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10代の映画は、大人のための映画。ー「もう一度観たいティーン映画BEST5」


恥ずかしいほど周りが見えていなくて、自分勝手で、なんだってできると思っていた10代の頃。
思い返すと、10代ってみんなモンスターだったなと、思います。

ティーンを描いた映画には、すごく大きなメッセージがあるわけではないことが多いですが、たまに映画を通して10代の頃を思い出すことは必要だと思います。あの頃炸裂していた自分って、いまだに変えられない自分の根幹だったりするからです。
今日は、ティーンの少年少女が思い切りティーンしている映画を5つ紹介したいと思います。


音楽で世界を塗り替える
ちょっとイタい田舎町の少年たち

1「シング・ストリート 未来へのうた」(2016)

10代を描いた映画で絶対に観てほしい作品といえば、この作品。
舞台はアイルランドのダブリン。
学校に馴染めない転校生・コズモを中心に、同じ高校でメンバーを募り、バンドを組みます。その理由は、年上の彼女ラフィーナに振り向いてもらうため。

モデル志望である彼女にミュージックビデオに出演してもらうため、コズモは作曲活動に励みます。
彼らがつくるオリジナルソングはどれも魅力的で、この映画が公開される前にサントラにハマってしまったのを覚えています。

映画のメインテーマ「Drive it like you stole it」のミュージックビデオ↑
“盗むみたいに飛ばしていけ。君の人生、君には何だってできる”という歌詞。テンポもよく、なんども聴きたくなります。

ラフィーナのために書かれた曲の数々はどれも言葉選びが素敵で、誰かを純粋に思う、まっすぐな気持ちを蘇らせてくれます。
特にラストのライブシーンは素晴らしい曲が続々と登場するので、必見です!


はみ出しもの万歳!
孤独な少年がみつけた居場所とは

2「 ウォールフラワー」(2012)

これは、コズモに負けないくらいピュアな少年・チャーリーの物語です。原作は、アメリカのロングセラー小説 “The Perks of Being a Wallflower”
“Wall Flower”とは、そのまま「壁の花」という意味で、パーティーなどで人の輪に入れず隅っこの方にいる人のことです。
チャーリーははまさにそれで、友達のいない苦痛な高校生活を送ると思っていました。

そこに、美男美女すぎる兄妹、パトリックとサムが現れます。
学校ではだいたいの人たちが「グループ」に属していますが、彼らはどこにも属さないはぐれもの。学校のルールに縛られず、自分の頭で考えて行動するのです。本当にこんな2人が学校にいて、友達になれたら最高ですね。

2人とチャーリーはどんどん仲を深めていき、次第にチャーリーは「生きている」と感じられる大切な居場所見つけます。それと同時に、それぞれが抱える深刻な問題も浮かび上がってきます。
3人がどのように大きな壁を乗り越えていくのかを、ぜひ見てほしいです。

一番の見所はやはり、主人公チャーリーを演じたローガン・ラーマンの演技。
同じようなキャラクターは他の映画にも登場しますが、「彼は孤独というものを本質的に理解している」とキャスト陣が絶賛するように、ティーン映画の中では間違いなく群を抜いていると思います。


楽しいばかりじゃない
鬱然とした10代の日常

3「パロアルト・ストーリー」(2013)

誰もがキラキラした学園生活を送るというわけではありません。
本作は他の作品に比べて、10代の影の部分にフォーカスした作品だと思います。
主人公テディは気だるい雰囲気の、まさに現代っ子という感じ。
悪友と一緒にこのまま道を踏み外していいのか、自分はどの道に進んでいけばいいのか。見えない未来への不安を抱え、モヤモヤとした時間を過ごしたあの頃を思い出します。

教師はうるさくて、毎日が退屈で、好きな人には気持ちを伝えられない。
楽しい事もあるけれど、鬱然とした抑圧された世界でもあったと思います。そんな若者たちが抱える暗い部分をうまく切り取っていると思いました。

テディとエイプリル(ヒロイン)の初々しさ溢れる表情は、特に素晴らしいです。10代特有の、くすぐったい気持ちを思い出しました。


大切なのは、
答えがないなかで生きる力だ。

4「サムサッカー」(2005)

親指しゃぶりがやめられない高校生、ジャスティン。親には「いい加減にしろ」と怒られ、好きな女の子にも怪しがられてしまいます。でも、彼のより所は親指だけ。さらに、その原因はADHDだと診断されてしまい、治療が始まります。

薬で全てが解決するのか。
変われたとしても、それは本当の自分なのか。

ジャスティンは悩みます。

しかし、何にも依存せずに生きている人なんていません。
恋人だったり、薬物やお酒だったり、それは人によって様々です。この映画では依存の対象が「親指」なので少し気楽に観ることができますが、終わった後は深い余韻が残りました。

物語のキーパーソンはキアヌ・リーブス演じるペリー先生。ジャスティンに投げかける言葉がひとつひとつが心に沁みるので、ぜひ注目してみてください。


彼女たちは大人で、
僕らはただ騒々しいだけの子どもだった。

5「ヴァージン・スーサイズ」(1999)

謎の美少女、5人姉妹のお話です。
彼女たちに魅せられた少年たちの視点で、物語は語られます。謎の多い「女」という生き物を、男(少年たち)と対比して生々しく描く本作。何か明確なメッセージがあるというよりは、10代の女の子ならではの感情や、彼女たちを取り巻く空気感を映そうとした作品だと思います。

タイトル通り、姉妹たちは自殺を図るのですが、その理由はハッキリとはわかりません。
親がものすごく厳しくて自由がなかったからかもしれないし、ただ退屈な毎日に嫌気がさしたのかもしれません。しかし、感受性豊かな10代の少女は危うい感情を抱きやすく、もしかしたら特別な理由はないのではないかと思いました。

“この世界で、まだ彼女はあの時のままなんだ。”

5姉妹の一人であるラックスと恋に落ちた青年・トリップが口にした言葉です。彼女のことを、思い出として強く記憶に焼き付けていることがわかります。
5人姉妹の存在をまるで幽霊のように不気味に描くことで、10代の刹那的な美しさを伝えようとしているのではないかと思いました。監督・ソフィア・コッポラが惚れ込んだという原作の方も読んでみたいです。

ティーンを題材にしている映画は、若い頃に観なきゃいけないと昔は思っていました。
しかし学生生活を終えて大人になった今だからこそ、10代の特別な輝きを強く感じられるのだとわかりました。
この特別な輝きを捉えた作品は、「ティーン映画」という立派なジャンルであり、大人こそ観るべき作品なのだと思います。

ティーン映画は、自分の過去と重るかどうかという点で、感じ方が大きく変わってきます。心にしまってある初々しい記憶の扉を開いてくれる作品を、みなさんがこの中から見つけてくれたら嬉しいです。


こちらの記事は、映画メディア「OLIVE」にも掲載しています。
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