そこに船が来る事はもうない。かつて栄えた港町の面影はなく、一面の廃墟に濁りの強い海、そして生臭い匂いを漂わせ、時に何かの骸が転がる。

この腐った町をよく軍団が来る。ここ最近名を上げた豪族が各地に侵攻している。その豪族の軍団がこの廃墟を戦の中継地点として使っているのだ。ここ最近の戦果は凄まじく、この腐った匂いの中、軍団は宴会をよくしていた。しかし、今回ばかりはその盛り上がりはなく、雨のせいもあってまるで通夜の状態であった。無理もない、軍団は敵に負け敗北。500はいたであろう兵は散り散りになり、合流したのは僅か20名である。数少ない食料を分け合いながら、降りしきる雨で喉を潤す。そんな中、1人の兵士が桟橋で海に向かって槍を突いている。どうやら腹を満たす為に魚を獲ろうとしているようだ。呆れた仲間たちは完全に彼を無視していたが、気がつけばその姿が消えていた。違和感に気づいた兵士達は武器を取り桟橋の方を見ると、僅かにだが海の濁りが赤くなっている。そして海から何かが飛び上がってくる。

羽根はまるで鋭い刃のよう。骨と皮のみで形成されているかのようでやたら細長い体が宙に浮いている。腹には口があり、不気味に発達した牙が海と雨に濡れ鈍く光る。針のようなクチバシと不均一にに配置された歪な目玉が、一目では疑った兵士たちの前に化け物がいると改めて認識させる。

怪物は羽から青白い光を放つ。その光は薄く鋭く、弓矢の比ではない速度で何発も発射された。兵士達はなす術なく青白い光に己の血を纏わせ倒れていく。目を、腹を、そして首を光が貫く。逃げた兵士達は散り散りに港町の建物に隠れる。だが、怪物は兵士たちを逃す事はなく、建物に向かって先ほどの光を放つ。壁には突き刺さるものの、貫通するまでには至らない。まるで酒場で行われる、木製の的にナイフを当てるが如く。普段は盛り上がるその状況が、幸運と思う日が来るとは誰も思っていなかっただろう。安心した兵士が建物の窓からチラリと顔を出すと、あの怪物が螺旋状に羽を自らの体に巻き付ける。その瞬間、覗いていた兵士の体にあの怪物のクチバシが突き刺さる。怪物は体を回転させ、まるで大きな槍のように建物ごと貫いてきたのだ。その異変に気づいた他の兵士達は逃げ出し、時には弓で対抗するもそれはただ虚しいだけだった。

次々と倒れていく兵士達、そして唯一残ったのは新兵の少年である。持っているのは剣一本。近づいても離れても、餌食になる事実は変わらない。彼が導き出した答えは息を殺して動かない事であった。シャリシャリと奇妙な羽音が雨に混じって聞こえてくる。羽音が近づくたびに、息も鼓動も止まってしまえと強く願う新兵であったが叶う事はなかった。怪物はついに建物の陰に隠れていた新兵を見つける。怪物に見つめられた新兵は剣を握る事はなくただ怯えていた。するとどうだ、雨は止み新兵と怪物を太陽が照らす。新兵は怪物よりもその太陽に目を向けてしまった。これが最後に見る光の姿なのだと。そして怪物も太陽を見る。怪物は呼吸をヒューヒューとさせながら、新兵に見向きもせず一目散に海へ飛び込んでいった。あまりにも突然の出来事に、新兵は感情が飛んでいた。あの怪物が太陽に弱かったのか、それとも兵士を殺す事に飽きたのか、その理由は知る由もない。新兵は仲間達の遺体を集め墓を作ってやろうとしたが、ひとつも見当たらなかった。そういえば、怪物の体はあんなに大きかっただろうかと、ほんの少しだけ考え、新兵は眠った。

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クリーチャー原案・イラスト:KANISI(Twitter: https://twitter.com/acedia_noa?s=21&t=4OW9H2459mT6PLWhjHyWjQ)

小説:ジコマンキング

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いかがでしたか？今回はなんとはじめてのイラストと小説のコラボでございます！私がTwitterでコームの弓兵をお見かけしてこちらからオファーをしたところ、KANISIさんはなんと新しくイラストを描き下ろしてくれました！！設定等を全て盛り込めなくて申し訳ありませんでしたが、私なりに物語に落とし込んでみました。KANISIさん、気に入ってくれるかなぁ、、、。この度はコラボしていただきありがとうございます😊

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今回イラストを提供してくれたKANISIさんのTwitterアカウントはこちらから！イラストを是非ご覧くださいませ♪↓

Twitter: @Acedia_NOA

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