な後輩の精神科医によると、もうそういうツールはあるそうです!)。ただ、そうなるまでの黎明期には医療(科学)が果たさねばならない役割があることも事実です。その時期を乗り越えるのことはとても大変なのですが、Dr.STONEの天才少年のようには活躍できなくとも、サブキャラくらいにはなれるよう、力を注いでいきたいと思っています。

 発達障害のキホンについてはぜひ下記の動画もご覧ください。


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