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アニメ「Kanon」第2話を5つの視点から分析する👀

※引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第2話。第1話を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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【ポイント①】祐一と各ヒロインとの距離が少しずつ縮まっていく


<1>

本話は前話の続き、すなわち【祐一と各ヒロインとの距離が少しずつ縮まっていくエピソード】である。

以下、大雑把に整理しておこう。


▶ 名雪との関係

・前話:7年ぶりの再会 → 仲よし

・本話:香里の言葉によって、名雪が祐一に好意を抱いていることが明らかになった


▶ あゆとの関係

・前話:仲よし

・本話:幼い頃に友人だったことが明らかになった


▶ 舞、佐祐理、栞との関係

・前話:すれ違っただけで、お互いの存在を意識していない

・本話:初めて言葉を交わした


▶ 香里との関係

・前話:挨拶を交わしただけ

・本話:同じクラスになる。言葉を交わす


<2>

さらに終盤では、最後のヒロイン・真琴が初登場した。


【ポイント②】作品全体を貫くテーマは?


<1>

本話は、【「Kanon」という作品全体を貫くテーマが明らかになるエピソード】でもある。


<2>

そもそも前話、祐一は「この街にいた頃の記憶がなぜかほとんどない」と語っていた。

本話でも同様だ。彼はやはり記憶を失っている。ただし、祐一はあまり気にしていないようで「まぁ、無理に思い出さなくてもいいさ」


ご注目いただきたいのは、そんな祐一に対する名雪の反応だ。

名雪はじつに意味深なことを言う。ずばり、「それはちょっと悲しいと思うよ」「祐一に思い出してもらいたいって人が1人でもいるのなら、思い出した方がいいと思うよ」


はて、誰が悲しいのか?誰が思い出してもらいたがっているのか?

名雪自身か?それとも別の誰かなのか?

そもそも、祐一はなぜ記憶を失っているのか?過去に何かあったのか?彼は何を忘れているのか?


<3>

そして本話後半、祐一はあゆに関する記憶を少しだけ取り戻す。祐一はかつてあゆと仲よしだったらしい。


もしかすると、祐一に記憶を取り戻してほしがっているのはあゆなのか?


<4>

というわけで……<記憶/思い出>、そして<記憶を取り戻すこと/過去と向き合うこと>。これこそが本話のテーマである。


【ポイント③】なぜ似たようなシーンが繰り返し登場するのか?


<1>

本話には、似たようなシーンが繰り返し登場する

特に目につくのは、以下の4つだ。


▶ 謝罪するシーン

・祐一:舞と佐祐理に謝罪する

・祐一:栞に謝罪する

・祐一:たい焼き屋に謝罪する(前話にも同シーンあり)

※祐一は、前話では名雪にも謝罪している。


▶ 走るシーン

・祐一、名雪:学校に遅刻しそうになって走る

・祐一、あゆ:商店街を走る(前話にも同シーンあり)

・あゆ:たい焼き屋から逃げるために走る(前話にも同シーンあり)

・あゆ:祐一と別れた後も走って去っていく(前話にも同シーンあり)

※名雪は、前話でも遅刻しそうになって走っている。


▶ ぶつかるシーン

・名雪:舞と佐祐理にぶつかる

・祐一、あゆ:商店街でぶつかる(前話にも同シーンあり)

・あゆ:木にぶつかる


▶ 道に迷うシーン

・祐一:学校で迷う

・祐一、あゆ:街で迷う


ご覧の通り、本話(+ 前話)の祐一は繰り返し謝罪している。また、祐一とあゆ、そして名雪は何度も走り、ぶつかり、道に迷う。


<2>

嗚呼、この繰り返し!

これは制作者が意図的に仕込んだものなのだろうか?それとも、単なる偶然か?


私は意図的なものだと思う。制作者は敢えて同じようなシーンを繰り返すことで、私たち鑑賞者にメッセージを送ろうとしたのではないか。


<3>

はて、メッセージとは何か?


それはたぶん……

・【1】<祐一はいい奴だ>というメッセージ:祐一は、何はともあれ謝罪する。自分に非がある時はもちろん、あゆや名雪の代わりにも頭を下げる。彼はじつにいい奴なのだ!

・【2】<祐一、あゆ、名雪は素直で一所懸命な奴だ>というメッセージ:彼ら3人はよく走り、よくぶつかる。この<前進>っぷりは見ていて気持ちがいい。「素直で、いつも一所懸命な奴なのだろうな」と感じる。

・【3】<祐一とあゆは迷路にハマっている>というメッセージ:彼らが道に迷うのは、<人生/過去>という名の迷路にハマっていることの暗喩だろう。


<4>

つまりはこれ、【似たようなシーンを敢えて繰り返し描くことで、<主要キャラの性質>や<彼らの置かれた状況>を鑑賞者・読者に暗黙の裡に伝える】というテクニックである。


【ポイント④】目覚まし時計と謎ジャム


<1>

本話には、名にし負うアイテムが2つ登場する。<名雪の目覚まし時計>と<秋子さんお手製の謎ジャム>だ。


<2>

祐一が名雪から借りたのは、声を録音できる目覚まし時計だった。そして、そこには名雪の肉声が吹き込まれていた。

かくして祐一は、「朝~朝だよ~朝ご飯食べて学校行くよ~」という名雪の声で……余計眠くなるようなねっとりとした萌え萌えの声で目を覚ますことになった。


<3>

名雪はおっとりした性質で、その上朝が弱いらしい。ゆえに、なかなか目を覚まさない。起きてからもボーっとしている。そして隙あらば眠る。

朝食時にもまだ半分眠っている。

ところが、である。秋子が謎ジャムを取り出した途端、「あっ」と小さく叫び、完全に覚醒。素早く立ち上がると、はきはきと「ごちそうさまでした!」。怯えた表情になり、そそくさと部屋を出ていった。

一方、謎ジャムの正体知らずそれを口にした祐一は……視界が歪む。脂汗がにじむ。祐一は死に物狂いで嚥下すると、「急ぎますので」と言ってお代わりを遠慮して立ち去った。

対する秋子は「こんなにおいしいのに」と不満そうな顔をする。


この、

・Step 1:普段の名雪からは想像できぬ反応

・Step 2:祐一の苦悶の表情

・Step 3:不満げな秋子

……という一連の流れが最高に面白い。


【ポイント⑤】敢えて傍観者を描くべし


<1>

終盤、真琴が初登場するシーンの演出が素晴らしい。


すなわち、【祐一の前に突如真琴が現れる → 真琴が祐一に殴りかかる → ところが、そのパンチもキックもヘナチョコだった】というこのシーン。画面の左の方に老婆が映っているのだ。それもかなり大きく。


<2>

真琴が殴りかかったところで、老婆が映る。彼女は「何事かしら」という顔をしている

しかし、真琴はヘナチョコだ。老婆はそれを確認すると、「あらあら。カップルがいちゃついてるだけね」といった感じで興味を失い、その場を去っていく


<3>

祐一と真琴だけではなく、敢えて傍観者を描く!それも画面の3分の1を締めるくらい大きく描く!

これが巧いと思うのだ。


というのも……私たち鑑賞者は、老婆の反応を通じて真琴がいかにヘナチョコなのか理解できる。

だから、祐一や真琴の言動はシンプルでいい。ヘナチョコ具合を無理に大げさに描く必要がない。そしてその分、真琴の萌えっぷりを強調して描くことができる。

じつに巧みな演出である。



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(担当:三葉)


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