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現代キメラ

趣味は何かと聞かれたら、私はいつも読書と答える。本当の趣味はSNS、世間一般的に読書より低俗だろう。それ故にいつもなんら躊躇なく嘘の答えを発してしまう。そんな自分の本性を知ったら皆は私を嘘つきだと指をさすのだろうか。昔からそうだ。周りからの印象を気にして嘘をつく。読書もそうだし、料理もするとか、ギターもそこそこ弾けるとか、誰かが食いつきそうなものは一通り口に出せるよう準備している。それもこれも本当の趣味から得ているとも知らずに、知り合いは目を輝かせてくる。そんな自分の日常は毎日スーパーの半額惣菜、家には肝心のギターすらない。なぜ人というのは証拠もなく目に見えぬ言葉とやらを信じきってしまうのだろうか。


人はいつも何に動かされているのだろうか。私は「言葉」だと思ってる。社会も学校も、言葉が無くては作られることも動くこともない。スポーツも誰かの号令がなければ始まらない。映画もセリフがなければ物足りない。不思議なものだ、あんな細長い線の集まりが単純な喜怒哀楽から複雑な世界まで作り出す。なぜ私がSNSを趣味にしているか。それは人の本音が知れるから。言葉は人を動かす力があるが、文化や経験がその力を弱くする。幼稚園の先生がどんなに意地悪な園児がいても、笑顔で「意地悪はダメだよ。」と語りかけるようなものだ。友人同士でも建前が本音の邪魔をする。本音より強いものはない。だけども押し通せば待っているのは孤独。ではSNSではどうだろう。何を書き込もうが自分の気分次第。賞賛も、発表も、評価も批評も好きなだけできる。顔も素性も知られなければ誰もがライオンになれるのだ、ここでは貧弱な山羊になる必要はない。さぁ今日も始めようじゃないか、本音の書き込みを。時間なんか気にせず何文字でも。私は本音を書いているだけ。絵が下手、小説がイマイチ、つまらない映像、不味そうな飯の数々、本心を相手にぶつけてやろう。恥ずかしくはない、何よりも清く正義に溢れているからだ。建前という名の邪悪でしか物事を語れぬよりはましだろう。現実で友人達に嘘をついている私は、SNSでは正直者になれるのだ。


嘘をつく時は表情が軽く心が重いが、本音は心を軽くする。今日も書き込む手が軽やかで、多くの人を動かしていく。私の言葉は正直だ、だから目を逸らさないでくれ。これはあなたの為でもある。心が躍るだろう、私の言葉で君は変われるのだから。そうだ、建前は人間だけのもの。ここでは人間を捨てて化け物になるのはどうだろう。私の言葉は決して軽くない。だから君も本気で向き合ってくれ。君の先祖も時に化け物として歩んできた。人は化け物になる事で正直になれる。怖がらなくていい、飛んで吠えて駆けよう。昔も今も関係ない。


いつの時代も、人は怪物になれる。


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いかがでしたか?この物語の主人公は化け物の方が心が清らかだと発しています。もしかしたら、彼を化け物にしたのは我々の文化や経験なのかもしれません。この小説の題材になったグッズはこちらからお買い求めできます。ジコマンキングのグッズはSUZURIにて販売中!↓


 


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