見出し画像

句会のような茶会のような・・・「春の桜の展覧会」振り返り

3月30~31日、南青山にあるGallery Aoyama Iyasakaで「S・A・K・U・R・A 春の桜の展覧会」という企画展が開催されました。当日は、4人の勢いある現代作家による桜をテーマにした新作が並び、お客様にサロンのような心地よい空間をお楽しみいただいていました。


桜の開花とともに始まった桜の企画展

今年は3月が寒くて珍しく桜の開花も遅れて、ようやく3月末に花開いたのでした。偶然ではありますが、まるでそれとちょうど歩を合わせるかのように、青山学院の横の道を入っていくと現れるこじんまりとしたGallery Aoyama Iyasakaで展覧会は始まりました。

きっかけはその前の月にあった、猫展。2月22日の猫の日にかけて、猫の作品がならぶグループ展でした。「3月末は桜の作品を一緒に制作して出してみない?」という本企画首謀者MIKAZUKI ART代表で切り絵作家のタンタンさんの声掛けの元に、猫展の出展作家の一部を中心とした4人の力がみなぎっている作家が手を挙げ、展覧会が決まりました。その話があったのは猫展の最終日ですから、そこからほんの1か月間で、各人が新作を創り上げて当日を迎えました。

言い古されているけど、ほんとに「みんな違ってみんなよい」だった

さて当日、ワクワクしながら見に行ってみると、4人の作家の桜をモチーフにした作品がギャラリー内に所狭しと広がっています。「桜」というお題にそれぞれの作家が全力で表現しあうのはまるで句会? 期待を超える見ごたえの、作家の個性が光る桜の作品たちに出会うことができました。

タンタン「反射」

大判の板の上に、対照的に配置展開し満開の桜と水面に映る桜のハーモニーを「反射」と題して表現しました。切り絵とともに重ね塗ねられたアクリルや日本画絵具の質感が古壁のような味を生み、アンティークの屏風のよう。新しさと古さの兼ね備えています。大きさもあり、存在感もあり、未来に向かってレジェンドとなってほしい作家を集めた本展を、精神的に支えている柱のような作品でした。

タンタン「反射」(部分)

ひら子「夜桜」

同じく切り絵とはいえ、ひら子さんは黒と白のシャープかつ気が遠くなるような細かい表現で巨大なサイの旧作とともに、「夜桜」と題して、月のもとに咲く桜を創り上げました。桜は展覧会の本当に前々日くらいまで制作したできたてのほやほや。オレンジの月のに照らされる桜の木は枝も花もグラグラと大きな姿で覆いかぶさってくるよう。サイの背中やしっぽに感じる”生き物”の息遣いが桜にも宿っています。ひら子さんによれば、桜の作品は完成形は3枚組、サイは2枚組なのだそうで、来年は全貌が見られるかもしれません。

ひら子「闇夜」

樫内あずみ「やまのこえ」

同じく息遣いを感じるとはいえ、木々たちの声が重なり大合唱のような世界を現した樫内あずみさんの「やまのこえ」。小さい頃にドライブで見た桜満開の山景色を描いたそうです。花はかわいい桜が持つ黒い幹の強さ。個を超越して全体で迫ってくるような桜の山の白い圧迫感。確かに桜はピンクと連想しがちですが、実際はほとんど白に近いかも。どこかで見たな、でもどこか思い出せない心持になるのは、抽象と具象が入り混じり、心の隙間に何か入り込んでくるような、あずみさんの絵ならでは、でした。

樫内あずみ「やまのこえ」(部分)

荻原久代「揺らぎ」

最後に、だれもが愛さずにはいられないルノアールのような、柔らかい桜の「揺らぎ」を描いたのが荻原久代さん。利尻育ちで、その土地で見た桜を心に思いながら描いたと言います。毎日少しずつ筆を足しながら生まれた作品は、近くで見た時と離れてみた時で全く印象が変わります。近くでみるともはや桜なのかわからない、空間に放たれた光のダンスのようでもあります。その一つ一つの点や筆遣いに、桜の花の柔らかく触りたくなるような肉感も感じられる油絵でした。

荻原久代「揺らぎ」(部分)

アートを囲んで広がる交流の豊かさ

Gallery Aoyama Iyasakaは、昼間はカフェ、夜はバーにもなる、コミュニケーションの場としても魅力的なスペース。絵を観ながら、お客様は作家やそこに居合わせた他のお客様とも交流が広がります。当日はオーナーのわたなべさんが本科的な薄茶を点てて桜餅とともにいただくという花見茶席気分を愉しめました。お茶をいただきがら、気が付けばアートから広がる自由な会話を楽しめるのは、アートが創り出す豊かさそのもの。日ごろからアートになじんでいる方もそうでもない方も気が付けば長居してしまう、小さいながらも贅沢な時空間で私もいろいろな方と交流を楽しみました。アートともに生まれる関係性はいいなあ、また来年も、ここでみんなで桜が見られるといいなあ、そんなことをふと思ってしまう、素敵な展覧会でした。

丁寧に点てられたお抹茶と桜餅に癒される
作品を観ながら会話が広がる
本物のお花見も楽しんだりして

今後のお知らせ
①「藤田嗣治と現代の作家たち」展覧会を開催(4/27-29)

Mikazuki Artは、巨匠のちいさな作品を展示し、そこに集まる作家が将来的に、多くの人たちの心に何かを残すような、インパクトの強い存在となれるように、との願いを込めて、「藤田嗣治と現代の作家たち」展覧会を開催します。(詳細記事はこちら)

「藤田嗣治と現代の作家たち」展覧会
会期時期・・・ 4月27日(土)〜29日(月・祝)11時〜20時
出展作家
樫内あずみ/アクリル ひら子/切り絵 荻原久代/油彩 タンタン/切り絵 石渡真子/色鉛筆 しんじえりこ/切り絵 やまゆりの/アクリル 真野明日人/彫刻 新城梨乃/アクリル画、デジタル画 幸温望
会場・・・Gallery Aoyama Iyasaka
     〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目7-14 VORT AOYAMA101
     表参道、渋谷駅から徒歩約10分ほど
企画運営・・・MIKAZUKI Art

②KIRIEBIJOU GDCs × 樫内 あずみ ポップアップ展(5/1-5)

日本橋高島屋で切り絵ジュエリーの「KIRIEBIJOU」と作家樫内あずみのコラボによるアップサイクルアクセサリーのポップアップ展を実施します。詳細はこちら。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?