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メインテーマは?

昨年、大好きな紀伊國屋書店でおすすめされていたのが、このアンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』(創元推理文庫/上・下巻)

最近では手に取ることのないジャンルだっただけに躊躇しました。上下巻。しかも文庫本なのに強気の値段設定。むかしは乱歩シリーズで馴染みがあったけれど、はて。こんなに高かったっけ。
クリスティーをまさかの卒論に持ってきた身としては、彼女へのオマージュ、ホームズにも通づるイギリス感、などなど、小説自体よりも己の好物感が先にきて手に取った作品でした。何より装丁が素敵。
そして中身は。
久々に推理小説の醍醐味を味わえた気がしました。本が上下巻である意味ってこーゆーことか。と、今更ながらしみじみしました。作中作と本編が交差する時点でよく練られたプロットであり、私たちを幾重にも混乱へ導いていく要素が満載。
クリスティー同様、イギリスの街並みも堪能できました。

ということで、カササギより著者のファンになったため新刊の『メインテーマは殺人』を購入。

ホームズほど好感ももてず、ワトソンほど相手をたてるわけでもないけれど、登場人物たちもその設定を意識しまくっている時点で、なんか笑えました。

自らの葬儀を予約しにきた老婦人が事の発端。
そのあとすぐに本当に殺されてしまうわけだけど、読み終えてしまえば、〝コトの発端〟という言葉がこんなに似合う推理小説もなかったなぁ。

ホームズ=ホーソーン(元刑事)に、これから探偵ばりに解決に導く先の殺人事件について、いわばノンフィクション本を書いてほしいと頼まれる、ワトソン=ホロヴィッツ(作家本人設定)。
お互いのこともあまり知らない2人が事件に絡んでいく、というより、強引なホーソーンにホロヴィッツが引きずり込まれていくうちに、第二の殺人が起きてしまう。
過去が浮かび上がっては、怪しい登場人物が増えるのは推理ものの定番だけれど、偶然が偶然を呼んだ悲劇性も相まった、読み応えある作品でした。次回作にも期待!

しかしこの『ホーソーン』ものは、シリーズ化していくのだろうか?
最後の最後まで、ホームズはつかめない男でした。作中のワトソン、ホロヴィッツが気の毒でしかないという、どこか喜劇性もあり。




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