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エピソードのつなぎ方に工夫がある作品って、見ていて嬉しくなるよね!!|アニメ「侵略!イカ娘」に学ぶ

※本記事では、アニメ「侵略!イカ娘」(第1期)を分析します。


エピソードのつなぎ方を工夫しよう!


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「侵略!イカ娘」は、1話あたり3つのエピソードから成り立っている

【OP曲 → 1つ目のエピソード → 2つ目のエピソード → 3つ目のエピソード → ED曲 → 次回予告】という構成だ。各エピソードはおよそ6~7分。そこにオープニング、エンディング、次回予告、さらにCMを足して計30分になる。


「サザエさん」型の構成といえばわかりやすいかもしれない。


<2>

で!

本記事で注目したいのは、【1つ目のエピソード】【2つ目のエピソード】【3つ目のエピソード】のつながりである。

もちろん、てんでバラバラのエピソードが並んでいても構わないのだが……しかし。3つのエピソードに共通するシーンが入っているなど、そのつながりに何かしらの工夫が施してあると、「おっ!これは面白いなぁ!」と嬉しくなってきて、その作品を一段と好きになってしまうのがアニメ好きの性質というものであろう。

その点、「侵略!イカ娘」はよくできている。


以下、私が特に好きな第3話について詳しくご説明しよう。


第3話の3つのエピソードをチェック


<1>

まずは、第3話の最初のエピソードのあらすじを確認する。タイトルは「怖くなイカ?」である。


・STEP1:テレビの心霊番組をちっとも怖がらないイカ娘

・STEP2:栄子は「イカ娘を怖がらせてやろう」と企む。かくして、悟郎や早苗も誘って墓地で肝試しをすることになる

・STEP3:悟郎や早苗は夜の墓地に怯える。一方、イカ娘は首をかしげた「真っ暗なだけじゃなイカ。これの何が怖いのでゲソ?」「死んだ人間より、サメやシャチの方が怖いじゃなイカ」。栄子は苦笑する「イカ娘を怖がらせるのは難しそうだ……」

・STEP4:しばらくして、イカ娘は皆とはぐれてしまう。イカ娘は皆を見つけるべく全身を発光させた(彼女は、ホタルイカ風の発光能力を持っているのだ)

・STEP5:栄子らは、ぼんやり光る謎の物体(正体はイカ娘である)を見て恐怖した「人魂だー!」「落ち武者だー!」。一同走って逃げてしまう

・STEP6:1人取り残されたイカ娘。帰り道がわからず困っていると、無数の霊が現れた。そして道案内してくれる。イカ娘はそれが霊であることに気づくことなく、「親切な人間もいるんでゲソねぇ」と感心。彼らに感謝して帰っていった


ご注目いただきたいのは、【栄子ら人間は霊に怯える。一方、イカ娘は怯えない】という点だ。


<2>

続いて、第3話の2番目のエピソードを確認しよう。タイトルは「天敵じゃなイカ?」である。


・STEP1:イカ娘がたけると海で遊ぶ。「海で暮らすのも楽しそうだなぁ」と言うたけるに対して、イカ娘は「そうでもないでゲソ」。何しろ、海にはイカ(イカ娘)の天敵がいるのだ。そう、シャチやサメである

・STEP2:イカ娘はシャチフロート(シャチ型の浮き輪)で遊ぶ子どもを見て、顔を青くした。本物のシャチと勘違いしているのだ。イカ娘は怯え、慌てて海から上がった

・STEP3:イカ娘と悟郎が、たけるに泳ぎを教えることになる。イカ娘は悟郎に負けまいと必死に教える。しかし、イカならではの泳ぎ方はまったく参考にならない

・STEP4:悟郎にバカにされたイカ娘は、1人でこっそりトレーニングを始める

・STEP5:しばらくしてイカ娘は気がついた。あっちにはシャチがいる(シャチフロートで遊ぶ子どもがいる。以下同様)!こっちにはサメだ!さらにはワニ!そして訳のわからぬ黄色い怪物(バナナフロート)!イカ娘は怯える「地獄でゲソ!」

・STEP6:イカ娘は慌てて海から上がった。ところがその直後、たけるがシャチフロートを持ってやってきた。「陸にもシャチがいるとは……!」。イカ娘は悲鳴をあげ、失神してしまう


ポイントは、栄子ら人間はシャチやサメのフロートに怯えない。一方、イカ娘は怯える】という点だ。


<3>

最後に、第3話の3番目のエピソードを見てみよう。タイトルは「新入りじゃなイカ?」。


・STEP1:海の家「れもん」に新しいバイトがやってきた。サーフィンが大好きな活発な少女・渚

・STEP2渚はイカ娘を見て悲鳴をあげた「何ですか、この生き物!」。イカ娘は喜びに震える「これこそ侵略者である私に対する正しいリアクションでゲソ!」。イカ娘はわざと思わせぶりな態度をとり、渚が怖がるのを見て楽しむ

・STEP3渚は、栄子や千鶴、悟郎、早苗、さらに近所の子どもたちがイカ娘と自然に交流しているのを見て、頭を抱えた「世界がおかしい……」

・STEP4:渚は「もうこんなところにいたくない」と思う。しかし、すぐに考えを改める。ここにいる人は皆おかしい。私が常識人として正してあげなきゃ!

・STEP5:その後も、イカ娘は渚を怖がらせては期待通りのリアクションに笑顔になる

・STEP6:栄子と千鶴は「イカ娘は怖くない。ただの間抜けなイカなんだ」と渚に説明する。しかし、渚は聞く耳を持たない「人類征服という危険な思想を持ち、触手という強力な武器を常時所有しているんですよ!恐ろしい存在なんです!」

・STEP7イカ娘は涙を浮かべて喜んだ「渚は世界で唯一の私の理解者かもしれないでゲソ!」


ご注目いただきたいのは、【渚はイカ娘に怯える。一方、栄子らは怯えない。そしてイカ娘は怯えられて喜ぶ】という点だ。


<4>

さて、ここまで申し上げてきたことを整理すると、

・エピソード1:栄子ら人間は霊に怯える。一方、イカ娘は怯えない

・エピソード2:栄子ら人間はシャチやサメのフロートに怯えない。一方、イカ娘は怯える

・エピソード3:渚はイカ娘に怯える。一方、栄子らは怯えない。そしてイカ娘は怯えられて喜ぶ

……となる。


3つのエピソードはどのようにつながっているか?


それでは、3つのエピソードのつながりを見ていこう。


▶つながり1:恐怖

まずは最もわかりやすいところから。

すなわち、3つのエピソードはいずれも<恐怖>をテーマにしている。だから物語につながりが感じられ、見ていて心地いい。


▶つながり2:恐怖?

続いては……

・エピソード1:栄子らが、イカ娘の放つ光を霊と誤解して怯える

・エピソード2:イカ娘が、フロートを本物のシャチやサメと誤解して怯える

・エピソード3:渚が、イカ娘を人類の敵と誤解して怯える


そう、いずれも<本当は怖くないものに怯えるエピソード>なのだ。

したがって本話のテーマは<恐怖>というよりも、むしろ<恐怖なんて下らない>とか、あるいは<それでも恐怖してしまうのが人間の性だよね>とか、そういったものなのかもしれない。


▶つながり3:誰が異常なのか

エピソード1と2には、<栄子らとイカ娘の違い = イカ娘の異常さ>が描かれている。つまり【栄子ら = 普通/イカ娘 = 異常】という構図だ。

ところがエピソード3では、渚が「イカ娘も栄子らも皆おかしい」と指摘する。渚にとっては【栄子ら、イカ娘 = 異常】なのだ。


要するに、そう!<エピソード1、2の構図が3でひっくり返される>という構成になっているのである。


▶つながり4:唯一怯えていないのは誰か

続いて、<誰が怯えているか>という点に注目してみよう。

・エピソード1で怯えている人:栄子、たける、悟郎、早苗

・エピソード2で怯えている人:イカ娘

・エピソード3で怯えている人:渚


さて……すべてのエピソードを通じて、怯える姿が描かれていないキャラが1人だけいることにお気づきだろうか。

そう、千鶴である!

つまり3つのエピソードをつなげることで、<千鶴こそが作中最強キャラ!唯一恐怖を知らぬ者!>ということが浮かび上がってくるのだ。



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(担当:三葉)

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