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『物性物理学1』§4:格子振動(フォノン)
(1)結合振動子モデルと周期性
結晶中において原子は周期的に並んでおり、原子は平衡位置周りに熱振動する。周期性より、ブロッホの定理を満たす(ブロッホ電子との類似性)。
①古典論
簡単な格子のモデルとして、同じ原子が一次元的に並んだ系を考える。それぞれの原子は、ばね定数kののばねでつながっている。原子間の間隔はaである。
n番目の原子の運動
が、ばねとして振動が伝わっていく。以下で運動方程
『物性物理学1』§3:周期ポテンシャル中の「波」としての電子
(1)分子から固体へ
2原子分子(水素分子H2^+)を考える。つまり、以下の通り、1個の電子をAとBが共有している(共有結合)。
この系のハミルトニアンは、
である。Hψ=Eψの解(つまりエネルギー固有値)を求めたいが、厳密には解けない。
それぞれの1s軌道の線形結合
を波動関数として仮定する。ここで、電子の電荷分布はAとBで対称なので、
よって
なので、取り得る波動関数は
の2つ
『物性物理学1』§2:物質の構造
(1)結晶の構造~周期性と並進対称性~
格子は周期的なのであった。
それぞれの格子点をベクトルで表すと、二次元のときは
3次元のときは
と書ける。a_1, a_2, a_3ベクトルを基本並進ベクトルと呼ぶ。n_1, n_2, n_3は整数である。上図に二次元の例を示す。格子点は周期的に並んでいるので、基本並進ベクトルの重ね合わせで書くことができる。重要なこととして、基本並進ベクトルのとり方
『物性物理学1』§1:自由電子モデルの効用と限界
(1)古典論(粒子)にもとづくモデル(電気伝導)
1896(1897?)年にJ. J. Thomsonによって電子が発見された数年後の1900年に、Paul Drudeによって、「電子がどう流れるのか?」についてDrude理論が提案された。
金属を考えて、電場E(電流I)をかける。前述の通り、物質中では原子核が周期的に並んでおり、自由電子が(電場と反対方向に)格子と衝突しながら進む。
格子と
『物性物理学1』§0:はじめに
この一連のノートは、『物性物理学1』の講義補助資料です。あくまで補助ですので、あしからず。
参考文献としては、
[1]『The Oxford Solid State Basics』(Steven H. Simon)
[2]『物性物理学』(永田一清)
[3]『物性論』(黒沢達美)
あたりを参考にしている。有名どころは、
[A] 『固体物理の基礎』(アシュクロフト-マーミン)
[B]『固
『凝縮系物理学』§5:磁気異方性
§5.1 強い磁石の条件
現在のところ世界最強の永久磁石は、ネオジム磁石Nd2Fe14Bである。1gで鉄1kgを持ち上げることができる。プリウスのモーター部にも使用されており、あまり見えるところにはないかもしれないが、実社会に欠かせない磁石である。
永久磁石に必要な化合物特性は
①大きな磁化があること
②大きな結晶磁気異方性があること
③高い磁気転移温度(>>室温)であること
である。
『凝縮系物理学』§4:絶縁体における磁気秩序
§4.1 フェライトはなぜ磁性をもつのか?
前節では、電気伝導を有する金属の磁性について考えた。この節では、酸化物などの絶縁体化合物を対象にする。
3d磁性金属を含む化合物絶縁体は多くあり、NiO、CoO、FeO、MnO(すべてNaCl型)や、KNiF3、KCoF3、MnF2など酸素を含まないものもある。これらは反強磁性の絶縁体になる。
反強磁性になりやすい理由を考える。例として、Fe酸化物
『凝縮系物理学』§3:金属における磁気秩序
§3.1 磁性を示すのはなぜか?
磁性を示すのは、原子の磁気モーメント同士の間にそろえようとする相互作用があるからである。この「そろえようとする相互作用」を交換相互作用と呼ぶ。
基礎となる電子のハミルトニアンは、運動エネルギー(電子の運動)+ポテンシャルエネルギー(クーロン相互作用)である。クーロン相互作用は電子と電子が反発しあう力で、電気の話であり、直接は磁気モーメントと関係なさそうに見える
『凝縮系物理学』§2.角運動量と磁気モーメント
§2-1.磁化の担い手は何か?
結晶は原子が周期的に配列して出来ており、磁化は個々の原子の磁気双極子モーメントμ_iの総和として書かれる。
磁化Mがある(=強(フェリ)磁性)ということは、①μ_iがゼロでないことと②足してゼロでないことの両方が必要である。①について、磁場ゼロでμ_i=0であるときは閉殻原子に相当し、反磁性が主になる。μ_iはあるが足してゼロになる場合は、常磁性、反強磁性、らせ
『凝縮系物理学』§1.磁性の基礎
§1-1.電磁気学と磁性
電磁気学では、電気と磁気に関する法則を学んだ。磁気を感じる典型例は磁石である。磁石はN極とS極の対を基本構造とすることはよく知られている。磁性の目標の一つは、「なぜ物質は磁石になるのか?をミクロに説明したい」ということである。この目標の達成を本授業の主な目標とする。
一つの棒磁石を考え、周囲の磁力線を考える。磁力線はN極から出て、S極へと入る。
マクスウェル方程式よ
『凝縮系物理学』§0:はじめに
この一連のノートは、講義の補助資料として作成したものです。自分の担当である「磁性の基礎」をテーマにして概説しています。あくまで補助なので、あまり期待しないでください。内容については以下の教科書を参考にしましたが、内容の誤りについては当然私の責任です。
[1] 伴野 雄三『磁性』:個人的に読みやすいと思って気に入っている。
[2] 宮崎 照宣・土浦 宏紀『スピントロニクスの基礎』:磁性についての
力学§5:運動する座標系
前節までは原点を固定し、座標系が時間変化しない場合を考えた。この節では座標系が固定されない場合の取り扱いを考える。
§5.1 ガリレイ変換
座標系が等速直線運動する場合をガリレイ変換と呼ぶ。
上の図のように、点Pの位置を2つの座標系で表すと、
となる。ここで、変換後の座標系の原点O'は、一定速度Vで元の座標系から見て運動することを使って式変形した。加速度は、時間に対して二階微分をとるので、