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指導者は料理人


サッカー指導者と料理人は似ている。


指導者はチームの目標や目的に向かって
選手をまとめながら日常を歩む。
現代は様々なスタイルのサッカーがある中でも
指導者がチームに与える影響は大きい。
その過程や結果で多くの人の心を動かす。

料理人も、たくさんの食材達をまとめながら
それぞれがスタイルを持った料理の味を
お客様に提供し、人の心を幸せにする。


指導者と料理人

職種は違えど、
まとめる、スタイルを出す、人の心を動かす
この3点は大きな共通点である。




◾️練習=献立


練習では、いかに栄養があって美味しい食事を
選手に提供できるかが指導者には問われている。

食事に関して言えば、
美味しくても栄養がないと体は育たないし、
逆に栄養が高くても美味しくなければ
食べることは続かない。

例えばハンバーガーやポテトは美味しいが、
そればかり食べさせていたら太るし
必要な栄養は補いきれない。

逆にブロッコリーやパプリカは野菜の中でも
栄養価が高い食品だが、
毎日そればかりを食べていては飽きてしまう。

つまり食事は
「美味しさ」と「栄養」がセットで必要。


「美味しさ」×「栄養」
が最高の食事だとするなら
「楽しさ」×「理論(厳しさ)」
がサッカーの練習においては最強だ。

楽しいのにしっかりサッカーも学べる。

そんなメニューなら
選手達は毎日飽きずにたくさん食べられるだろう。

しかし、練習で毎回そんな贅沢なものばかり
食べていては、選手の舌が肥えて
わがままになってしまうかもしれない。

なので時には嫌いなものを
しっかり食べさせることも必要。

嫌いなモノを避けては、
体も強く大きくならない。

だからといって強くさせるために
毎日肉や魚ばかりを食べさせていたら
嫌いになってしまうし、お腹も壊す。

練習を毎日毎日厳しくやり過ぎても
モチベーションの低下や怪我に繋がることと同じ。

逆に選手達が何かを頑張ったのなら
ご褒美のデザートを出すのもいいかもしれない。

頑張った後だけではなく、
気持ちが落ちている時も甘いものは有効。
モチベーションの火種になるから。

つまりグランドの料理人は、
「その時の選手やチーム状態に合わせた
メニューや必要な栄養素はなにか」

常に見極める目を持たなければいけない。

もっと言うと、そのメニューを選手が
きちんと消化・吸収できているのかを見極め、
できていないのであれば再び試行錯誤して
献立を工夫し直す必要もある。

また、
これさえやれば上手くなる
(これさえ食べれば強くなる)

なんてものはサッカーの練習に存在しない。

全ての練習(料理)に意味がある。

毎日コツコツ好き嫌いもせず、
なんでも前向きに食べる選手はもちろん伸びる。

食事にストイックなクリスティアーノ・ロナウドも
「魔法の食べ物はない」と言っていた。

それは「魔法の練習法はない」
ということでもある。

彼は毎日当たり前のように卵や野菜、
鶏肉などを継続的に食べている。

練習も日々コツコツ積み重ねていくことが、
上達するためには遠回りのようで1番の近道だ。

選手がコツコツ頑張るからには、指導者も
グランドの料理人としての腕を磨き続けたい。

本気で上手くなりたい選手に対して
練習メニューは美味しくて栄養があるものを
腹一杯食べさせてあげたい。

それを実際に食べる選手達が「美味しい」と
思ってくれるかはわからないが、
まずは「愛情」を込めて作れば
なんでも美味しいと感じてくれるはずだ。




◾️冷蔵庫の残り物で一品料理を作る


選手は十人十色であり、個性は様々。

料理に置き換えると
選手一人一人は「食材」である。

その食材がいかにまとまり、
それぞれの役割を果たしながら
美味しい料理になれるか。

とてもサッカーと似ている。

当然、素材がいいものはそのまま食べても美味い。

採れたてのとちおとめ(苺)は
農園でそのままかぶりついても美味いし、
A5ランクの牛肉はレアでも食べられたりする。

素材が良いから。

味付けをしたとしても、
塩や醤油などシンプルなものでも十分美味い。

このように、
いい素材を上手く調理するのは簡単だ。

しかし、
指導者(料理人)の腕の見せ所はそこではない。

店頭に出せなかった苺や
賞味期限が近づいている牛肉を、
どれだけ美味しい〝料理〟として提供できるか
の技量が常に問われている。

一流の料理人なら、
賞味期限が近い食材をアレンジできるし、
鮮度がよくない食材も素材の良い食材と合わせて
際立たせることができる。

つまり、極論を言うと
冷蔵庫にあるモノで一品料理を作ることができる
ことが料理上手である。

それは言葉通り、
パッと即効で練習メニューを考えられることや
上手くいっていないと感じたら即座に変えられる
指導者の柔軟性とも共通している。

またはもっと広い視点で考えると、
ベンチだった選手がレギュラーになるまで
力をつけることだったり、
自分達より力のあるチームに勝利する
というようなことである。



実際に、店頭に出せないくらいの食材でも、
極上の料理を作ることができる料理人はいる。

逆に高級食材を手にしながら
色々な手を加えすぎて本来の美味しさを
引き出せない料理人もいる。

そこの見極めがグランドの料理人には必要不可欠。

だいたい料理を失敗してしまうときは、
その辺の本質を見失ってる可能性がある。

「彼は松坂牛だ、山わさびだけ添えよう」

「彼も夕張メロンだ、そのままかぶりつこう」

「あ、彼はまだ固いアボカドか。
 もう少し時間をおいて熟してあげよう」

など、絶妙な見極めが大切。



街クラブの時点で
高級食材が揃っているわけではないが、
その分料理の作りがいはあるし
少しでも美味いモノを出してみんなを驚かせたい。


「あの青かったミカンが
 こんなに美しいオレンジタルトに!?」

「この綺麗なカルパッチョは、
 あの賞味期限切れ間近だったカツオなの?」

「30%OFFのシールが貼られてたひき肉が
 肉汁溢れるハンバーグになってるやん!」



みたいなことを起こせるように、
素材に魂を吹き込んで
世間が驚く料理に変えていきたい。




◾️どんなレストランにも常連はいる



指導者が料理人だとすると、
お店が続いている限りは
その店の味を「美味しい」と言って
通ってくれている人がいるはずだ。

全員に好かれることは難しいかもしれないが、
必ず常連さんはいる。

店が100店舗あるように
当然お客様の好みも100通りある。

あそこの料理人の飯はマズイと言う人もいるし、
あの店は底辺だとか言う人もいる。

それでもどの店にも必ずいいものがあって
それを必要としているお客様がいる。

そんな人が1人でもいる限り、
その店には価値があるし、
選んで愛してくれる人を大事にしたい。

僕はグランドの料理人なので
毎日毎日腕を磨いて、
選手にいい飯を食わせ続けようと思う。

そして試合になれば色々な素材を調理しながら
最高のサッカーを展開して勝利を目指したい。


指導者と料理人


職種も分野も全く違うが、
頭の中は似ている気がする。


いつか超一流の料理人と会って
どんなことを考えているのか話を聞いてみたい。

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