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不動産とブロックチェーンは、相性がいいのか!?

今回は、不動産業者さんが気になっている「不動産とブロックチェーンの組み合わせは相性がいいのか?」について探っていきます。

結論から言うと、
相性の良い部分と悪い部分が混ざっています。

「不動産」と言っても、不動産ビジネスは周辺事業まで含めると多岐にわたります。また、自社の責任の範疇の領域だけの話なのか、エンドユーザーまで含めた一連のUXなのか、と言った範囲も関係しています。

マーケットによる分類

  • 証券化、金融商品

  • ローン関連

  • クラウドファンディング

  • 業者向けSaaS

  • 流通ポータルサイト

  • 取引データベース

  • 鑑定, 査定

  • 仲介事業

  • 保有・賃貸事業

  • 開発・販売事業

  • 管理事業

  • 不動産ファンド

このように、さまざまなマーケットが不動産事業と言っても存在します。

ブロックチェーンの使用・役割

ブロックチェーンを使用する前に、why blockchain? とよく言われるように、なぜブロックチェーンで実装するのかは考える必要があります。
ただし、筆者としては、答えが必ずしも技術的優位性でなくともいいと思っています。中央集権的な仕組みの脱却という思想や、不動産市場の透明性という社会的命題のためで十分だと考えます。
一方、ブロックチェーンの特徴と技術と哲学に対する理解は必須です。

ブロックチェーンの特徴として、

  • ほぼ改ざん不可能なデータの保存場所

  • 何かしらの証明書の発行、保存

  • (スマートコントラクトによる)イベント執行の自動化

  • 誰も信用する必要のない資産管理スペース(ウォレット)

広義のブロックチェーンの特徴は、このような役割が代表的です。

相性が良さそうな組み合わせ

マーケットとブロックチェーンの特徴を考慮し、相性が良さそうな組み合わせをあげてみます。

  1. 各事業者 × 共有データの保存

  2. 鑑定評価 × 真贋証明

  3. 証券化・クラウドファンディング × 権利証明(信託・受益権)

  4. ローン審査 × 個人の履歴証明

  5. 取引データベース × 改ざん不可能なデータの保存

  6. 仲介業 × エスクローコントラクト(ウォレット)

  7. 賃貸手続き × スマートコントラクトの自動化

  8. 販売事業 × 権利証明・決済

  9. 管理事業 × スマートコントラクトによる賃料回収

上記からピックアップして捕捉します。問題点や課題は今回無視します。ご要望があれば、今後のnoteで書きたいと思います。

1 各事業者 × 共有データの保存
各事業者間でデータを共有するするためのブロックチェーンの活用は、すでに実証実験が行われており、いくつかコンソーシアムチェーンが立ち上がっています。
家を借りるとき、不動産仲介、管理会社、インフラ事業者(水道、電気、ガス)、金融機関、保証会社など、一連のステークホルダーの間で、ユーザーデータや不動産データを共有するという構想です。家を借りるときに、いちいち申し込み書に個人情報を入力する必要がなくなり、UXが向上する取り組みです。

6 仲介業 × エスクローコントラクト(ウォレット)
エスクローは、証券口座が使われます。2者間の取引があったとき、第三者を介して資金を移動し、決済する方法です。
不動産取引の場合、必ずしも相手を信頼できるとは限らない上、決済と権利の移転にタイムラグが生じる場合があります。そういったときに、第三者機関としての役割を、ブロックチェーンのウォレットに持たせることができます。
例えば、3人のうち、2人の署名で資金が移動できるウォレットを使うことで、エスクローと似たような役割になります。

7賃貸手続き × スマートコントラクトの自動化
賃貸事業において、ブロックチェーンはどう活用できるのかという質問をいただくことがあります。
理想的には、申し込み→審査→重説・契約→決済→引渡し までをオンラインで完結することです。さまざまな法律を一旦無視したUXのみを考えると、ブロックチェーン技術を組み合わせると、借主は、自分の電子署名でサインするだけで、契約の締結・決済・鍵の引き渡しを完了させることができます。
現在は、宅建業法が適用されない範囲で、実証実験がされている、もしくは、宅建業法の範囲内でアナログな手法と組み合わせた仕組みになっています。タイムシェア型の賃貸、駐車場の賃貸などからスタートしていきそうです。
ちなみに筆者は、USDTの賃貸借契約をおそらく最初に締結した仲介で、今は駐車場の契約権利をNFTでこっそり販売しています。

8販売事業 × 権利証明・決済
売買取引へのブロックチェーンの活用は、世界中で行われています。しかし、今おこなわれている手法がベストというコンセンサスにはなっていません。代表的なプロジェクトは「Propy」です。Propyは、プライベートチェーンを活用し、不動産取引をブロックチェーンで置き換えようとしています。
売買で難しい点が、登記移転の方法と、ブロックチェーン上の権利とリアルの権利の整合性・真贋性です。世界では、登記までブロックチェーンで行うための取り組みがいくつか存在します。日本では、まだ時間のかかりそうな分野で、現状できる方法としては、購入権利をトークンで販売することや会員権として販売することくらいです。

9管理事業 × スマートコントラクトによる賃料回収
不動産管理事業とブロックチェーンの組み合わせは、管理事業者内部のシステムでは、管理の修繕履歴を物件ごとのトークンで保存しておくことができます。
他には、スマートコントラクトで借主から賃料を自動的にサブスクリプションのように支払ってもらったり、敷金の残高を透明化したりできます。
どれも、管理事業者のみでは完結した仕組みにならないため、パートナーが重要になります。

最も重要なこと

このように不動産事業とブロックチェーン技術の組み合わせについて書いてきましたが、一番重要なことは「不動産事業そのものが変化していく」ということです。

70年代の不景気、80年代からのバブル期、2008年のリーマンショックを経て、不動産投資事業を中心に、デベロッパーやアセットマネジメント、プロパティマネジメント事業は大きく役割が変わってきました。
現在、コロナショックから回復に向かい、長期的なインフレ(スタグフレーション)時代に突入しようとしている中、生活のしかたも大きく変わってきています。

ブロックチェーン技術によってのみ不動産事業が変化するわけではなく、私たちの生活の変化に適合したテクノロジーが使用され、まったく新しい不動産サービスが生まれてくると考えています(Airbnbが生まれたように)。

今後10年を見据えた不動産サービスとは、どんなサービスで、どのように社会に浸透していくか、がこれからの未来の不動産事業では一番重要なことではないかと思います。



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