見出し画像

アニメ「Kanon」第11話を5つの視点から分析する👀

引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第11話。第10話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


画像1


あらすじ


画像2

画像3


【ポイント①】第3章の幕開け!


「Kanon」は、

・第1章第1話第6話。主要キャラや世界観の説明

・第2章第7話第10話。真琴ルート(真琴をヒロインに据えた専用ストーリー)

……と整理できるだろう。


つまり、第2章は前話(第10話)で幕を閉じた。

本話からは第3章である。


【ポイント②】<第1章で頻繁に見られた展開・演出>の復活


<1>

本話の特徴を一言で言えば、【<第1章で頻繁に見られた展開・演出>の復活】ということになるだろう。


例えば……

・例1:毎話冒頭に入る<謎のモノローグ>

・例2:ヒロインが入れ代わり立ち代わり登場する<いかにもギャルゲーな展開>

・例3<繰り返し>という演出 ※これについては後ほど詳述する


<2>

これらは、第1章で頻繁に見られた展開・演出だ。

だが、第2章ではすっかり鳴りを潜めていた

そして本話で復活。多くの鑑賞者が「おお!このノリ、懐かしいぞ!」「こういうの久々だなぁ!」と感じたことだろう。


要するにこれ、【<第2章では鳴りを潜めていた展開・演出>を復活させることで、第2章が終わったこと、そして新章が開幕したことを鑑賞者に伝えるテクニック】と言えるだろう。


【ポイント③】過剰なまでの<繰り返し>


<1>

さて、上述の【<繰り返し>という演出】についてご説明しよう。


「Kanon」第1章では<繰り返し>が頻繁に使われていた。例えば第2話をみると……

<謝罪するシーン>が3回登場する(例:祐一が舞に謝罪する)

<走るシーン>が4回登場する(例:祐一が学校に遅刻しそうになって走る)

<ぶつかるシーン>が3回登場する(例:祐一とあゆが商店街でぶつかる)

<道に迷うシーン>が2回登場する(例:祐一が校舎内で迷う)


わずか1話(20分強)の中に、これだけの<繰り返し>がぶち込まれているのである!


<2>

こうした過剰なまでの<繰り返し>は、第2章では影を潜めていた


で、本話である。

本話ではどうか?第1章のような<繰り返し>が見られるのか?それとも、何か別の類の<繰り返し>が行われているのか?


じっくり見てみると……これがなかなかどうして興味深いことになっている


<3>

まずは、以下3つのシーンをご覧いただきたい。


▶ シーン1

最初に注目するのは、<祐一と北川が、教室で無駄話に興じるシーン>。この時、2人はこんな会話をしている。

---

祐一 おはよう、北川。今日も同じ服だな。

北川 ハッハッハ!制服だから当たり前じゃないかぁ!お前だって同じだろ?

祐一 ハッハッ!俺のは一見同じに見えるが、毎日着替えてるんだ!

北川 ハッハッハ!俺のだってじつはそうだ!


名雪と香里は、2人のやりとりを見て微笑する「相変わらず変なノリねぇ」。

---


▶ シーン2

続いて、<踊り場で祐一、舞、佐祐理が弁当を食べるシーン>に注目しよう。このシーンでは、こんなやりとりが繰り広げられる。

---

いつも通り、佐祐理が3人分の弁当を用意してきた。彼女は弁当箱を3つ取り出して「さぁ、どうぞ」。

さらに佐祐理は「舞、佐祐理の分も食べていいからね」。自分の分の弁当箱を舞の方にぐっと押した。

それを見た祐一は「じゃあ佐祐理さん、俺の分を食べろよ」。自身の弁当を佐祐理に差し出した。

舞も無言でそれに倣う。すなわち、自身の弁当を祐一に差し出したのだ(これでぐるりと一周したことになる)


この後も、<佐祐理が自身の弁当箱を舞に差し出す → 祐一が自身の弁当箱を佐祐理に差し出す → 舞が自身の弁当箱を祐一に差し出す>という茶番劇が繰り返され、弁当箱は3人の間をぐるぐる回り続けた。

---


▶ シーン3

最後にもう1つ、<教室で名雪と祐一が話すシーン>に注目しよう。

---

放課後、名雪が祐一に声をかけた。

名雪 祐一、放課後だよ。

祐一(なぜかメランコリックな感じで) ああ……いまのオレにはどうでもいいことだ。

名雪 どうでもよくないよ!今日は一緒に帰るんだから。

祐一 誰が?

名雪 祐一が。

祐一 誰と?

名雪 私と。

祐一 どうして?

名雪 約束したからだよ。

祐一 誰が?

名雪 祐一が。

祐一 誰と?

名雪 私と。

祐一 どうして?

名雪 約束したからだよ。

祐一 誰が?


この後、見かねた北川が間に入る「お前ら、ツッコむ奴はいないのか?」。すると祐一が笑った「お前に期待してたんだ」。

---


<4>

さて、いまご覧いただいた3つのシーンの共通点は……そう、<繰り返し>である!


・シーン1:祐一と北川は「今日も昨日と同じ服だな」といった内容の会話を繰り広げる。しかも北川は、祐一のセリフをほぼ反復している

・シーン2:祐一、舞、佐祐理はぐるぐると弁当を回し続ける

・シーン3:祐一と名雪は同じセリフをリピートし続ける


第1章同様、いや、それ以上の過剰さで<繰り返し>が展開されているのだ。


【ポイント④】<真琴ルート>から<舞ルート>にスムースにスイッチするための工夫


<1>

上述の通り、真琴ルートは前話で完結した。そして本話から新たな物語が始まった。今度の主役は舞である。


……が、しかし!

確かに前話で一区切りついたわけだが、だからといって【真琴の物語は終わりました。彼女はもう登場しません。さぁ、次に行きましょう!】という具合にポンポンとストーリーが進行してしまってはちょっと困るのだ。


<2>

だって、私たち鑑賞者はつい前話まで真琴の物語に夢中になっていたのだ。いきなり「さぁ、次に行きましょう!」と言われても、感情的についていけない。

もちろん、【「Kanon」には、真琴以外にも複数のヒロインがいる。今後、彼女らを主役に据えた物語を次々と紡いでいかなければならぬ。ゆえに、いつまでも真琴の話を引きずることはできない】という<大人の事情>はよくわかる。


しかし……人間は感情の動物である。<頭ではわかっていても、感情的にはついていけない>ということは少なくない。

つまり、もしも本話が情緒もヘッタクレもなく「さぁ、次に行きましょう!」とポンポン進行していたら、多くの鑑賞者からヘイトを集めていたのではないかと思うのだ。


だが大丈夫!

これは名作「Kanon」である。そんなヘマをするはずがない。本話には、私たち鑑賞者を感情的に納得させるための工夫がしっかりと施されているのだ。


<3>

はて、その工夫とは一体どのようなものか?

詳しくご説明しよう。


まずは、以下の4つのシーンをご覧いただきたい。


・シーン1:冒頭、真琴の部屋が映る。妙にガランとしている。祐一、名雪、秋子は部屋を見つめながら話す「この部屋はこのままにしておこう」「真琴がいつか戻ってくるかもしれないから」

・シーン2:中盤、ぴろがひょっこり戻ってくる。秋子は大喜びだ

・シーン3:あゆが居候することになった時、名雪が以下のようなことを言った。すなわち「名雪と秋子は表面的には明るくふるまっているものの、本当は深い悲しみの中にいる。だからあゆが居候してくれるのは嬉しい。家族が増えてにぎやかになれば元気が出るだろう」

・シーン4:祐一の家にやってきたあゆが問うた「真琴さんは?」。そして、真琴はもういない、彼女は帰ったのだと聞くと、「もう1度会いたかったなぁ」と残念そうな顔をした


※シーン2の補足:思い返せば、ぴろは真琴の半身のような存在だった(第7話、真琴が「ぴろと自分は同じだ。2人とも孤独」と語るシーンがある)。そのぴろが帰還した!これ、<真琴はもういない。しかし、祐一らはこれからもずっと真琴を忘れないだろう。彼らの心の中にはいつまでも真琴がいるのだ>という意味が込められていると考えられる。


<4>

これらのシーンは、要するに【祐一らは決して真琴のことを忘れていませんよ!もちろん私たち制作者も忘れていません!でも、いつまでも失意に沈んでいるわけにはいかない。それは真琴が望むことではないでしょう。だから彼らは懸命に前を向いて生きているのです!】という制作者からのメッセージだと言えるだろう。

そして、こうしたメッセージがあちこちに埋め込まれているからこそ、私たち鑑賞者は感情的にムッとすることなく、違和感を覚えることなく、真琴ルートから舞ルートにスムースに入っていけるのだ


【ポイント⑤】名雪とあゆは友だちになれるのか?


<1>

本話は、【名雪とあゆが初めて会うエピソード】でもある。


これ、多くの鑑賞者は「えっ!そうだっけ!?」と驚いたことと思う。

何しろ、名雪とあゆはメインヒロイン。ヒロイン陣の中でも特に出番が多いのだ。どこかしらで顔を合わせていても不思議はない。


ところが実際には初対面。これまではニアミスを繰り返していたわけだ。


<2>

名雪とあゆは本話中盤で出会い、すぐに意気投合した。そしてその夜、2人は1つのベッドに入って一緒に眠っている。

どうやらメチャクチャ気が合うようだ。


「名雪もあゆもいい友だちができてよかったね♥」と言いたいところだが……しかし。これ、諸手を挙げて喜ぶことはできぬだろう。


<3>

というのも、上述の通り2人は本作のメインヒロインである。そして本作は、祐一を中心としたハーレムもの

つまり、片方が祐一と結ばれれば、もう片方は失恋するのが宿命だ。2人が同時に幸せになる未来は、まぁ訪れそうにない。


2人が出会うことなく、これまでのように別々に祐一と会っていればまだよかった。

だが、2人は出会ってしまった!

これから先はお互いを意識し、時には嫉妬し合うことになるのだろう。また、相手と自分とを比べて落ち込むことだってあるはずだ。さらに<相手のために涙を呑んで身を引く>なんて展開もあるかもしれない。

……とまぁこんなことを考えてしまい、どうにも落ち着かぬという鑑賞者は少なくないと思う。


<4>

最後にもう1つ、<祐一と名雪が百花屋に行くシーン>に触れておきたい(百花屋は喫茶店だ)。


百花屋が登場するのはこれで3度目である。

・1度目第1話。祐一があゆと共に店に入った

・2度目第6話。祐一とあゆが映画館の帰りに立ち寄った

・3度目:本話。祐一が名雪と共に店に入った


……おわかりだろうか?

そう!

物騒な見方をするならば、これ、【百花屋は<祐一とあゆのテリトリー>だった。ところが今回、そこに名雪が侵入した。名雪とあゆの祐一争奪戦が始まったことを示唆しているのだろう】と解釈できるわけだ。



関連記事


アニメ「Kanon」第1話を3つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第2話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第3話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第4話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第5話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第6話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第7話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第8話を7つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第9話を5つの視点から分析する👀

アニメ「Kanon」第10話を5つの視点から分析する👀


続きはこちら

---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで!

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!