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INTELLIGENCE episode Ⅰ
事件処理の要請を受けた富山県警の刑事達が到着するまでに、深沼はある人物に携帯電話で電話をかけた。
「深沼だ。画像は無理だと思うが、音声は録れてるな。」
「録れてるよ。」
「おそらく盗難車だと思うが、ナンバーをこの後すぐにメールしてくれ。」
「それとブリーフケースの中身は一見本物のレポートに見えるが、"K"が事前にすり替えておいたダミーだ。それと発信器、GPSどちらもOKだ。あと、Nの照会は県
INTELLIGENCE episode Ⅰ
2000年2月14日。前日からの大雪で真っ白に染まったJR富山駅前ロータリーに、一台の黒塗りのセダンがダークスーツに身を包んだ四人の男達を乗せて停車していた。
男達は日本語ではない何語かを話し数分後、運転席に一人を残して三人の男達が車から降りていった。白い息を吐きながら、観光客や富山駅周辺に勤務する通行人とすれ違う。
三人の男達は周囲に警戒の目を配りながら、予め決めてあったそれぞれの配置につい
INTELLIGENCE episode Ⅱ
区役所通りを一本入った脇道で三人のチンピラがセンスの欠片も無いダサい柄シャツ姿で煙草をふかしていた。
「今夜、組長と兄貴がブルーローズで飲むらしいんだわ。お前、時間になったら車まわしとけよ。」
「前みてぇにナンパなんかしてたら、ぶっ殺すぞ。」
「すんません。」
「それにしてもうちの組長もホント頭キレるよなぁ。俺らはバカだからわかんねーけどよ、兄貴からちょっと聞いたんだけどよ、殺し屋に殺し屋殺
INTELLIGENCE episode Ⅱ
《送信者:外事一課=真庭 享 行確対象者=蔡俊傑(通名=高梁俊英)に関するレポート 受信者:外事一課=釘宮 圭一》
警備局外事一課に所属する釘宮圭一は、同じく外事一課に所属する真庭享によるある行確対象者に関するレポートを赤坂にあるホテルニューオータニのラウンジでコーヒーを飲みながら読んでいた。
まだまだ蒸し暑い気候はこの先も暫くは続きそうだが、ホテル内の空調は勿論のこと、ラウンジの巨大
INTELLIGENCE episode Ⅱ
JR京都駅地下街Portaに於いて、趙嫩黄と外事二課のagentが初めて接触したその約二年前、東京の新宿の夏空は不思議なオレンジ色をしていて、仕事帰りのサラリーマンやOL、大学生や専門学校生、ホストにキャバ嬢、風俗嬢にポン引き、日本のヤクザに警察官、中国マフィアに台湾マフィア、そこに殺し屋、薬中、精神異常者、スパイ、外事警察、シックス、CIA、偵察総局などありとあらゆる人間を混ぜ合わせて、毎日変わ
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趙嫩黄は、京都タワーの出入口がある脇道に入ると歩速を緩め消えるように京都タワー内に入っていった。
地下一階と二階を数回往復しながら、時折土産物屋に入るなどして消毒作業を行うと、先ほどの出入口から京都タワーの脇道に出て、もう一本先にある道を曲がり、室外機の熱風を受けながら古びた雑居ビルの二階にある中華料理屋に入っていった。
時間は正午より少し前だが、狭い店内のテーブル席は既にうまっており、趙嫩黄は滑
INTELLIGENCE episode Ⅱ
1998年7月14日。長い梅雨がやっと明け、盆地特有の暑さが真夏に近づきつつあることを告げているJR京都駅前のバスロータリーを一人の男が歩いている。
男は歩く。歩く。歩く。
己の信念に基づき、己の使命を果たす為に。
男は趙嫩黄(チョ・ドンウォン)といって、京都の山科区に住む在日朝鮮人であり、朝鮮民主主義人民共和国の朝鮮人民軍偵察総局(北朝鮮のintelligence機関)が長い歳月をかけてリク