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なぜ母ばかりが優遇されるのか?|『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』に学ぶテクニック

アニメを研究して、創作に活かそう!

本記事では、「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」の世界感を検討します。

※「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

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物語の舞台となる「ゲーム」に注目!


「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」の舞台は、ゲーム内の世界です。

もう少し詳しく言えば、「フルダイブ型のMMORPG」の中。


大雑把には、「ソードアート・オンライン」のような世界観と言えるでしょう。


本作の主人公らは特殊な技術でゲームの中に転送され、そこで冒険を繰り広げることになるのですが……このゲームの仕様がちょっと奇妙なんですよ。


本記事では、「どのあたりが奇妙なのか」をご説明した上で、「なぜそんな仕様になっているのか」を検討します。


ゲームの概要


まずは、ゲームの概要を確認しておきましょう。


▶ 開発、運営するのは内閣府。

▶ ゲームの名前は「MMMMMORPG(仮)」。「ママの、ママによる、ママのための、ママと、息子もしくは娘が、大いに仲良くなるための、ロール・プレイング・ゲーム」の略称らしい。

▶ その名の通り、「共にゲームをプレイする中で、母子に仲よくなってもらう」のが目的

母子揃ってプレイするのがルール。

▶ 「母子関係に問題を抱える母と子」がプレイして、母子が仲よくなったらゲームクリア。元の世界に戻れる。


つまり、このゲームは「娯楽」ではない。「治療/矯正教育」のためのゲームです。

「病院」や「学校」に近い存在と言えるでしょう。

「家族療法の一種」と考えると、最もしっくりくるように思います。


奇妙な仕様①


上述の通り、このゲームの仕様にはちょっと奇妙なところがある。すなわち、なぜか母ばかりが優遇されているのです。


例えば、真人(本作の主人公。男子高校生)の初期攻撃力が「3」であるのに対して、母・真々子のそれは「401」。なんと100倍以上の差です。

他の母子も同様。

要するに、「圧倒的に強い母と、どう足掻いても勝ち目のない子ども」というコンビになるように設計されているのです。


上述の通り、本ゲームは母子関係が改善した時にクリアとなるのですが……しかしですね、一口に「改善」と言っても、これだけ力の差があると「双方歩み寄る」「お互いに反省し合う」といった形での和解は難しいでしょう。たいていの場合、「圧倒的な力を持つ母が、子どもを屈服させる → 一見すると母子関係良好に見えるためゲームクリア」となるはずです。

……それでいいの?


さらに、ですよ。

本作に登場する母は、少なからず問題を抱えている。

▶ 例1:子どもを幼稚園児のように扱う過保護な母(真々子)

▶ 例2:「親にとって子供は単なる足枷」と公言するホスト狂いの母(ワイズの母)

▶ 例3:自分の理想を子どもに押し付ける母(メディの母)


子どもたちの方がよほどまともです。

それなのに、母に一方的に力を与えるって……それでいいのか?

このゲーム、ダメ母を助長するだけでは!?


奇妙な仕様②


もう1つ、興味深いポイントをご紹介しましょう。


本ゲームはRPG(ロール・プレイング・ゲーム)です。

そしてRPGでは、「様々な職業の者が集い、パーティを組む → 互いの長所を活かし、短所をフォローし合う」というのが基本。


ところが本作に登場する母子には、なぜか同じ職業が割り当てられているのです。

▶ 例1:2人とも「大剣を操る勇者」(真人母子)

▶ 例2:2人とも「多くの魔法を使いこなす賢者」(ワイズ母子)

▶ 例3:2人とも「攻撃能力の高い癒術師」(メディ母子)


しかも上述の通り、母が圧倒的に強い仕様。ゆえに「母 = 子供の上位互換」ということになる。


いかがでしょう?

これ、「母子揃って旅をしてください」「母子で仲よくなってください」というゲームの理念にはそぐわぬ仕様だと思いませんか?


【仮説】なぜ母ばかりが優遇されるのか?


一体全体、なぜこんな奇妙な仕様になっているのか?

作中では特に言及がなく、残念ながら理由は不明です。しかし気になる。ということで、仮説を3つ立ててみました。


<仮説①>

本ゲームは、まだ正式にローンチされたものではありません。主人公らは、クローズドベータ版(試験運用版)にテスターとして参加しているのです。

つまり、現状の問題点(母が優遇されているなど)は、開発者が意図したものではない。単にゲームバランスが狂っているだけ。この後修正されるだろう……という可能性が考えられます。


<仮説②>

本ゲームは、「母がどれほど狂っていようとも、子どもは母に従うべし」「子どもは母を愛すべし」「子どもは母を受け入れるべし」という思想の下に設計・開発されている可能性があります。


歪んでいるなぁと感じる人が多いかと思いますが、「儒教思想の悪しき側面が反映されたゲーム」と理解すれば、十分あり得ることでしょう。

ちなみにこの仮説が正しい場合、最終的には「主人公らが国家(の要人?)を打倒する」というストーリーになりそうですよね。


<仮説③>

どんな親子にだって、問題や歪みはあるものです。

しかし、「母子のいずれかが我慢している」「お互いに見て見ぬふりしている」といった理由で、それが顕在化していないことも少なくありません


それに対して本ゲームでは、「母に一方的に力を与える → 母子間の問題・歪みを敢えて拡大、白日の下に晒す → 本質的な解決を目指す」が理想とされている可能性があります。

つまり、意図的に状況を悪化させることで膿を出し切ろうという手法

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いずれの仮説が正解か、あるいはすべて間違っているのか、アニメからは判断できませんが……みなさんが、ご自身の作品の世界感を構想する際にヒントになれば幸いです!


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(担当:三葉)

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