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「えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる」

この本を好きなのだったら、それはもう私の好きな人に間違いない。

好きな本は数あれど、そう思える本はたった1冊だけ。

今日のタイトルにもさせてもらった、この本。

**「えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる」

**

この本は、ジャンルでいうと「ブログ本」にあたる。小山田咲子さんという女性が、数年にわたって綴っていたブログを1冊の本にしたものだ。だけどいわゆる「ブログ本」の印象を軽やかに裏切る、エッセイの真髄のような本である。

「えいやっ」と出会ったのは、大学1年の冬。
大好きな友人の家に遊びにいったときだった。

「ぽんずはきっとこれ好きやと思う」前もってそう教わっていたにも関わらず、自分で買うのがめんどくさくてまだ読んでいなかった。なのに、彼女の家で手に取ったが最後、人の家だというのにページをめくる手が止まらなくなってしまった。



世代のせいか性格のせいか、あんまり「憧れの人」というのはいない。あの人の文章が好きとか、この人の仕事の仕方が好き、とかはあるけれど。だけど小山田さんのことはまるっと全部好きだ。文章しか知らないのに。

会ったこともないのに、私はこの著者の小山田さんのことが大好きだ。

いつも心のすみっこで、彼女の年齢を追いかけながら学生生活を送っていた。なのに気づいたらもう、とっくに彼女の年齢を追い越していた。彼女はもういない。だけどこの本は、若くして亡くなった「かわいそう」な女性の手記なんかではない。強くて、きらめいていて、やさしくて、ときに弱い。

私がずっと憧れている「ブログ像」はきっとこの本なのだと思う。

学生のころ、こんな文章を書きたくて、何度かブログに挑戦した。でも見てくれる人なんていなかったし、友人に打ち明ける勇気もなくて結局挫折しまくった。

うーん、どうやったらうまく伝えられるだろう。自分語りをしたいわけじゃないのに。私の拙い文章で褒めれば褒めるほど、この本の魅力から遠ざかってしまう気がする。

タイトルにもなっている、一番好きなところだけ抜粋させてほしい。世界中を鮮やかにかけぬけた彼女の言葉だ。

 実際のところ旅行ってあんまり得意じゃなくて、地図は読めないし英語も下手だし、スリも誘拐も食あたりも怖いので、私には家でじっとしてる生活の方が向いているのだろう。

 しかし、もう結構息苦しい。日常の雑事を全てとりあえず収めるべき場所に収めて(あるいはなかったことにして)深夜に荷物をまとめ、えいやっと部屋を飛び出す、あの一瞬をやっぱりどうしても愛してると思う。

 穏やか日常に幸せを感じるのと同じ強さで今、いなくなりたい。


この本に関しては、なぜだかうまく言えないけどAmazonリンクを貼りつけるのが不粋な気がしてならない。

気になった人はどうか、ぜひ手にとってみてほしい。友人がひとり増えたような気持ちにさせてくれる、あたたかい本です。

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