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書籍解説No.2「サイコパス 秘められた能力」

こんにちは。
前回の投稿はこちらからお願いいたします。

前回は、書籍解説の第一弾として「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」を取り上げました。

今回解説するのは「サイコパス 秘められた能力 著:ケヴィン・ダットン」です。

皆さんは「サイコパス」と聞いて何を想像するでしょうか。犯罪者、狂人、連続殺人鬼など、ネガティブな言葉ばかりが聞こえてきそうです。
たしかに「サイコパス」は、方向性如何によってこうした犯罪者予備軍に陥る可能性をはらんでいます。しかし、この一種の特異な「能力」は成功者になるための一つの条件にもなりうるのです。

ここで、サイコパス度が高い職業トップ10を以下に並べます。

1.企業の最高経営責任者(CEO)
2.弁護士
3.報道関係(テレビ/ラジオ)
4.セールス
5.外科医
6.ジャーナリスト
7.警察官
8.聖職者
9.シェフ
10.公務員

いかがでしょうか。一般的に多くの名声や収入を得られているような職業が並んでいます。
これらの職業に共通した特性や能力はいったい何か。そもそも「サイコパス」とはどういった性格特性か。成功者になるために、その能力をどのように操るべきか。これらについてまとめていきます。

キーワード:ビッグ・ファイブ、機能的サイコパス、SOS気質、(サイコパスに)なりきる、読書

【サイコパスの特徴】

サイコパスの大きな特徴の一つは「感情を機械的に処理できる」ということである。
これを聞いてどういった人をイメージしただろうか。

・共感性が欠如し、感情の波がなく平気で人を傷つけられる冷徹な犯罪者?
・重要な決断が迫られた時に、周囲に流されず最善の決断を下せる成功者?

「感情を機械的に処理する」ということは、言い換えれば「感情を無視して」行動できるということである。彼らにとってみれば、多くの人が抱える恐怖や不安にような感情とは無縁なのである。

これが良い方向に転べば、周囲に流されずに最善の決断を下せる成功者に近づく。また、成功者とまではいわなくても、常に合理的な選択をすることができるようになる。苦手な上司や好きでもない知り合いから時間とお金と労力の無駄ともいえるほど乗り気がしない飲み会に誘われ、どうしても断り切れずに嫌々参加してしまうのか、余計な情を挟まずに頑として断れるのか、というような日常生活においても作用する。
彼らは恐怖心が欠如していて、精神的強さを持ち、自信にあふれ、カリスマ性があり、一点集中する力に長けている。

一方で、悪い方向に転ずれば、他人の痛みに共感できない犯罪者の道へと突き進んでしまう。
闇の三位一体(The Dark Triad)という言葉をご存じだろうか。これは、社会的苦痛を恐れずに他者を攻撃し、組織や対人関係おいて問題を引き起こすような人間を構成する3つの性格特性の総称である。そのなかの一つとしてサイコパスが挙げられている。

・ナルシシズム (Narcissism) うぬぼれの強さ
・マキャヴェリズム (Machiavellianism) 人を食い物にする不実さ
・サイコパシー(Phychopathy) 恐怖心の欠如、非情さ、衝動性、スリルの追求

【ビッグ・ファイブ理論】

ビッグ・ファイブとはいわゆる性格診断のことで、人間の基本的な性格特性を表すものとして統計的な検証がなされた指標である。この統計は、世界中の心理学に関する論文で用いられており、最も信憑性が高いともいわれている。
そのビッグ・ファイブ理論によると、私たちの性格は以下の5つの因子の組み合わせとバランスによって決定されていると考えられている。

1.経験に対する開放性/知性
2.誠実性
3.外向性
4.協調性
5.神経症的傾向

これら一つひとつの要素の説明は割愛するが、先述したように人間の性格は5つの因子の組み合わせとバランスによって構成されている。

このビッグ・ファイブテストの結果として、成功しているサイコパスとそうではないサイコパスの性格は似ていることがわかっている。連続殺人犯によくみられる特徴―うぬぼれの強さ、説得力、外面のよさ、冷淡さ、やましさを感じないこと、他人を操ること―は、政治家や世界の指導者にも共通するというのである。

これは余談だが、リサ・ソールズマンとアンドルー・ペイジの実施した調査によると、10の人格障害はすべて、ビッグファイブ・モデルの枠組み内で説明できると判明し、そのなかでも「協調性」と「神経症的傾向」の2つが重要な要素を担っているという。
精神的苦痛を特徴とする人格障害(妄想性、統合失調型、境界性、回避性、依存症)は神経症的傾向と関連があり、対人関係での問題を特徴にするもの(妄想性、統合失調型、反社会性、境界性、自己愛性)は、当然ながら協調性に影響する。

さて、サイコパスの性格を備える成功者と犯罪者の性格が似ていることは判明した。
しかし、両者を分ける決定的な要因というのはいったい何か。

【サイコパシーと功利主義】

合理的な判断が下せるようになるための重要な要素は「サイコパスになるのではなく、サイコパスの役になりきる」ことだと著者は述べている。つまり、状況に応じてそれを意図的に使い分ける必要があるということである。

明らかに間違っていることを周りの大多数の人間が支持していたとしても、周囲に流されそうになる自身の感情を無視して決断をする。

このように、状況に応じて「怖いもの知らず」のスイッチを切り替えられるのが「機能的サイコパス」である。この人は、スペクトラム的なサイコパスと違って、感情を巧みにコントロールできる。機能的なサイコパシーは状況に依存しており、言い換えれば意図的にサイコパスの「状態」へと入り込むことができる。

サイコパス - まずい意思決定 = 機能的サイコパス

【SOS気質】

SOS気質とは、追求(Strive)し、克服(Overcome)し、成功(Succeed)するサイコパスの能力の組み合わせである。著者はこれを「七つの決定的勝因」と名付けた。

1.非情さ
2.魅力
3.一点集中力
4.精神の強靭さ
5.恐怖心の欠如
6.マインドフルネス
7.行動力

どの能力がより必要かは状況に応じて変わってくる。機能的サイコパスの部分でも述べたように「サイコパスになりきる」ことが重要であり、これらの能力の配分を間違えずに場面に応じて使い分けられれば、自分の望みどおりのものを手に入れるのに役立つ。

一方で、使い方を誤った場合には、暴君や犯罪者にもなりうるということである。それを避けるためには、必要に応じて役になりきれるようにコントロールしなければならない。

【最後に】

余談であるが、読書には脳の皮質に新しい神経回路を創り、世界観を変える効果がある。ニコラス・カーは論文「読者の夢(The dreams of Readers)」のなかで、読書は「他人の内面に対してより敏感」にする効果があると述べている。言い換えれば「他者に感情移入しやすくなり、共感能力の上昇が期待される」というわけである。

共感能力の低さはサイコパスの一つの特徴でもある。犯罪者的なサイコパスに陥らないためにも、読書の習慣を継続させていきたいものである。

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