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"言っていること"と"やっていること"のずれに気づかない。信奉理論と使用理論について

ダニング・クルーガー効果として知られる研究があります。

大学生にいくつかのテストを実施し、自分の成績がどの程度なのかを予測してもらうという実験を行ったところ、成績の悪い学生ほど、自分の成績を高く評価していた(認識の差が大きかった)という結果が出たそうです。

いわゆる自己認識の重要性を示唆する実験なのですが、これを会社のコミュニケーション文脈に置き換えても示唆があります。

自分自身の会社におけるふるまいが、周囲にどんな影響を与えているか
ちゃんと理解できているだろうか?という問いが生まれるのです。

というのも、現実の社会では、頭が切れる優秀な方であっても、自己認識能力が高いとは限りません。むしろ、優秀な方の中には、自分はこういうつもりで言っているということが、相手には伝わっていないということがよくあります。

たとえば、先日あるお客様のチームで対話をしていた際に、そのチームのマネジャーさんが、

「皆の意見を聞きたい」

「どんな意見も歓迎するから積極的に提案してほしい」

と発言しているのですが、聞いているその場のメンバーの皆さんは黙ったまま、なんだか重い空気が流れているという状況がありました。

マネジャーさんがいないところで、何人かの方に聴いてみたところ、

「意見を聞きたいというが、マネジャーの中にははっきりと自分の好みが
あるんです。そこから外れた意見は受け付けてくれない」

「実際に以前発言したときに、もっとよく考えてほしいと言われて、、、
だから迂闊には言えません」

等の声が出てきます。

マネジャーからすると、なぜオープンに意見を議論をしたいと思っているのにメンバーは意見を出さないのだろうか。やる気が感じられないととモヤモヤした状態になっています。

このようなケース、皆さまの職場でもないでしょうか。

このような自己認識のずれを生じさせる原因の一つに、信奉理論と使用理論が違ってしまっていることがあります。

人は自分が信じて口にしていること(信奉理論)と、実際の行動基準となっていること(使用理論)が別になっていて、自己認識が不十分だとそのことに無自覚なのです。

たとえば、この会社ではダイバーシティを推進していきたい、そうすべきだと頭では理解し、本当に信じていながらも、目の前の男性の部下が育休を取得するというと、大事な時期に休むなんて、、、という考えが出てきてしまう。

このような矛盾があると、メンバーはメッセージに一貫性がないので、混乱してしまい、発言をそのまま受け取れなくなります。

無自覚な自分自身の使用理論に気づいていることが必要です。
そうでないと、マネジメントは難しくなってしまいます。

ポイントは周囲からのフィードバックだと感じます。
このずれは、フィードバックを材料に自身を振り返ることでしか
なかなか解消されていかないのではないでしょうか。

私も独立したことで、すべて自分で決めることができる立場になったことから、フィードバックがなくなるリスクを感じています。

会社員の時は、上司や同僚から時に耳の痛いフィードバックを受けることがあります。それはストレスになりますが、意図しないそのフィードバックから、自分を知ることにもつながります。

周囲の人の協力を得て、今後もフィードバックを得られるような環境づくりに気を付けていけたらと思います。

また来月もよろしくお願いします!

2023/9/31 VOL153                             sakaguchi yuto

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