見出し画像

パリこでかけ 試練のオスロ編 (パリ節約自炊生活番外編)

旦那様の出張にくっついて、ノルウェーの首都オスロに一泊二日で弾丸“初北欧”してきました。とても美しく洗練されたオスロの街は、パリ節約自炊生活始まって以来の試練に満ち溢れた街でもありました…

◆オスロとは??

オスロはノルウェー王国の首都であり、北欧有数の世界都市。海に面しているため古くから海運業が盛んで、ヨーロッパの主要港の一つです。経済面では、北海油田により世界有数の原油輸出国でもあり、他の北欧諸国と並んで「福祉国家」として有名で、医療費と教育費は原則無料。その分、食料品には15%、その他の商品には25%の付加価値税(VAT)が課されます。

ノルウェーは1人当たりGDP・平均寿命・就学率とも世界トップクラス。女性の就業率は高いどころか、男女平等の指標であるジェンダー開発指数(GDI)、ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)共に世界1位で、当然のごとく女性も男性同様に女性も1年間の徴兵義務があるそうです(但し例外あり)。

つまり一言で言うと、典型的な「大きな政府」の国であると言えます。

社員はオスロ中央駅する横のオペラハウス、目の前は海です。街全体はコンパクトで方々を路面電車が結び便利、綺麗で新しく申し分ない印象ですが、“試練”は到着後すぐに始まるのでした…

◆物価高すぎ

ノルウェーの通過はノルウェー・クローネ(以下kr)で、1kr=13.42 円(11/13時点)です。さて、上の写真の中段にあるシンプルなパニーニサンドイッチ59krはいくらでしょう?

59kr×13.42円=792円

高っ!では、その下のコーラはいくらでしょう?

29kr×13.42円=389円

高っっっ!高級スーパーではありません、街中にあるセブンイレブンの値段です。

そう、ノルウェーは世界でも有数の高物価国なのです。トリップアドバイザーの旅行者物価指数2013では世界一物価の高い都市にオスロが選ばれています。

こちらの写真はオスロ中央駅内のフードコート的なレストランです。写真付メニューをご覧ください。

パスタカルボナーラ  153kr → 2,053円
牛肉炒め       225kr → 3,020円
フィッシュ&チップス  148kr → 1,986円
ハンバーガー     159kr → 2,134円

牛肉炒めに至っては居酒屋の「8品2時間飲み放題」料金に相当しますね…このブログをご覧の皆さんは、私がパリの物価が高い高いと文句を垂れているのをご存知だと思いますが、パリの皆さんごめんなさい、上には上がいました…

◆暗すぎ、寒すぎ

北欧なので寒いのは覚悟して行きましたが、到着した16:30の時点でこの暗さです。緯度が高いので夏は日出4:00ー日没22:30と日が長い一方、11月は日出7:30ー日没16:20となり、最も日長が短い1月は日出9:15ー日没15:20と、日の差す時間が6時間しかなくなります。オスロ中央駅から徒歩10分程度の場所でも、19:00頃は既にお店もスーパーも閉店し、出歩く人も疎らでした。

こちらの写真は14:30ですが、すでにテレサ・テンもびっくりの西日が…

最近日本でもIKEAやフライングタイガー等の北欧系ブランドの影響もあり、同じ北欧のデンマーク発の“HYGGE”(ヒュッゲ)という生き方や価値観が話題になっていますね。様々な意味がありますが、日本語で言えば「足るを知る」や「毎日がスペシャル」(竹内まりや,2001年)に近いのではないでしょうか。前述の北欧系ブランドの販促では「家の中の暮らしを楽しむ」という意味にも使われたりしますが、冬は早く店が閉まるし暗いし寒いし、HYGGEという生き方・価値観が生まれたのも頷けると感じました。

◆お酒に厳しすぎ

ここまでくるともう、完全に力石徹または千代の富士と化し、出歩く気力も体力も無くしている事がお分かりいただけると思います。斯くなる上はホテルで酒でも煽るかと、寒い街に出かけてハタと気づいた事が…

この街には、お酒が、ない・・・?

事前に調べて行けば良かったのですが、ノルウェーは非常にお酒に厳しい国です。

・お酒の商業広告一切禁止
・公共の場所での飲酒は禁止
・スーパーでは平日夜間・日曜・祝日販売禁止
・コンビニはそもそも酒が無い
・買えても通常の25%の税金に加えて最大19.96kr(1Lごと)の酒税
 (よってビール1杯500mlをバーで飲むと1500円程に…)

19:00頃外出した時点で近隣のスーパーは閉まり、コンビニにはお酒がなく、寒い中街を彷徨ったのに収穫ゼロ。バーに入れば良かったのですが物価にびびり、泣く泣くホテルで389円のコーラをチビチビやりました。

念のため記載しておくと、ノルウェー人はお酒は好きなようです。ただ、様々な規制により非常にお酒を入手しにくい状況であるという事です。以下推察ですが、医療費無料(=国負担)の国で、医療費を下げる為に真っ先に政府が考える事は喫煙と飲酒の制限、という事で厳しくなっているのかもしれません。

◆「大きな政府」と幸せのカタチ

たった1泊でしたが、まざまざとノルウェーの「大きな政府」っぷりを実感させられました。ざっくり言うと「大きな政府」とは、平等・均等・高福祉の社会を実現する為に、政府がお節介で国営が多くて税金が高い様な思想又は政策の事です。反対は「小さな政府」で、不平等・不均衡・低福祉だけど低干渉で自由で税金が低い国です。

日本で北欧のニュースを見ると、良く「医療費も学費も無料、失業率が低く老後の心配も無く、国民の幸福度が高い」という側面が強調されがちです。しかし往々にして私たちは現状の思想や政策の中で「その部分だけ」を見て良い・悪いと考えがちですが、そんな社会を実現する為には当然鏡写しで「政府がお節介で国営が多くて税金が高い」状況が発生するわけです。言葉で言うのは簡単ですが、セブンイレブンでサンドイッチとコーラ買って1,000円越えの会計をしてみるまで、私は実感を持てませんでした。

「医療費も学費も無料、失業率が低く老後の心配も無い」事も幸せのカタチなら、「ラーメンと餃子に生中付けて1,000円でお腹いっぱいになる」事も幸せのカタチなのだなと。何を選ぶかはその人・地域・国によって異なって当然ですが、一側面だけを見て芝生を羨むのは危ない事だなと、コーラをチビチビやりながら思うのでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?