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『印象派 モネからアメリカへ』

 上野にある東京都美術館で開催中の特別展『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』を観てきました。アメリカにあるウスター美術館所蔵の印象派絵画を中心に紹介する展示会です。

 最近は興味が日本の美術品に移ったので、西洋美術の特別展にはしばらく行っていません。この特別展も行くつもりはなく、前売り券も買わなかったのですが、美術ナビの記事でチャイルド・ハッサムの『コロンバス大通り、雨の日』が出展されていると知ったんですね。
 『コロンバス大通り、雨の日』は高校時代に好きだった絵なので、当日券を買って観に行くことにしました。

 印象派展と言っても、各地の美術館から有名な絵を集めたわけではなく、ルーヴルやメトのような有名美術館の所蔵展でもないので、やや地味な展示だったのは確かです。でも、印象派の絵はわかりやすいーー私のような絵画技法に疎い者や歴史的な知識に乏しい方でも楽しめる絵が多いので、地味でも問題ありませんでした。出展数も67点と疲れずに鑑賞できる点数でしたし、当日券2200円というのも、インフレ気味の最近の美術展の中では良心的な値段設定でした。
 巨匠の絵ではなくても魅力的な絵を観たい方、ストレスが溜まっていて気分転換したい方などにぴったりの展覧会だと思います。

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 展覧会は、5つの章に分かれています。
 第1章は「伝統への挑戦」。プルーストの小説『失われた時を求めて』にも書いてありましたが、19世紀後半のフランス絵画界は保守的な芸術アカデミーが力を持ち、神話や聖書に基づく絵や歴史画を重んじていたんですね。それに対して、今のフランスの風景を題材にする画家が現れました。第1章で取り上げられていたのは、そうした画家たちです。下は、コロー『ヴィル=ダヴレーの牧歌的な場所』。印象派ではないですが、コローの絵もわかりやすいですよね。


 第2章は「パリと印象派の画家たち」。アカデミーに対抗して独自の展覧会を開いた画家、のちに印象派と呼ばれるようになった画家たちの絵が展示されています。

カミーユ・ピサロ『ルーアンのラクロワ島』(絵葉書)

牧歌的な風景の中に工場や蒸気船が描かれているところに惹かれました。

モネの『睡蓮』。今回の特別展の一押し絵画です。モネの『睡蓮』は西洋美術館等国内の美術館に複数所蔵されていますし、特別展でも何度か観ていますが、ウスター美術館の『睡蓮』もよかったです。近くから見るのと遠くから見るのも違いますし、見飽きない絵でした。

 第3章は「国際的な広がり」。印象派というとフランスのイメージが強いですが、今では国際的な広がりを持つ様式だと考えられているようです。この賞で展示されていたのは、例えばジョン・シンガー・サージェントの作品。肖像画家のイメージが強いですが、風景画もよかったです。

ジョン・シンガー・サージェント『コルフ島のオレンジの木々』(図録より)


日本の画家の絵もありました。タイムラグの関係もあり、日本には印象派の画家はいないようですが、印象派の技法を取り入れた絵は多そうです。

藤島武二『ティヴォリ、ヴィラ・デステの池』(Wikipediaより)

特に良かったのが藤島武二の『ティヴォリ、ヴィラ・デステの池』です。彼の絵は去年の重要文化財展でも観ましたが、その絵とは全く雰囲気が違いました。

 第四章は「アメリカの印象派」。ウスター美術館はアメリカのマサチューセッツ州にあるので、自国の画家の絵を多く所蔵しています。

チャイルド・ハッサム『コロンバス大通り、雨の日』

これが、高校生の時に好きだった『コロンバス大通り、雨の日』です。どこで見たのかも忘れましたが(実物を見たわけではありません)、陰鬱な絵ですね…。街の絵が好きだし、ヴィクトリア朝ぽい雰囲気に惹かれたのでしょうか。家族にこの絵の絵葉書を見せると「馬車鉄道だ!」と喜んでいました。手前の馬車の奥、右寄りにあるのが馬車鉄道だそうです。確かに馬と客車のようなものが見えます。普通の馬車だと思っていたけど、言われてみれば道に線路があります。
 日本近代の小説を読んでいるとたまに馬車鉄道がでてきますが、都市内にもあったんですね(鉄道好きの人には常識みたいです。東京だと、今の銀座線と似たあたりを走っていたのだとか)。
 同じ絵を見ても、人によって気が付くポイントが違うものです。

 第五章は「まだ見ぬ景色を求めて」。印象派の影響を受けながらもより抽象的な表現法を求めた画家の作品と、アメリカ西部を題材にした印象派の絵を展示しています。あと一歩でフォーヴィズムという感じの絵もあり、印象派が絵画のメインストリームだった時代はそれほど長くないことがわかります。

マックス・スレーフォークト『自画像、ゴートラムシュタインの庭にて』

 この方はドイツ印象派の代表的な画家だそうです。

ジョージ・イネス『森の池』(Wikipediaより)

この絵は印刷だとあまり良さが伝わらないのですが、実物はスピリチュアルな雰囲気が感じられて、とても良かったです。

フランク・ウェストン・ベンソン『ナタリー』


 今回の特別展はグッズも高品質なものが多く、目移りしてしまいました。

真ん中は図録、左右上はコードホルダー。スマホのコードを丸めて束ねるもので、使いやすかったです。左下は猿田彦珈琲のドリップパック。フェイラーのハンドタオルやモネのクッキー缶は品切れでした。

また、上野の商業施設ーーマルイ、エキュート、アトレ、松坂屋、パルコヤで印象派展のステッカーを配布しているので、パルコヤにある回転寿司屋で北陸寿司を食べて睡蓮のステッカーをもらいました。

ステッカーをもらうためと思えば贅沢もしやすいです。ノドグロと白海老が北陸の味!


『印象派 モネかアメリカへ ウスター美術館所蔵』は4/7まで。土日祝日と4月2日以降は日時予約制になっています。


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