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スピード恐怖症

 USJで,ジェットコースターの「ザ・フライング・ダイナソー」が緊急停止し、乗客が取り残された……というニュースがあった。
 人命に関わる事故でなかったことが、何よりでる。

 僕としては、取り残される不安以前に、ジェットコースターそのものに対する恐怖心が強い。
 本音で言うなら、カネを払ってまでなぜ、恐い思いをしたがるのだろう。

 なんのコトは無い……僕は、完全にスピード恐怖症なのだ。

 遡るに、小学校も低学年の頃だろうか……家族と箱根の方に遊びに行った時のことだ。
僕を喜ばせようと思ったのだろう……モーターボートに乗せてくれたのだ。もちろん、何がしかの金銭を支払って。
 ところが家族の思惑とは裏腹に……スピードが上がるにつれ、僕は顔面蒼白になって、ほとんどパニック状態に陥ってしまったのだ。

 たぶん、これが引金になったのだろう。スピードが出る乗り物の類い……ジェットコースターは言うまでも無く、飛行機や自動車ですら嫌悪するようになった。

 中学の修学旅行の時、高速道路のバスにあって……今、時速90キロを超えました、というガイドさんの声に、周りは歓喜していたのだが、僕一人震えていたものだ。

 成人してからも、免許取り立ての従兄弟の運転する車に同乗、その下手くそに無謀な運転に、車酔いする暇もなく……バカ野郎、止めろ! ……とがなって、途中下車した記憶がある。

 これ以来、車そのものも嫌いになった。叔父1からは、カネは出すから運転免許位取っておけ……との有り難い話もあったが、つい固辞したものであった。

 それでも唯一、安心して車に乗れたのは学生時代、ジャズのメンバーであったドラムのH君の運転であった。大学のあったお茶の水から自宅近くまで送ってくれたのだが、たぶん僕の気質を知っていたのだろう……なんとも大らかな安定した運転ぶりで、もとより車酔いとも無縁であった。

 たぶん、運転の上手いプロの車なら大丈夫なのか……と、思った直後のこと。
大学の部室から楽器等を積み込んでコンサート会場まで、タクシーで赴いた時……ほんの十分とかからぬ距離にも関わらず、車に酔い、演奏直前まで生つばを飲んでいたものである。
 H君の車でつい安心出来たのは、おそらく、一緒に演奏していての僕の体内リズムを知悉していたのだろう。

 いずれにしても、以来……万やむを得ずという以外、車に乗った試しはない。

 今日も自転車でスーパーまで買い物に行ったが、ママチャリにすら追い越されるスピードである。

 当然、今後……ジェットコースターなどに乗ることは決してないだろう。

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