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松下幸之助と『経営の技法』#68

4/23の金言
 仕事をして疲れるどころか、疲れが休まるという境地を味わいたい。

4/23の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。短いので、全文を引用しましょう。
 スポーツの選手は、非常に激しい練習や試合をしても、疲れよりもかえって爽快さを感じるという。仕事でもそれと同じことで、本当にそれに打ち込んでいたら、疲労を覚えるということも少ないと思う。見方によっては、仕事をして疲れるというのでは、まだ十分ではないといえる。
 難しいことではあろうが、仕事をするとかえって疲れが休まるというような境地を多少とも味わえるようになれば、これは本物であろう。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 全く同じことは、最初の法律事務所の先輩に何度も言われました。すなわち、「家庭のストレスは仕事で晴らす、仕事のストレスは仕事で晴らす」という言葉です。
 これを、私生活も全て会社に捧げろ、という意味に取れば、いわゆる「ブラック企業」を目指して檄を飛ばしているように聞こえます。
 けれども、ここでは、現在でも生きる意味を読み取りましょう。
 1つの見方は、何ごとも主体的に取り組め、という若手従業員へのメッセージでしょう。受け身で仕事をするのではなく、主体的に自分のために取り組むことが、達成感も強く感じられ、仕事の喜びを感じられる、ということは、様々な場面で語られることです。
 2つ目は、いつかは仕事が好きになる、いつかは仕事の中に好きな部分が見つかる、そのような励ましの言葉と捉えることも可能でしょう。仕事が中毒になるほど好きになるよ、という誘い方の当否は、敢えて問題にしませんが。
 3つ目は、従業員にそのような意欲や主体性を持たせることの重要性です。会社を人体に例えれば、体中を巡らされる神経があるからこそ、リスクセンサー機能が発揮されるのであって、全従業員がそれぞれの役割の中でリスクを感じることが重要です。それも、他人に言われてやらされているところでは、重大な問題に気づいたり、それを報告したりできません。全従業員の意欲や主体性があるからこそ、会社全体のリスクセンサー機能が生きるのです。同じことは、経営上のチャレンジについても同様です。現場の従業員だからこそ気づくヒントもあるはずだからです。
 他にも、何かいい解釈方法はありますか?

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、従業員を上意下達で操ろうとするのではなく、従業員から盛り上げ、従業員を活気づかせるような経営者の魅力が、松下幸之助氏が繰り返し語るところです。もちろん、様々なタイプの経営者があるべきところですが、経営者個人の力量だけでなく、組織全体の力を発揮させることが、経営者の大事な仕事です。ここで示されたようにストレートに現場を煽るばかりが能ではないでしょうが、組織力の本質の理解は不可欠なのです。

3.おわりに
 さて、先輩から「家庭のストレスは仕事で晴らす、仕事のストレスは仕事で晴らす」という言葉を授けられた私のその後ですが、非常に残念ながら、仕事のストレスは仕事の外で発散させている状況に変わりはありません。先輩に、大変申し訳なく感じている点です(嘘)。
 けれども、仕事で達成感を覚え、「悪くないな」と思ったことは何度かありました。また、他人に指示された仕事ばかりでなく、自分が仕事をリードすることの遣り甲斐を実感することもありました。
 言葉だけでなく、実際にこのような体験をさせてくれる上司や経営者が、良いリーダーなのだと思います。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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