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宇宙人ビンズと雪山のメンキ

この物語は、惑星テコヘンがありとあらゆる星々を調査するために結成した「惑星調査団」に所属する能天気な宇宙人ビンズと、その友ベーリッヒの活動報告である。


泥団子をピカピカにする意味ってなんだったんだろうね!やぁ諸君!テコヘン惑星調査団団員のベーリッヒだ!今相棒のビンズと共に極寒の惑星カチラで調査兼魚釣りを楽しんでいる最中だ。こういう寒い惑星の魚は、果てしなく美味い。やはり過酷な環境を生き延びているだけあって身の弾力が桁違いだ。ビンズは氷の湖にドリルで穴を開けて魚を釣り刺身にする。それを不機嫌な顔でひとつひとつ味わっていく。おい、私の分もとっておけよ。ビンズが一通り食べ水筒の茶を飲むと一言。

「味が落ちたなぁチクショウ!」

大自然に向かって失礼な。私もひとくち刺身を食べるが、まぁ、その、落ちたと言えば落ちたのかな?それに我々が昔調査してた頃より気温も上昇しているし、ここの水温も若干高い。近隣に住むカチラ星人たちはさほど気にしてはないようだが、我々調査団としては気になる部分が多い。いや、私としては気になる点が多い。ビンズは魚の味が落ちたことの方が重要なんだろうしな。


気温の上昇がこの惑星を支える大氷石だと考えた私は茶をずっと飲んでるビンズを連れて吹雪く山の洞窟に入った。おい、私の分の茶も残しておけよ。おっと、大氷石の説明がまだだったな。わかりやすくいえばドライアイスなんて比較にならないほど長ーい時間冷えている巨大な石だ。この惑星にはそれがいくつもあり、惑星を冷やしているという。この地域にだけ温度の異常が出たのは、この辺の大氷石に何かが起こったと睨んで赴いたという訳だ。大氷石のエネルギーは調べればすぐに出る。私のスキャナーが反応している。あと50メートルに差し掛かったところで見えた。前にも別の場所で見たが素敵なものだな。黒い中に青がある輝き、私ならそう表現する石だ。それに凄まじい冷気を感じる。しかし、今のところその存在に異変は見られない。もう少し近づいて確認しようとしたその時、ビンズが水筒を捨て光線銃を引き抜いた。

「伏せろベーリッヒ!」

私が伏せた瞬間に何かが私の頭をかすったかと思えば、さらにビンズが光線銃の引き金を引き光線を放つ。私が振り向くとそこには軽快に動き回る何かがいた。

枯れ木やワラを集めたかの様な上着に巨大な刀。怪しげな仮面を被り二本の角が鬼を連想させる。馬鹿な、前に調査に来た時はこんな生き物いなかったはずだ!

その鬼は刀を振り回してビンズと対峙する。だが惑星調査団員ナンバーワンの実力を持つガンマンのビンズはその攻撃を華麗に避けながら光線銃で応戦する。流石がビンズだ。戦闘ならプロの軍人を遥かに凌ぐ。しかしそんなビンズと互角に戦うあの鬼は何者なんだ?カチラ星人とは若干違うし、宇宙海賊にしては原始的だ。もしや、我々の知らない先住民族だろうか。ビンズは急に戦闘をやめた。

「ベーリッヒ!一旦引き上げだ!」

「え、あ、わかった!わかったから置いていくな!」


我々はなんとか逃げ延び、カチラ星人の宿の世話になる。宿には昼間から酒を飲むカチラ星人達が多くいて、ビンズも彼らと酒を飲み騒いでいた。逃げたかと思えば今度は酒か。何を考えているんだか。すると宿の店主が私にビールと魚の燻製を持ってきてくれた。

「テコヘンの方。良ければどうですか?」

「あ、ども、、、。」

私は店主と一緒に酒を飲むことになり洞窟の鬼について話を聞いた。店主は彼をメンキと呼んでいた。なんでもここ最近急に現れた鬼だそうだ。やはりな、我々をはじめ他の調査団員もここへ来ているというのに情報がなかったからな。店主曰く困っている訳ではないが、最近では不気味に思う住民もいるという。まぁ、ビンズが苦戦する化け物が人里に来たらここの住人じゃどうも出来ないだろうから無理もないな。さて、謎が増えたな。気温上昇に未確認生命体。そしてもうひとつ、うちのバトル馬鹿がなぜ戦闘を急にやめたのか。


その夜、私が宿の部屋のベッドで眠っているとビンズは私を起こす。

「起きろベーリッヒ。」

「ビンズ、、、?今深夜だぞ?」

「もう一度あの洞窟に行くぞ。奴らが動いた、尾行するぞ。説明は後だ。」

「よ、よくわからんがわかった。」


私はビンズと荷物を持ち宿をこっそりと出て、彼らを尾行する。ビンズがいう奴らとは、ビンズと酒を飲んでいたカチラ星人だ。ランタンと猟銃を持ちメンキのいる洞窟に進んでいる。ビンズは大氷石を取りに行くという情報を酒を飲み彼らから聞いていたという。ビンズが何を企んでいるかはわからんが、彼はひとつだけ保証してくれた。

「調査のきっかけは俺が作ってやる。俺様にしては珍しいサービスだろ?」

「そうだな、破格のサービスだこと。じゃあきっかけまでお前に任せようか。ついでに、後でサービスしたくなった理由も聞かせてもらうからな。」


我々はカチラ星人の後ろを尾行し、洞窟に少し進んだところで岩陰に隠れて様子を見る。すると彼らはツルハシやらスコップやらを持って大氷石に近づいていく。なるほど、予想以上に荒い方法で大氷石を取っていたようだ。よく見ればあの大氷石、左端の方に新しい傷のようなものがある。あんなに荒い取り出し方をすれば大氷石に異常が出るのも無理はない。そして、それを許すまじとあの鬼が勢いよく現れてカチラ星人と戦闘を繰り広げる。メンキの身体能力は側から見ると恐ろしい。カチラ星人達が洞窟をこれでもかと響かせる程に銃撃しているというのにそれを回避している。しかし数が多いためか反撃に出る事が難しいようだ。ビンズは荷物から何かを取り出して彼らの上に投げる。中くらいの便に透明の液体が入っている。それを光線銃で撃つと白い煙のようなものが大量に出て彼らを混乱させる。なるほど、中身はお湯だな。お湯が気温で凍って煙になったんだ。慌てたカチラ星人は洞窟を出て、メンキは煙の中まだ刀を振っている。煙が無くなると同時にビンズは武器を持たずにメンキに近づいていく。当然メンキはビンズに向かって刀を振るうが、ビンズはそれを避けに避ける。するとどうだろうか、メンキは疲れたのかその場に膝をつく。先程の軽快な動きが嘘のようだ。ビンズは私にもういいぞと合図を出し、私は恐る恐るビンズの方へ行くと、ビンズはメンキの上着を軽くめくっていた。なんとメンキは右胸辺りを撃たれていたのだ。それも今ではなく前から撃たれていた傷のようだ。私は大人しくなったメンキに消毒液と包帯を使い治療を施す事にした。それこそ最初は抵抗したが、メンキは次第に心を開いてくれた。


治療を終えた私はメンキを寝かせビンズから色々と聞いた。戦っている最中にメンキがわずかに体から血を流しているのを見て戦いをやめたらしい。傷ついても戦う彼を見てなんとかしてやれないかと考えていた矢先、帰った宿でカチラ星人達を見つけ話を聞いたという。

「ついでにメンキの服に補修の跡とその下にコゲのようなものがあった。宿で出会った奴らが旧式猟銃を持っていたからな、それでピンときた。こいつらに撃たれたんだとな。不謹慎になるが、この傷のおかげで首が飛ばずに済んだなベーリッヒ。メンキの本気は恐らくこんなもんじゃない。」

「私も不謹慎になるが、その点では奇跡だと思ってる。お前がサービスしてくれた意味もな。」

「カチラ星人には申し訳ないが、未確認生物を奴らにやられる訳にはいかないだろ。それに、こいつが死んだらあの石もおじゃんだった。さ、メンキも起きたところだし案内してもらおうか。」

メンキはいつの間にか起きて私の隣にいた。

「うぉびっくりした!!」

「傷、ありがと。多分、大丈夫。」

「ちょっと喋れるんかい!」


我々はメンキに案内され洞窟の奥へと向かう。するとどうだろうか。そこには霜に覆われた壁画の数々がある。驚いた事に床も凍ってはいるが文字などが描かれている。そして周りにはメンキの仲間であろう者たちが凍りついている。念のため調べてみたが、どれも体が凍りつきすぎて皮膚の状態が酷い。メンキは悲しそうに語った。

「目覚めたの、俺だけ。仲間、もういない。」

私は壁画の内容を調べ今回の一件と照らし合わせた。そもそもカチラ星はかつてはどこも南国の様な島だった。メンキの一族はこの周辺にコミュニティを形成し平和に暮らしていたが、カチラには大量の隕石が降り注いだ。隕石のイメージとして物凄く熱くて燃えてるものを想像するだろうが、落ちてきたのは真逆。そう、大氷石だ。メンキの一族もなんとかしようとしたが、大氷石が落ちてきた場所が悪かったのか回避する手立てはなく、生きた証の数々をここに残した。惑星が凍りつくまでに色々と挑戦したのがわかる。そして全員凍りつき、壁画の状態から推測するに3000年後アクシデントが起こった。どこぞの誰かが大氷石を削り、気温が急変。メンキの眠っていた氷が溶けて、彼は眠りから目覚めた。この辺に関してはもう奇跡だな、メンキは相当上手く冷凍保存された状態だったらしい。しかも少し氷が溶けたとはいえ、寒い事実が残る中で目覚めたのはメンキの一族がとてつもない生命力を兼ね備えていた証拠だろう。しかし目覚めたの後、カチラ星人と遭遇し戦闘、そして胸に傷を負う。不思議に思ったのはここだ。壁画によれば彼らはココナッツなどを神や神の恵みとして深く崇めていた。その文化があるメンキが大氷石を守る意味とはなんなのか。

「前の神達は凍って死んだ。だから、これが今の神。」

弱肉強食の考え方か。つまりメンキにとってこれは最強の神という訳だ。まぁ、これだけのエネルギーを秘めた石だ、神の石と呼んでも不思議ではないな。それに鉱物としても大変貴重な代物だ、売れば相当金になる。カチラ星人が狙う理由はそれだろう。ビンズが手を挙げる。

「ベーリッヒ先生!大氷石が思い切り壊れたらどうなりますか?」

「いい質問だビンズ君。気温の上昇は壊した瞬間がピーク、その後は緩やかになり一定になると考えよう。削っただけでメンキの眠っていた氷を溶かす程だ、半分破壊されたなら、この洞窟の半径40キロの範囲各地で雪崩や崩壊が相次ぐだろうな。元は陸地の少ない惑星の様だからな、海が凍って雪の地が上にあるだけだ。おまけに、崩壊する範囲に他の大氷石があって壊れたらドミノ式に惑星のあちこちで崩壊が起こる。また惑星が凍って安定するまでどれくらいの時間を要し、その間にどれだけのカチラ星人や動物達が死ぬか。下手したらこの惑星が死の星になるかもしれない。」

そう考えるとぞっとするな。側から見れば大きめの石を傷つけただけでこの騒ぎ。いや、今まで大きな破壊がなかったからなのもある。とにかくやれるとこ事は2つ、各所にある大氷石を早急に保護対象自然として登録しカチラ星の管理下に置き安全を確保する事。これには最低でも1〜2日かかる。もうひとつが厄介だ。そう、カチラ星人への説明である。



私とビンズは宿のあった町に戻り住民達を集め大氷石へ近づかないよう説明する。

「と、いう訳ですので大氷石には近づかないようお願いします。触ったり、当然壊したりする行為は御法度です。」

私とビンズが説明を終えて周囲の様子を見ると、納得していなさそうな連中がこちらを睨んでいる。我々はその場から離れ今後の対策を練る。

「ビンズ、お前はどう思う。」

「仮に俺たちが帰ったら、保護申請が終わるまでに動くやつも出てくるだろうな。まぁ、その間壊そうが忠告を無視しただけで犯罪とまではならないからな。傷が完治してないメンキが、それまであの場所を1人で守れるとは思えない。」

「どうすればいいのか、、、。」

「ほぉ、その言葉が出るか。考えは一緒だと思ったぜ。」

「、、、。さすがは私の相棒だ。たまには、荒っぽい思考も必要そうだな。よし、準備に取り掛かろう。」

我々は一旦宇宙船に戻り準備を始める。奴らはまた夜にやってくるはずだ。決戦は近い。



その夜、町が寝静まったころ、カチラ星人達はあの大氷石がある洞窟にやってくる。その数は40越え、大氷石を奪うため最多でやってきたのだろう。息を吐くたびに真っ白になるその空間に緊張感が足された。欲にまみれた彼らが宝へ近づくと、2体の小鬼が前に出る。メンキを思わせる小鬼が2体。何を隠そう、私とビンズである。即席で作ったお面と服の効果は中々だ。これが我々の決断だ、保護申請完了までここを守る。当然、我々の登場にカチラ星人は動揺した。

「なんだと!?メンキは1体だけじゃなかったのか!?」

「うろたえるな!所詮2体だ!」

確かに2人だけさ。だがな、私の隣にいる彼は君らが思ってる10倍は強いぞ。ビンズは懐から即席で作った棍棒を両手に持ちカチラ星人に警告する。

「これより先、通さない。去れ、ザコども。さもなくば、手と足を折る。」

ぶっちゃけ止めるのが目的で正体がバレてもいいんだが、ビンズはなりきるのにこだわりがあるようだ。出来れば、これで怯えてくれた面々が帰ってくれればいいのだが、あー、その、なんだ、、、。思い切り銃を向けられている。私は岩陰に隠れたと同時に、ビンズヘカチラ星人が発砲するが、ビンズはそれを回避してカチラ星人に突っ込んでいく。さぁここからは、小鬼ことビンズによって蹂躙されていくカチラ星人をご覧頂こう!棍棒2本対猟銃なのに何故ここまで差が出るのか。ビンズの類稀なる身体能力によって1人また1人と倒れていくカチラ星人。そしてビンズは倒れるカチラ星人に対してウスノロと連呼し精神攻撃まで加えるというプチオーバーキル。ケタケタ笑いながらカチラ星人をぶっ倒していく相棒、慌てふためくカチラ星人、いつもながらドン引きする私。いつも光線銃とか戦闘機で戦う彼を見ているが、近接戦闘だと凶戦士そのものだな。痛めつけるのはいいが、殺すんじゃないぞ。そして数分後、カチラ星人は勝てないと見込んだのか洞窟を出ようとする。ふぅ、今回の一件も終わりのようだな。奥で休養しているメンキに伝えてこよう。あそこまで痛めつければもう来ないだろう。私はビンズの元へ駆け寄る。

「ご苦労様!怪我はないか?」

しかしビンズはその場にしゃがみ込み地面に手を当てる。

「どうした!?やはり弾が当たったのか!?今すぐ消毒を、、、!」

「素人の銃撃が当たるかよ。だが、何か近づいてくる。洞窟の外、結構デカいのが。」

ビンズは傷ついたのではなく振動を確かめていたのだ。そして私にも聞こえる。鈍くドスンと響く音が、少しずつこちらに迫ってくる。そして洞窟の入り口から出てきたのは人型の巨大ロボットだ。藍色の装甲に背中や手にはありとあらゆる武装が施されている。中央に見えるコクピットにはいかにも悪そうな顔のカチラ星人が乗っており、ロボットから声が聞こえる。

『俺様の部下が外で倒れているが貴様らの仕業だな!得体の知れない小鬼め、このKS-6号が相手だ!』

あおぎゃあ!!最後の最後にエグいのが出てきたぁ!奴らも本気というわけか。

『大氷石は俺たちのものだ!そのデカさなら高く売れる!邪魔するならぶっ潰してやる!』

ロボットの腕からガトリングガンが現れて私とビンズに向けられる掃射され、当たる前に我々は急いで岩陰に隠れ光線銃を準備する。

「ビンズ!もう棍棒じゃどうしようもないぞ!」

「言われなくてもわかってるよ。しっかしKS-6号かぁ。ロボットスペック900の旧式モデルだな。ふーん。」

「随分余裕そうだけど、900ってどれくらい強いんだ?」

「安心しろ、神よりは弱い。」

「質問の答えになってないぞ!どうすればいい!?」

「そこのバッグに武器がある。あれくらいなら難なく、、、。」

ビンズが指差す方には氷の山があった。どうやら、あのロボットが銃をこちらに撃ったせいで洞窟の氷が上から落ちてきたようだ。ビンズはそれを見て懐からチョコバーを取り出して食べる。

「人生って、うまくいかないな。」

そうだな、それには共感するよ相棒。ビンズはチョコバーの残りを私に寄越し、前に出て銃を構える。

「カバンの確保は任せた!俺はちょっと遊んでくる!」

さて、ビンズがKS-6号を引きつけてる間に私はカバンをなんとか氷の山から取り出そう。私はチョコバーを食べ終え、氷の山に光線銃を放ち氷を溶かしていく。しかし落ちた氷が多い為鞄の捜索は難航した。ダメだ、時間がかかり過ぎる。一方のビンズはKS-6号を光線銃ひとつで凌いでいる。あれが人生を面白おかしく生きる男の戦闘力なのだろうか。しかし相手に決定的ダメージを与えられていないとなると、あまりもたもたしてられないな。何かないか、氷を溶かせられるもの、、、。私の横に先程ビンズが置いていった棍棒があった。そうだ!溶かしながら叩き割ればいい!私は右手に棍棒、左手に光線銃を持ち撃ちながら氷を砕く。先ほどよりはマシだがそれでもゴールが見えない。私は戦っているビンズに呼びかける。

「あとどれくらい戦えそうだ!?」

「3分と21秒!」

思った以上に明確なタイムリミットがあるようだ。ビンズというよりビンズの持つ光線銃の弾切れが近いんだきっと。すると私の肩を叩くものがいた。そう、メンキである。

「俺が、砕く。」

「ダメだ!君の怪我はまだ治ってないじゃないか!激しい運動をしたら傷から血が出るぞ!」

メンキは棍棒を私から奪い、棍棒と刀を手に持つ。

「お前達は、星の為に戦ってる。俺も、戦う、最後まで、、、。」

メンキ、、、。私が非力なばかりに、許せ。

「メンキ、私が溶かすから君は砕くんだ!」

私は光線銃を氷に撃ち、メンキはそれを圧倒的パワーで砕いていく。私が行っていた時よりもはるかに氷の減りが早い。すぐにゴールは見えた。カバンが顔を出したのだ。その直後ビンズが私を呼ぶ。

「おーい!もう弾が無くなりそうだ!何か寄越してくれ!」

私はカバンからライフルを取り出す。な、なんだこの物騒な造形は。このカバンの中身、どれも調査団仕様の武器じゃないな。また通販でやばい買い物しやがって。本来なら説教だが、今回は私も使わせて貰う!私はビンズにライフルを投げつけビンズはそれをキャッチしKS-6号に向けて撃つ。私はついでに説教しながらカバンの中に入っていたロケットランチャーを撃つ。

「通販で物を買う時は一言いえぇええ!!」

しかし流石はヤバめの武器達。KS-6号に乗るカチラ星人が焦り始める。

『こ、この野郎!やめろ!壊れちまう!』

メンキはKS-6号の足下まで走り、膝の方にしがみつき刀をひたすら打ちつけ始める。すると少しずつだが損傷しKS-6号がぐらつき始める。

『よ、よせぇ!!それ以上壊れたら立てなくなってしまう!』

メンキはどこか機嫌良さそうに答える。

「神を傷つけた、罰。」

あいつ、ビンズと少し性格が似てるな。2人とも、ヘラヘラしながらKS-6号を痛ぶり始めたな。様子を見ているとカバンの中がピーピー鳴っている。なんだ、時計か?私がカバンの中を覗くと、ライトが赤く点滅していてどう見ても丸い爆弾の様な物が発見される。どう見ても、作動してるやつだ、、、。

「ビンズ!爆弾のスイッチが入ってる!」

「マジ!?俺に寄越せ!メンキは離れてろ!」

メンキはKS-6号から離れ私はビンズに爆弾を投げる。

「次からは、せめて安全な爆弾を買えぇ!!」

私が投げた投げた爆弾をビンズは軽くリフティングし、メンキが攻撃していたKS-6号の膝へシュートする。その直後に爆弾は爆発しカチラ星人の悲鳴と共にKS-6号はうつ伏せに倒れる。ビンズは叫びながら我々と合流する。

「ゴォーーーーーーーーーーーーーールッ!!!」

うるせぇよ。まぁ、あれだけの爆発だ、もう立ち上がる事は、、、。

『よくも、俺たちの計画を邪魔したなぁ、、、。こうなったら、石ごと、お前もあの世へ送ってやるぅ!』

KS-6号が突然動き、右腕のミサイルが大氷石に向けられる。撃たれたら星がどうなるか、、、!その時、メンキはすぐさまKS-6号の右腕に向かいしがみついた後腕の向きを上へ変える。するとミサイルは上に発射され洞窟の氷が大量にKS-6号とメンキに降り注ぎ、メンキは生き埋めになってしまう。我々は急いで氷をかき分け探すが、何分経ってもメンキが見つからない。

「メンキ!どこだ!返事をしてくれぇ!」

「いねぇな。まさか、今の氷のせいで、、、。」

「彼は何年も氷漬けにされ今まで生きてきた男だ!今度だって生きてるはずだ!いや、生きなければならない!」

私は手がひどい霜焼けになりながら探すが、ビンズはそれを見てやめさせようとする。

「ベーリッヒ、、、。手が、ベーリッヒ!もうやめとけって!」

「メンキ、君にはもう家族はいないかも知れない。だが、まだここに君が信じる神がいる!それでも足りないなら私達が君の友になろう!気のいい、優しいカチラ星人と仲良く出来るかも知らないんだ!第二の人生をこんな事で終えないでくれぇ、、、!」

私が涙を流しながら探していると、ビンズも素手で氷をかき分け始める。

「ビンズ、、、。」

「どんな結果が待っていようと、胸張って帰ると約束しろ。俺たちとあいつがこの惑星を救った事に変わりはない。約束出来るなら、何日だって付き合うぜ。」

ビンズは勢いよく探し始める。

「こらメンキ!!うちの相棒は泣くと長いんだ!出てきたらいいものあげるぞ、、、!」

ビンズが氷の山に一歩進んだ瞬間足下が崩れてビンズは転んでしまう。するとそこからメンキがカチラ星人のパイロットを掴んで一気に出てきた。

「呼んだ?」

「メンキ!」

メンキ、メンキが生きていた!パイロットを救出する為に下へ潜っていたんだ!私は喜ぶ一方、転んだビンズは腰を打っていたらしい。

「と、とりあえず一件落着だな。うん。腰いてぇ。」


その後カチラ星の正規軍が駆けつけ、大氷石を奪おうとしたグループは一斉に捕まった。メンキは治療を受け、大氷石は早速軍の管理下に置かれた。メンキと話し合ったが、彼はここに残り大氷石を守る人生を歩むという。

「ここ、俺の故郷。カチラの戦士と、守る。」

「そうか。これから色々聞かれたり大変な事も多いだろうけど、君なら上手くやれるさ。ところで、ビンズはどこへ行ったんだ?」

するとビンズは小さめの箱を持ってくる。

「悪い悪い!メンキが元々南国の住人だった聞いたからな、宇宙船にあったのを持ってきたんだ。残り物で悪けど、、、。」

ビンズが持ってきた箱の中身はココナッツのチョコレートだった。6粒入りが2粒だけ。おい、一緒に買って私まだ食べてないやつだぞこれ。メンキは2粒とも口に入れる。

「あー、その、チョコレートが昔あったか知らないし、ココナッツの味がお前の求めるほど入ってるかわからないけど、、、。美味いか?」

ビンズが質問すると仮面の下からメンキは大量の涙を流していた。

「美味い、美味い、、、。」

入ってる量が少ないからといって、彼にとって思い出の味に違いない。するとカチラ星人の兵士たちが何人か集まってくる。

「君がメンキくん?俺さ、旅行で良く暑い場所に行くんだ!今度一緒に行かないか?」

「僕フルーツの缶詰持ってますよ!」

「色々苦労したな。だけどもう1人じゃないぞ、これからよろしくな。」

彼らの言うとおりだ。メンキはもう1人じゃない。そしてもう大丈夫とわかった今、我々は去らなければならない。報告とか、次の調査に向かわないと。我々が静かに去ろうとすると、メンキは我々を呼び止める。

「ビンズ、ベーリッヒ!最後に、俺の名前、本当の名前教えたい!」

そうか、メンキは元々現地の者たちがつけた名前だもんな。我々は振り返らずにその場に立ち止まり聞いてやる事にした。振り向いたら、悲しくなってしまうから。

「俺の名前、ユビリラスプロパロンボシットカスロラッタラブロロノスジャンブリータ!」

「じゃあなメンキ!」

ビンズが食い気味に締めたところで我々は手を振りながら去った。すまんメンキ、覚えるのは多分だいぶ後だろう。そうだ、宇宙船にたどり着く前に爆弾の件の説教だな。

「ビンズ、その、、、。なんだ、、、。」

やっぱりやめておこう。お互い、頑張ったんだから。ここはいつもの様に話すのが1番。

「なんでチョコを4粒食べた事黙ってた?」

「食ってから言っても怒るだろ。」

「お互い金を出し合ったんだから半分貰うのは当然だろ。他にも何か隠してないか?」

「先週お前のワイン開けた。」

「せめて許可を取れぇ!」


〜宇宙人ビンズと雪山のメンキ〜完

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いかがでしたか?久しぶりの宇宙人ビンズシリーズでした!今回登場した「雪山のメンキ」はHEXAにて展開中!他にも数多くのクリーチャーがあなたを待っています!ぜひこちらもご覧くださいませ!

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