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アニメ「それでも町は廻っている」第2話前半を4つの視点から分析する☕

引き続き、アニメ「それでも町は廻っている」を分析します。本記事で取り上げるのは第2話前半「セクハラ裁判」。これ以前のエピソードを分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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【ポイント①】歩鳥はパッとしない1日を過ごすが、しかしこの世界は捨てたものではなさそうだ


<1>

本話には、<自宅にいる時の歩鳥>と<商店街にいる時の歩鳥>が描かれている。


まずは前半、<自宅にいる時の歩鳥>を見てみよう。

すなわち……

・自宅1:歩鳥は、森秋先生に恋をしかけているようだ。そのせいで、大好きな読書が捗らない

・自宅2:歩鳥には年の離れた弟と妹がおり、家では<きょうだいの面倒を見る>という役割が与えられている。また、年が離れているがゆえに親から叱られるのはいつも歩鳥だ。歩鳥はうんざりする


どうもパッとしない。


<2>

では後半、<商店街にいる時の歩鳥>はどうか?

・商店街1:タッツンに恋の相談をするが、話にならない

商店街2:松田巡査に注意される

・商店街3:八百屋でセクハラめいた発言をされる

・商店街4:シーサイドに戻ると、真田からもセクハラめいた発言をされる(これは歩鳥の勘違いのようだが)


うーむ、やはりパッとしない。


つまり、本話は【せっかくの休日なのにどうもパッとしない。かくして歩鳥は家を飛び出した。そして商店街にやってきたが、やっぱりパッとしない!】というエピソードなのだ。


<3>

ところが、である。

ここからが面白いところなのだが……物語の舞台たる自宅や商店街は<不快なことばかり起こる嫌な場所>とは描かれていない。むしろその逆。<歩鳥にとって素晴らしい場所>として描かれているのだ。


・例1:自宅には狭いながらも歩鳥専用の部屋があり、棚には大好きな本やCDが並んでいる

・例2:きょうだい仲だって悪いわけではないだろう。仲が悪ければ、妹が「遊んでよ」と近寄ってくることなぞないはずだ

・例3:商店主たちは、何だかんだ言いながらも歩鳥を愛している。最もわかりやすいのは八百屋の主人だ。彼は歩鳥の背中を見つめて言った「あれも、いつかは遠くに嫁に行っちゃうんかなぁ。寂しくなるなぁ」


つまり……

・事実1:本話は【歩鳥のパッとしない休日】を描いたエピソードである

事実2:しかし、物語の端々では<ここは歩鳥にとって素晴らしい場所ですよ>と示唆されている


おお、このミスマッチ!


<4>

そして、私はこのミスマッチこそが本話のポイントだと思うのだ。


だって、ご想像いただきたい。

もしも<事実2>がなくて、ただひたすらに主人公がひどい目に遭い続けるだけのエピソードだったらどうだろう?そんなもの見たいだろうか?いや、たまにはそういう作品を見たいこともあるだろうが……しかし、本作は平日午前2時頃に放映されていた深夜アニメだ。そんな時に欝々とした物語を欲する変人なんてのは、まぁごく少数派だろう。「陰鬱な物語は勘弁してくれ」というのが大多数の人の本音だと思う。


その点、本話には<事実2>があった!

つまり、希望が感じられた。ゆえに私たちは欝々とすることなく、最後まで明るく楽しく鑑賞できたのだ。


【ポイント②】<自宅>と<商店街>の境界が曖昧


<1>

<自宅><商店街>という場所について、もう1つ押さえておきたいことがある。

まずは、以下をご覧いただきたい。


▶注目ポイント1

冒頭シーン、歩鳥は胸元に「ハリウッド」と書かれたTシャツを着ている。「けいおん!」の唯を彷彿とさせる珍妙なTシャツだ。


しかしこの2人には大きな違いがあって……すなわち、唯が自宅などのプライベートな空間でしかそれを着ないのに対して、我らが歩鳥はそのままの格好で商店街に出かけていくのだ


▶注目ポイント2

八百屋の店主は、歩鳥の背中を見つめて言った「あれも、いつかは遠くに嫁に行っちゃうんかなぁ。寂しくなるなぁ」


<2>

そう!歩鳥は部屋着としか思えぬ格好で商店街に出かけていくし、商店街のオッサンは歩鳥を娘のように思っている

つまり本話においては、<自宅>と<商店街>の境界は随分と曖昧に描かれているのだ。


【ポイント③】布石


<歩鳥とタッツンが雑談に花を咲かせるシーン>では、タッツンの大きな胸がめったやたらと強調されている(揺れる、テーブルに乗る、テーブルの天板で潰れる etc.)。

これ、後半の<セクハラ裁判>への布石であろう。


【ポイント④】やっぱり歩鳥はオバサン臭い


第1話前半を分析した記事で、私は【<女子高生なのにオバサン臭い>というのが歩鳥の魅力なのではないかと思う】と申し上げた。


で!

ご注目いただきたいのは、<歩鳥がテレビゲーム機の電源を無断で落とす → 弟が悲鳴を上げる>というシーンだ。


テレビゲーム機の電源を無断で落とし、子どもに悲鳴を上げさせるって……それはお母さんの役割のはずだ!

本話の歩鳥もやっぱりオバサン臭いのである。



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(担当:三葉)

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