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ピンクの車

僕(男)はピンクの可愛い車に乗っている。その車の中で、僕は肘掛に左腕を乗せて、右手一本で悠々とハンドルを操っている。コンビニでコーヒーを買って、マイルスデイビスだののジャズを大音量で流しながら、僕はピンクの可愛い車を乗りこなしている。ときどき道行く男に二度見される。なぜだろう。そんなことお構いなしに、僕はピンクの車で、海沿いを颯爽と駆け抜けている。

58号線を走らせながら、なんとなく久し振りに福山雅治を聞いていた。僕は大体Amazon music で音楽を聴くのだけど、Amazon music にはalexaという音声認識機能がある。siriみたいな感じ。「アレクサ」って呼びかけると、答えてくれる。

福山雅治の「HELLO」が流れてきたので、僕も熱唱した。「そんなはずないさ、それはわかってーるー。」彼の歌は、歌いやすいから、僕もどんどん乗ってきた。サビだ!「こーいがはっしっりーだっしーたらー(恋が走り出したら)」。意味わからんなー、と思いながら、僕は眉根を寄せて必死の形相で歌っていた。さぁ、きた。最後!「君とえーがおっ、つーかまえーるのさー、、きっ...」 ポーン。

アレクサ「幽霊、ですね?幽霊で楽曲を探します。」 最高潮に達した僕の歌唱が、なぜか、呼んでもいないアレクサに邪魔をされてしまった。

この曲のサビの最後、「きぃっとぉ!!」が気持ちいいのに、君は寸止めしろと言うのかい?アレクサ。よりによって、なぜ「幽霊」なんだい?歌いたくなくなった僕は、悔しいけれど、アレクサにお願いして、ジャズをかけてもらった。(♪「waltz for debby」♪)相変わらず、僕の車の色は、ピンク。リュウキュウヒガンザクラの花の色に、ちょっと似ている。今日も丸っこい僕のピンクの車は、名護の町をコロコロ転がっている。

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