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夏休みの自由研究

小学生の頃、夏休みの宿題はわりと早めに済ます方だった。
ドリルや読書、その感想文、絵日記など、毎日コツコツと進めていた記憶がある。
そして、いつも最後まで苦戦したのが自由研究と工作だ。
発想、独創力に欠けていた私は、一体どんなテーマで何を研究していいかさっぱり浮かばなかったし、不器用だったから工作も毎回苦戦した。
だから自分がどんな自由研究を提出したか、その記憶がいっさい無い。もしかしたら提出してないのかも知れない。
クラスや学年で、びっくりするような研究、天体だとか科学的な実験みたいなものを、模造紙いっぱい色とりどりに、図解なども入れて作成している同級生が毎年何人かいて、それはそれは感心して見ていた。こういうのが本当に勉強ができるという事なんだろうと今思う。余談だが、当時は模造紙のことを「とりのこ用紙」と言っていた。

これが自由研究だったのかどうかはっきりとは覚えてないが、シャンプーする時には、事前によく髪を濡らした方が泡立ちがいい、というレポートを提出した記憶がある。ノートに書いたような気がするから、自由研究ではなかったのかも知れない。
それにしてもそれを見た先生はどう思っただろうな。学級委員長とかしていた自分のそんなアホみたいなレポートを、担任の先生はどう感じていただろう。

工作は、一応「創作例」みたいなのが渡されていて、それを見ながらやっていたが、やはり上手く出来なかった。木の板とかゴムとかを使うなにか。動くおもちゃのようなものだっただろうか。
見かねた兄が「これを、こうして、違う!もっとこっちに引っ張って」など、横について熱心にアドバイスしてくれていたが、私があまりにも出来なさ過ぎて、しまいには兄が泣いた。
ごめんね、お兄ちゃん。

植物の成長記録みたいなのもあったかな?
洗面器に、学校からもらって来た稲を植えて、その成長記録をつけていた。
2階の洗濯物干し場の横辺りに置いていたのだが、ある日野良猫が全部かじってしまっていた。だいぶ伸びていたのに、稲刈りしたあとのようになっていて泣いた。
小学生の頃住んでいた家は、2階の屋根に野良猫たちが普通にいて、家の中にも普通に入って来て、畳や布団の上でくつろいだりしていた。2階に上がる度にびっくりして「こら!」と追っ払っていたものだ。
今、保護猫ちゃんと一緒に暮らしているが、ただただ猫っ可愛がりしている。
かつて、怖くてびっくりして追い払っていたのが嘘のようだ。
そして、うちの猫は食べないが、ネコ草なんてものがあるように、猫も草を食べることを知り、あの時野良ちゃんが稲をかじったことに今更ながら合点がいっている。

そう言えば、うちの娘の夏休みはどうだっただろう。
娘の自由研究とやらを手伝った記憶が全然ない。けてきただけだろうか。
自由研究は選択科目で、ほかの宿題をやっていたのかも知れない。

親子読書感想文は入選し、私と娘は飛び上がらんばかりに喜んだ。
後日、小さな文化センターで表彰式があった。選ばれたのはどうやら学校で2人だけらしい。もう1人は同じクラスの山田さん。
山田さんのお母さんに会った時「一緒ですね!向こうで会いましょうね!」なんてとびっきりの笑顔で言ったが、お母さんは静かに微笑み返してくれただけだった。
会場に着き表彰式が始まると、私たち親子はすぐに名前を呼ばれ、壇上で「入賞」の賞状を受け取り、そのまますぐ席に戻った。一瞬で終わったものの、なんだか誇らしい気持ちだった。

いろんな小学校から各親子が来ていたようだが、山田さんは最後の最後に名前を呼ばれた。
「市長賞」だった。
賞状をもらうだけではなく、受賞した感想文を山田さん、お母さんの順で読みあげていた。
全然「一緒ですね!」じゃなかった。

それでも、娘は普段、賞状なんてもらったことなかったし、私たち親子のいい記念になったことは間違いない!

毎日暑い日が続いている。
だろうか。かも知れない。という曖昧な表現ばかりになってしまったが、暑くて出かける気にもならず、食器を片付けながら、遠い夏休みの日のことをぼんやりと思い出している。

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