父方の祖母が作るカレーは黄色かった。祖父母も父も叔母も叔父もそれにソースをかけて食べていた。
　あるとき叔母が「裕君もソースかける？」と言ってくれたが、カレーにソースをかけるなんて考えたこともなく、何だか冗談みたいに思えたから、「カレーにソースかけるの？　えぇ？　へーんなの」みたいなことを云って断った。善意で訊いてくれたのに、随分悪いことをしたと思う。

　カレーにソースをかけることについて、母はあんまりいい顔をしなかった。子供の時分にはわからなかったが、その辺りは恐らく嫁姑間のわだかまりも影響していたろう。だからよけいに叔母には悪いことをしたと思う。

　母方の祖母は、ウインナーを炒めてケチャップとウスターソースで和えたものをよく作ってくれた。
　あれが自分にとっての祖母の味だと話したら、妻が作ってくれたことがある。作り方を母に訊いたのだと云った。
　一方、母方祖母のカレーがどんなだったかは覚えていない。