🍥ベーコン🍥 〜燻製編〜
前回のベーコン作り下準備編では、勢いあまって話が避妊具に帰結してしまった。
生きていれば不可解な出来事のひとつやふたつはあるものだ。立ち止まらずに先へ進もう。
さて、ここからは、ベーコン作りで最も重要な温熱乾燥の工程に入っていく。
燻製の大敵は、結露による水分である。いくら食材の表面を乾かしても、肝心の内部が冷えたまま燻煙にかけると、その温度差により「結露」が発生し、その燻された水分は木酢液となって、エグい酸味が乗った最悪な仕上がりとなる。
燻製で失敗する原因の9割は、この「結露」によるものだ。美味しくて保存もきく燻製を作るはずが、適切な結露対策を怠ると、場合によっては毒性まで孕む恐れがある。
たとえば、キンキンに冷え切った夫婦仲を打開するために、
愛してるぅ
などと叫びながら、突如として背後から妻に抱きついても、夫婦仲の改善どころか、柳刃で心の臓をひと突きされるのがおちだろう。それと同じことだ。
痴情の結露はさて置いて、燻製のレシピ本やネットでは「表面をよく拭いてから燻製する」だの「常温に戻して燻製する」といった記述をよく見るが、こんな不親切なレシピでは結露が発生して失敗するのが目に見えている。
いくら良い食材や調味料、質の良いウッドチップを用意しても、温度差を埋めなければ結露だけに水の泡だ。
冷燻を除くとして、温〜熱燻では、何はともあれ食材を温めるのが吉である。
脱水を終えたバラ肉を燻製器に吊るし、サーモスタットを55〜60℃にセットする。肉汁受けのバットは必須だ。
燻製器の通気口を開け、1:00〜1:30の温熱乾燥にかける。
充分に温まったところで、
ようやく、煙の出番である。
ここまで結露対策を施せば、燻材は好みだ。
サクラやヒノキで強烈に燻してもいいし、スタンダードなヒッコリーもありだ。テレビから這い出てきた女の長い黒髪で呪いのベーコンにして多様性などと嘯くのもいいだろう。
今回は、ミズナラとクルミ1:1を混ぜ、ご飯茶碗で一杯弱ほど、温熱乾燥と同じ55℃設定から燻煙にかけていく。
45分に一度、5℃ずつ温度を上げ、同量のチップを足しながら、70℃まで4ターン繰り返す。
65℃→70℃の時に、チップに小さじ1程度のピートパウダーを加えると、より芳しい仕上がりになる。
燻煙工程を終えたら、サーモスタットを75〜80℃に設定し、通気口を全開で1〜2時間の温熱乾燥を行う。
ここでの温熱乾燥の目的は、厚労省が定める豚肉の芯温63℃で30分で殺菌をするためだが、あくまでも販売のための基準なので、家庭でキチンと火通しして食べる前提ならばこの基準にこだわる必要はないだろう(家庭で肉芯63℃を目指すのはかなり大変だ)。
ただ、更に水分を飛ばして「ベーコンを締める」効果と、色づきも良くなるので、肉芯温度はさて置いてやはり仕上げの温熱乾燥は必須といえる。
温熱乾燥を終えたら、急冷せずに風通しの良い場所で芯まで半日ほど冷まし休ませる。
ここまで、脱水と燻煙工程をしっかりと行えば、しっかりと日持ち(冷蔵で1〜2ヶ月)する美味しいベーコンの完成だ。
じっくり育てたベーコンは、そりゃあもう可愛い。
頬ずりしたり、手をつないで出かけたり、七五三には赤い着物を着せて参拝し、千歳飴の紅白と赤身と脂身の紅白が同化して見失ってしまうほどに可愛い。
ちなみに、前回のベーコン下準備編の冒頭で、
フランシス・ベーコンの金言を引用したが、大昔から食べられていた塩漬け豚の燻製を、航海船に保存食として大量にストックするように指示した人物こそが、政治家時代のフランシス・ベーコンと言われている。
その名がベーコンの由来だということは、言うまでもない。
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