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もし、捨てることに迷うなら。

イベントがある。
息子の誕生日、それと引っ越しだ。

と言っても、5月だから、一ヶ月も先なのだけれど、
子どもにとっての一ヶ月は、すでにもう「明日」や「すぐ近くにある未来」でしかなく、
過去のことは全て「昨日」もしくは、「赤ちゃんの時」でしかない。

息子は3歳で、(うちの息子なので)未来のことを全て「明日」と言い、
過去の事を全て「昨日」「赤ちゃんの時」と言う。
あまりにも、堂々と、

「昨日さあー」

と、今回の引っ越しを決める要因となった、自宅の天井が水害で落ちた話などをばあばや、彼の友人にし始めるものだから、
もしかしたら、過去や未来に本当は『距離』なんかなくて、
大人になって、勝手に自分達で『距離』を作ってるのかな?
なーんて、考えさせられたりもする。

当然、それが便利な時もあるけど、それが枷に感じることもあるのだろう。

そう。何はともあれ。

我がファミリーは引っ越すのだ。

一ヶ月後に。。。

一ヶ月「も」先。
なんて悠長なことは言ってられない。

なぜなら、

「迅速に済ませよ」

と、ドン・コルレオーネ(妻)からのご命令だからだ。

人手を伴う、大きな物の搬出に備え、タンスや机の中身を整理する。
いるものといらないものを仕分けし、売れそうなものはメルカリへ。

引っ越し準備には、三体の妖怪と出くわす。

一体目は、勿体無い女将。
数年使ってないくせに、なぜか、
「使えるんじゃない?」
「勿体無いわよ」
「頭が真っ白に」
と囁いてくる某料亭の女将のような妖怪。
この妖怪に囚われてしまうと、物が溢れ、懐石料理が食べたくなる。

二体目は、氣逸らし号泣県議。
主に書籍・漫画や小説に住む滋賀県の元県議みたいな妖怪。
この妖怪に捕まると、

「ハアアアアアアアアアアァン! アゥッアゥオゥウアアアアアアアアアアアアアアーゥアン!」

と、作業の手を止め、片付けるはずの書籍を読みながら、声を上げ号泣してしまう。

三体目は、思い出ゴーストライター。
写真の中にいる、長髪にサングラス姿の妖怪。通称:現代のベートベン。
「若ーい」
「割とイケてない?」
「あの時って・・・」
と、細身のメガネをかけた少しだけ、おでこの広い妖精のおじさんを使って、思い出を美化させてくる妖怪。

女将と県議を見事に躱し、

僕は見事に、ゴーストに捕まった。

一枚、また一枚と、写真を仕分けるわけでもなく、ただ眺めては、
こんなタイミングでしか見向きもしないくせに、
なぜだが、どれも大事な物のように感じてしまう。

写真を仕分けるにしても、どの基準で分けるのが正解なのだろう?
と、疑問に思うと同時にあることを思い出す。

「昨日ね。ヤギがのったの」

息子が話し、ドン・コルレオーネと娘が解説をしてくれる。

ドン・コルレオーネと娘曰く、
何度も足を運んだお気に入りの農園さんに苺を買いに出かけた際、近くで飼っているヤギが新芽を食べるために、木に飛び乗った。
初めてみる姿に、息子はいたく感動したらしい。

「パパにも見せてあげる」

と、彼はドン・コルレオーネに頼み写真を撮ってもらう。

振り返ってみると彼は、自分が見た世界を、誰かに見せてあげたいと思った時に、

「写真撮って」

と依頼する。

「遠い」と過去の思い出に自分で勝手に「距離」を作り、

「輝いている」

そう思って見ていた。

写真を再度、手に取り眺めてみる。

うん。大丈夫。

長髪にサングラス姿の妖怪はどこにもいない。
今、その妖怪は、ちゃんとサングラスを外して、髪も切ってる。

そして、そのままゴーストは僕に問いかける。

ゴ「この世界を、誰かに見せてあげたい。そう思いますか?」

僕「・・・・・・」

ゴ「どう、しました?」

僕「えっと、・・・あの、そうなると、本当に、ろくな写真など一枚もないので」

ゴ「・・・はい」

僕「・・・あの、全部処分、という結論になってしまうのですが」

ゴ「・・・・・・」

僕「・・・・・・」

ゴ「・・・こんまりさんってご存知?」

それはそれで、

まぁ、いいじゃない。

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