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書評 #92|ドイツサッカー文化論

 ドイツのサッカーを大局から細部まで見つめた一冊。ドイツ人のメンタリティについて繰り返し言及される。それは「大きな責任を自ら背負いたい」という願い。徹底した勝利へのこだわりが、そのように言語化されていることに納得する。

 日本と比べ、ドイツにおけるサッカーの歴史は長い。しかし、その年数だけによって栄光が築かれているわけではない。体系立てられたプロサッカーとアマチュアサッカー。教育システム。主要な国際大会における敗戦を教訓とし、改革を推進する姿に合理性を重んじる国民性が垣間見える。それは管理体制の厳格さとも言える。

 プロサッカーを中心とした競技力の向上を目指した体制がドイツの強さを支えていることは間違いない。しかし、サッカーの裾野の広さこそが強さの源であろう。老若男女の健康や精神を養う役割も担う。地中深くまで根を張っている。読後にそんな感想が体内を駆け巡った。

 本書に登場する室屋成。サッカー選手として活躍し、異国で生活する自分自身を客観的に見つめ、思いを的確に言語化する能力に個人としての賢さを感じた。


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