ただ会うために、逢いたくて。

この人とずっと一緒にいたい。そんな願いを持つのは、おこがましく思える。叶わなくて当たり前の「ずっと」を願うなんて、贅沢だ。それなのに、「ずっと」の有効期限をなんらかの形で求めたくなる自分に幻滅する。

私の中で「私たち」とくくるのは隣にいてくれるあの人ではなく、まだ遠くに行ったあの人のほうだ。傍に寄り添ってくれるあの人とはまだ、IとYouの関係。そう気づく瞬間が痛い。

自分が自分ではないような感覚に陥る。あの人の隣にいると。今まではサラサラ記せた「大好き」の4文字を手紙に書くこともためらわれて、記した瞬間に引かれないかという想いが胸をよぎる。気持ち悪いと思われないだろうかと考え、何度も何度も書き直す。まるで初恋に身悶える10代みたい。そんな自分は滑稽だけれど、新鮮で、嫌いではない。

こういえば相手の心を掴めるだろうという、いつもの打算的な自分の考えも身を潜める。いつの間にこんなにも、誰かを想うことを怖がり、臆病になったんだと思わされる。

恋愛が楽しいだなんて、嘘だと思ってた。泣いて、苦しくて、逢えなくて、体を求められる。それが私の中の恋愛の定義だった。「お前の話す言葉は難しい」「よくわからん」「ポエムみたい」。そんな反応に笑って笑って、考えをおしこめるのが恋愛だった。

みんなが興味を持つ事柄、スポット、ブランドにはまったく興味がなく、夜な夜な凄惨な殺人事件を調べたり、偉人の格言に浸ったりするほうが好き。傍から見れば意味が分からない行動を冷めた目で見られたり、茶化されたりするのが日常だった。それなら、誰も関心や興味など持ってくれなくてよかった。ひとりにしておいてほしかった。

近い感性を持った人。「小説は書いてみたいと思わないの?」と聞いてくれたり、殺戮系の小説を同じタイミングで手に取るって笑い合えたり。そんなちょっとしたカケラが嬉しくて、何度も会いたくなる。その肌に触れるのも、その目に私が映るのもおこがましいと思うけれど、また会いたいと思ってしまう。

ただ会うために逢いたい。なにをするわけでもなく、話すために逢いたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?