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新人だからこそできること-違和感を大切に-

自分が見えたように正直に表現するんだよ

これは、私が学生の頃、画像診断で世界的にも有名な放射線科医の先生にいただいた言葉です。

正確にこの通りに言われたかは定かではありませんが、15年ほど前に聞いたこの言葉が今でも私の頭の中にずっと残っています。

というのも、最近特にこの言葉の大切さを実感するようになったのも影響していると思います。

この言葉だけではわかりにくいと思うので、その意味をもう少し詳しく説明します。

CT画像は、放射線を利用して身体の中の異常を見つける検査です。
たいていは輪切りになった画像を見て、そこに写っている臓器を見て診断します。
癌はこういう風に見える。肺炎はこういう風に見える。など、教科書に載っている情報をもとに診断をつけていくのですが、この時に大事なのが上の言葉なのです。

かなり簡略して説明すると、
診断をしようとするとき、目の前に見える画像が教科書のどの疾患に当てはまるかを探します。そして、教科書に載っている▲▲病と同じ所見(見え方)があれば、この画像の診断は▲▲病だと考えます。

ところが、ここに落とし穴が潜んでいます。教科書に載っている画像と目の前の画像が完全に一致するということは決してありません。

ですが、なんらかの診断名をつけるために、「目の前の現実を無理やり正解に当てはめる」という行為をしなければけません。

そのときにいろんな弊害が起きることがあります。それが、間違った診断名をつけたり、もしくは世の中に知られていない未知の診断も無理やり何かに分類してしまい、真実が見えなくなったりします。

だからこそ、その大先生は下のように言われたのです。

上司や先輩、はたまた(画像診断の大家である)私がこう見えると言ったら、同じように見えないといけないわけではなく、自分自身が見えた通りに表現することが大事なんだよ。

私は、当時この言葉にとても感動したのを覚えています。今もことあるごとに思い出して、その度にその深い深い意味を実感しています。

自分の感覚に正直に

これは、何も医学に限ったことではなく、どんな人、どんな仕事にも当てはまると思います。

新入社員は、会社のルールが全くわからない状態で入社して、先輩や上司に仕事のいろはを教えてもらいながら、その業界や会社でのルールを覚えていきます。

その中で、理解できないことがあっても、とりあえずはそれを受け入れて早く一人前になれるように頑張ると思います。

そのようにしばらく働いて、その会社の人間になっていきます。2年目になると新人さんに指導する機会が出てくることもあるでしょう。「この会社は〇〇」「この課では〇〇するのが当たり前だ」「〇〇のときは、こうすればいいんだよ」などとアドバイスしているかもしれません。

ですが、それが本当に正しいのでしょうか?

実は、それはただ単に問題が起きなかっただけなのではないでしょうか。
もしかしたら、過去のあなたはその正しいと信じる行動をしながら、何か違和感を抱いていたかもしれません。
初めは先輩や上司に教えてもらい、違和感を抱くものの『そういうものなのか…』と受け入れながら行動する。そのうちに違和感が薄らいでいき、当たり前になっていく。

でも、実はその違和感がとても大切だったりするのです。その決断、その行動によって、誰かが我慢していたり、誰かが傷ついていたりすることは意外と多いんです。

何か心の中でモヤモヤしても、大多数の人は我慢して何も言わずに頑張ります。みんな何も言わないからこれが普通なんだと思って、自分の違和感を無かったかのように修正して行動するようになります。

そして、その行動を繰り返すうちにいつしかモヤモヤした感情は薄らぎ、当たり前になっていきます。言い方が悪いかもしれませんが、自分のモヤモヤに鈍感になっている状態です。

みんながそんな状態のときに、違和感に気づけるのはいったい誰なのでしょうか?

新入社員です

組織の当たり前に染まっていないフレッシュな人、それが新人です。

ここで一つ事例を紹介したいと思います。

ある組織で、仕事のエラーを全員で共有するという文化がありました。1つのエラーを一般化して対策を立てる。そして全員で共有することで、チームとして成長していく仕組みを作っていました。
ところが、この組織では、その発表をするのが、エラーを起こした本人になっていたのです。経験豊富な先輩方は良かれと思って「〇〇しておいたらよかったね」と言ったり、「教科書に〇〇って書いてあるのに、なんでできなかったの?」とエラーを起こした当事者を責めてしまったりすることもありました。

エラーを起こしている時点で当の本人たちはとても傷ついているのに、さらにその会議で責められ、より傷が深いものになっていきます。

ですが、組織で一度当たり前になったそのミーティングは一向に変わることはなく、次第にメンバーは発表しなくていいようにと行動するようになりました。そして、なんと、エラーを起こしたにもかかわらず、なかったことにして報告しない人まで現れました。

これは本来の目的が大きく崩れている状況です。同じようなエラーを起こさないためにエラーを共有しているはずが、『エラーを隠す』というより大きなエラーが発生してしまっていたのです。

このときに、ミーティングの違和感に最も気づきやすいのが新人なのです。

初めて参加する人は、全体の前でエラーを報告して、吊し上げのようにされるこの光景に大きなストレスを感じるものです。

ですが、多くの場合、自分が未熟だから仕方ない。と自分の感情を押し殺してしまいます。

自分が悪い。自分が間違ってるから、全部合わせなければいけない。そう思ってしまってませんか?

もちろん未熟な部分もあるかもしれません。ですが、その嫌だと思う感情も大切にしてあげて欲しいのです。

組織のルールすべてが正しいわけではありません。おかしな部分もたくさんあります。だからこそ、全てを鵜呑みにして受け入れるのではなく、おかしいと感じた違和感を大切にし続けてほしいんです。

おそらく先輩や上司に相談しても、ルールがすぐに変わることはありません。

そういう状況が続くと、意識しているつもりでも、初めに抱いた違和感はどんどん薄らいでいきます。

そして、何年か経って新人さんがあなたに対して同じようなことを言った時に、「これが当たり前だから」と言っているかもしれません。

決してそうならないでほしいなと私は思っています。

自分だけの力ではどうしようもないこともあるかもしれません。ですが、一見ワガママに見える新人の違和感に共感できる部分はあるのではないでしょうか?そのモヤモヤに共感して、一緒に働きやすい環境を作る方法を考えてあげてください。

モヤモヤを感じているのは、きっとあなたたちだけではありません。多くの人がそう思っているはずです。賛同してくれない人も、実は心の奥底に封じ込めすぎて忘れているだけかもしれません。

違和感を忘れずに持ち続ければ、いつか賛同してくれる人が増え、より良い方向へ向かうと信じています。

だから、まずはあなたが自分の心に正直でいてください。



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