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赤福とお福ちゃん。

ゆみこは、大変お怒りでござった。
ゆみことは、ワタシの母の名前(仮)である。

ゆみこ(仮)は、東海地方へ旅に出かけた父へ
大好物の生和菓子を土産に
買ってくるよう頼んでいた。



そう、誰もが知る、
お伊勢さんの名物「赤福」である。

気難しい……もとい、こだわりが強い
ゆみこ(仮)は、どんな贈り物をしても
99.9%喜ばない。


まるで、禁止区域でタバコを吸ったあげく
ポイ捨てをし、吸殻を靴でぐりぐり
するが如く、人の心を踏みにじるのが
大の得意なのである。
(……と、ワタシは思っていたが、
投影だったらイヤだなと思う今日この頃)

が。

その話は置いておく。


まぁ、とにかく
家族が、親戚が、ご近所さんが、友人が
贈ってくれたものに対して
必ず文句を言う。
必ずだ。


だが、そんなゆみこ(仮)にも
例外が一つだけあった。



それが「赤福」である。

ソレを前にすると、相好を崩し
夜の9時以降は、「何も食べない」という
鉄の掟をあっさり破り、
美味しいお茶を淹れてペロリとたいらげて
しまうほど、大好きなのだ。


なのに。なのに。なのに。








父は、帰りの車内で、"うっかり"お腹を空かしてしまった。


手元には、「赤福」。


父、土産の赤福食べちゃったんだってよー!



代わりに父が連れて帰って来たのは
類似品の「おふくちゃん」(仮)だった……。


和菓子へのこだわりのない父と
赤福……もとい、父の帰りを
今か今かと待ちわびていたゆみこ(仮)は
怒りの放火をひらめかし
怒髪天、衝(つ)きまくり。


ワタシと言えば、日頃から
母、ゆみこ(仮)との小競り合いが
絶えなかったため
そんな二人のやりとりを

内心ブレイクダンスでも
踊っちゃいたいほどの歓喜でもって
傍観していた。
(悪いヤツだよ自覚あるよ)

ケケケ



以来、父は、「赤福」の名を
しっかりと胸に刻み、
決して途中で食べることもなく、
「おふくちゃん」に浮気することもなく、


本日、何百回目かの旅から帰宅し
無事、ゆみこ(仮)の好物を持ち帰った。

ゆみこ(仮)は、湯を沸かしお茶を入れ
満面の笑みで
餡子がたっぷり乗った餅を
頬張っている。

時刻は、夜の9時47分であった。
平和な夜である。


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花小麦
(photo by 花小麦)


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