松田 祐典

麻酔科専門医|埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科診療部長|産科麻酔×医療品質改善|…

松田 祐典

麻酔科専門医|埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科診療部長|産科麻酔×医療品質改善|毎朝6時「まつだゆうすけの麻酔科的思考」スタエフにて→詳細はコチラhttp://lit.link/mazda

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【医療者向け】無痛分娩マニュアル

免責事項この無痛分娩マニュアルは、医療従事者を対象に書かれています。基本的に科学的根拠に則って記載してありますが、一部専門家としての意見も含まれています。実際に妊婦さんへ実践する場合は、施設の基準や個々の臨床判断を優先して行なってください。本マニュアルの内容は、最新の医学的知見に基づいていますが、すべての状況や妊婦さんに適用できるとは限りません。本マニュアルの利用により生じるいかなる結果についても、著者は責任を負いません。医療従事者は、自己の専門的判断に基づいて、適切な診療を

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    • 医師働き方改革は、絵に描いた餅なのか?

      いよいよ医師働き方改革が法的に始まるまで10日を切りました。みなさんの施設では、どのような取り組みをされていらっしゃいましたか? NHK特集で宿日直許可のあり方そのものが問われていますが、正直なところ最低限のルールに沿っているだけの働き方改革では、どんどん人員が流出してしまいます。逆に言うと、最低限のルール以上に、しっかりと働く医師のことを考えて愚直に取り組んでいる施設にとっては、好循環になる兆しが見えてきています。 伝え聞いた話では、東大脳神経外科はかなり前向きに医師働

      • 【医療者向け】帝王切開麻酔マニュアル

        このマニュアルは、埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科で研修されている先生に共有されているものを、要約したものです。細かいエビデンスなどについては、随時追加していきますので、定期的にチェックしていただければ幸いです。 なお、本マニュアルは麻酔科専門医の監督下に行われる帝王切開麻酔を想定しています。麻酔担当医が執刀医を兼ねる状況では、危険となる可能性もあるので、ご留意ください。 脊髄くも膜下麻酔1. 最初の準備 SOAP:Suction(吸引)、Oxygen(酸素≒麻酔

        • シン・子育てと仕事

          私はだめな父親でした。 いや、「でした」と言う過去形は正しくありません。 今もまだ自分の理想とする父親像には程遠い存在です。 それでも、子供を持つ親として、毎日子供と対峙しなければいけません。ときには、家内の力を借りながら、日々子育てと仕事と自分のやりたいことを追求してます。 多くの親、特に中高生以上のお子さんを持つ親御さんは、子供たちの姿を見ていると、将来不安でしかありません。もっと勉強してほしい。もっと自分軸を持ってポジティブに生きてほしい。こういった親の欲目とも言え

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          ヘパリン混注は静脈開存率を上げるか?

          末梢静脈路確保は、医療の基本手技。さまざまな薬剤を患者さんに投与するために必要なことです。でも、病棟での困りごとの一つとして、「末梢が詰まる/漏れる」といったトラブル。 患者さんによっては、連日漏れてしまうため、確保し直さなければいけません。ヘパリンを末梢から流すことで、開存率を改善するかも?というアイディアは古くからあります。 でも、これってエビデンスはあるの? と思って調べてみたら、なんとシステマティック・レビューがありました! この結果を見ると、確かに持続投与し

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          麻酔薬の胎盤通過性

          産科麻酔では、しばしばお母さんから「麻酔薬って赤ちゃんに影響するんですか?」と質問されます。基本的に日常的に使用されている麻酔薬は、赤ちゃんにとっても安全です。しかし、プロフェッショナルは、その背景まで理解する必要があります。 薬物の胎盤移行は、主に5つのメカニズムで行われます。細かい部分は成書に譲りますが、ほとんどの麻酔薬は「拡散」によって、お母さんから赤ちゃんへ移行します。 吸入麻酔薬 すべての吸入麻酔薬とほとんどの静脈麻酔薬は、胎盤を通過しますが、1 MAC(最小

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          「疲労」でパフォーマンスは悪化するか?

          一般的に疲れていると集中力が乱れ、ミスが増えます。航空業界など、安全文化が他の職種よりも重視されている場合、いかにスタッフが疲れないかどうかというものを設計することは非常に重要です。 しかしながら、Clayton FousheeがNASAで行った研究では全く異なる結果が得られました。 すると結果はどうだったでしょうか? 驚くべきことに、パフォーマンスは疲労群の方が良かったという結果でした。 実際に測定したところ、個々のパフォーマンスでミスは疲労群の方で多かったですが、

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          妊婦さんの希望による帝王切開の是非

          日本では経腟分娩が自由診療なので、妊婦の希望による帝王切開(CDMR: cesarean delivery on maternal request)は一般的ではありません。しかしながら近年、妊婦自身の主体的な出産において「希望すれば帝王切開をする」という文化が広まってきています。 これには医学的に賛否両論ありますが、国際産婦人科連合(FIGO)より声明が発表されています。 CDMRは、産科的または医学的な理由がない単胎妊娠に対して、予定期に実施される初回の選択的帝王切開と

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          緊急帝王切開におけるパートナーの立ち合い

          日本ではあまり一般的に行われていませんが、欧米を含めた多くの国々では、一般的に帝王切開であっても立ち合い分娩をしています。 これまであった研究は、主に「予定」の帝王切開にフォーカスしていて、緊急帝王切開におけるパートナーの立ち合いのメリットやデメリットは議論されてきませんでした。 24の臨床研究を対象としたスコーピングレビューでは、脊髄幹麻酔下帝王切開では、特に妊婦自身がパートナーの同席を望むことが多く、ポジティブな体験となると記述しています。 一方、全身麻酔下帝王切開

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          埼玉医科大学総合医療センター麻酔科で一緒に働きませんか?

          埼玉医科大学総合医療センターは、埼玉県唯一の高度救急救命センターとして、ドクターヘリを活用しながら県内外よりさまざまな急性期患者を受け入れています。さらに、総合周産期医療センター、小児集中治療室も兼ね備えており、このように急性期医療に特化した大学病院は、関東圏では当院だけ。 埼玉医科大学総合医療センター麻酔科では、共に成長し、患者さんのケアを最優先に考え、楽しく仕事ができる仲間を募集しています。 知識と経験を兼ね備えた麻酔科医の育成埼玉医科大学総合医療センター麻酔科は、多

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          医師の給与

          我々の生活は全て経済活動につながっています。また、経済的な不安定さは、質の低下にもつながります。しかしながら、なかなか日本では、給与について語られることが多くはありません。 医師働き方改革が進む中、当直業務(宿日直)に対する対価の設定が求められます。とはいえ、なかなかバランスを取るのは難しいです。 当直業務は,いくらが妥当? 以前働いていたカナダの病院。ユダヤ系だったこともあり、お金のバランスが絶妙でした。 医療業界が大変な一つの理由は「当直」。事実、医師の求人では「当

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          はじめての英語論文 -英語で学術論文を書くための究極ガイド!-

          英語で初めて学術論文を書くことは、非ネイティブスピーカーの私たちにとって、非常に大変な挑戦です。文献の読解、研究の表現、そして正確な英文法の使用など、これら全てのスキルが求められます。これまでの受験英語だけでは、なかなか太刀打ちできないと悲観するのは、まだ早いです。いつくかのコツさえ分ければ、スムーズに論文を書くことができます。ここでは初めて英語で論文を書く際のポイントをいくつかご紹介し、お勧めの一冊をご紹介します。 英語論文執筆のポイント 明確なテーマの記述:研究テーマ

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          医師の働き方改革、このままだとヤバい!

          医師の働き方は, 長時間労働や過度の負担が 問題視されてきました. 医師は多くの患者の命を預かる 重要な存在であり, その責任は非常に大きい. しかし,過密スケジュールや休日出勤などにより, 医師自身の健康や精神面の問題が 生じているのが現状です. 医師の働き方改革は,このような問題を 解消するための取り組みです. 医師働き方改革の目的 この改革の目的は3つ. ① 医師の労働時間の削減 ② 労働環境の改善 ③ ワークライフバランスの確保 これにより,医師がより良い

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          世界の無痛分娩事情🌍

          先日の岸田総理による会見で 取り上げられた無痛分娩🤰🏻 英語圏では"Epidural"と 一般的に呼ばれており, 当たり前の診療となっています. しかしながら, 日本においては 2023年現在でも, 普及率は10%程度. 分娩時の痛みを和らげる方法は, 世界でどのくらいメジャーなのでしょうか? フランス🇫🇷 80% 無痛分娩が普及している国として, 世界的に有名なのはフランス. 全ての妊婦が妊娠34週あたりで, 麻酔科医による診察を受けることでも有名です. 現在は

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          産科麻酔を"ちゃんと"学びたい方へ

          産科麻酔はサブスペシャリティとして 人気が出てきていますが, 国内で系統的に学べる施設は多くありません. しかし残念なことに, 産科麻酔の症例がたくさんあるだけで, 指導医がいない施設で働く事だけでは 我流しか身につかず, 数年経ったら全然違う事をしている と言う事になってしまいます. そうならないためにも, 適切な施設で学ぶことは, 長い目で見て必要です. 日本でいちばん歴史のある産科麻酔 埼玉医科大学総合医療センターは, 年間1,000件近くの ハイリスク分娩を取

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