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エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』圧倒される一大叙事詩


<作品情報>

1995年・第48回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したエミール・クストリッツァの代表作。
1941年、ナチスドイツがユーゴスラビアに侵攻。ベオグラードに住む武器商人のマルコは祖父の屋敷の地下に避難民たちを匿い、そこで武器を作らせて生活する。やがて戦争は終結するがマルコは避難民たちにそのことを知らせず、人々の地下生活は50年もの間続いていく。
1996年日本初公開。2011年にデジタルリマスター版、2023年に4Kデジタルリマスター版でそれぞれリバイバル公開。2017年の特集企画「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!2017」では、上映時間5時間14分の完全版が上映されている。

1995年製作/171分/G/フランス・ドイツ・ハンガリー合作
原題:Underground
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2023年10月27日

https://eiga.com/movie/56942/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

上村
これは色々と規格外すぎてひたすら圧倒されてしまいました…
話の内容、ファンタジックな演出、どうやって撮ったの!?という撮影…どれをとっても規格外。エミール・クリトリッツァ恐るべし。
これだけ長い時間の中に色んなものがとにかく押し込まれていて情報の洪水状態!どこにいくか分からない展開で笑わせてくれますし、でも寓話として内戦が続くユーゴスラビアを語ってもいるし素晴らしいです。
観ている間はついて行くのに必死でしたが、観終わってみるとまるで終わらない歴史が投げかけられたような途方も無い気分になってきます。

吉原
同監督が本作の数年後に発表した「黒猫・白猫」は評価が高いにも関わらず、あまり好きではありませんでした。どんちゃん騒ぎで人生讃歌みたいなメッセージが凄く苦手で、本作もその様なシーンがあったのでダメかもしれないなと思ったけど、最後まで楽しく鑑賞することができました。
特に着目してもらいたいのが、序盤に街が爆撃を受けるシーン。街は破壊され、動物園から動物は逃げ出し街は混沌と化す。重い内容のシーンでありながらもコメディチックに描き出す手法は本作一番の特徴ですが、掴みで一気にこの作品へ引き込む素晴らしいオープニングでした。まさに「圧巻」という言葉が相応しいでしょう。
本作は、パルム・ドール受賞作の中でも比較的鑑賞したことがある人が多い作品のようです。「賞を獲るような映画だから説教くさくて堅苦しいんじゃないの?」と思った人にこそ観て欲しい作品と私は思いました。ユーモアがあって、堅苦しすぎず、決していい加減な映画でもない非常にいい塩梅の映画で三大映画賞の作品の中でも比較的取っ付き易い作品なのではないかと思います。

<おわりに>

規格外という言葉が一番似合う、エミール・クリトリッツァによる一大叙事詩です。圧倒的なスケールと面白さがありオススメです!

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