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高校中退×1、大学中退×2の37歳が高卒で大学院を修了した話

【わたしについて】


私は15歳のときに高校を中退、16歳で通信制高校へ入学し、19歳で高校を卒業。その後は、大学を3年で中退。間をあけて進学した次の大学も5年間在籍し中退しており、高卒の立場でした。

2020年に高卒で専門職大学院へと進学し、修士(専門職)の学位を得ています。ざっくり時系列にすると

15歳 高校中退

通信高校へ再進学
19歳で高校卒業→地元の大学へ進学

メンタルの問題で3年目に中退

社会人生活を送りつつ慶應義塾大学に再進学

学費の問題で5年目に中退

高卒で大学院へ進学(1年前)

大学院修了(今年3月)→修士(専門職)の学位を取得

2年後の2023年から国立大学の非常勤講師


※つまり、大学の学部で得られる「学士」は持っておらず、大学院で得られる修士(専門職)のみです。


【大学を出ていなくても大学院っていける】


よくある質問に「大学4年間を出ていなくても、大学院っていけるの?」という質問があります。最近は大学へと進学をしていないスポーツ界や芸能界の方が大学院へと進学している例も増えてきており、ニュースになっているので、そんな疑問を抱く人もいると思います。その際には「お金があったんでしょ」や「有名だから」という枕言葉が付きながら。


結論から言うと、大学院は学部を出ていなくても、学士(高度専門士含む)の資格がなくとも進学できます。例えば、早稲田大学の大学院基幹・創造・先進理工学研究科修士課程一般・飛び級入試(日本語学位プログラム)の要綱には

「⑥当研究科において、個別の入学資格審査により、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、入学年月日の前日(9 月入学の場合は9月20日4月入学の場合は3月31日)までに22歳に達する者」

との規定があり、これは多くの大学院でも採用している個別の審査による受験資格を認めるというものです。


もちろん、ただ受験資格があるというだけで、研究計画書の提出や他の課題は他の受験生と変わりません。ここで「有名人だから」とか「お金があるから」というだけで通過するようであれば、アカデミズムへの愚弄と言っても過言でもありませんね(ばんばん。だーん)


ちなみに、大学院には

①修士課程

②博士課程

③専門職学位課程(修士)

の3つがあり、①、②は以前からあるもので、いわゆる研究科です。③の専門職大学院は

「科学技術の進展や社会・経済のグローバル化に伴う、社会的・国際的に活躍できる高度専門職業人養成へのニーズの高まりに対応するため、高度専門職業人の養成に目的を特化した課程として、平成15年度に創設され」*1

たもので、法科大学院や、教職大学院、〇〇大学院などがあり、学位はそれぞれ法務博士(専門職)、教職修士(専門職)、〇〇修士(専門職)となります。

【わたしの場合は】


そもそも、大学(経営学部/法学部)に2つ進学していたけれど、体調や金銭面で継続ができなかったという過去があります。若者たちと接していると、いつかは卒業したいな、羨ましいなと思ってはいました。ただ、仕事や家庭との両立を考えると、再進学をする余裕は全くありませんでした。もう、正直に言うと学歴コンプレックスだよ!

だから、今も書いててしんどい。


高等教育機関(ISCED5-8/各種専門学校、短期大学、大学、大学院)中退後のキャリアについては、辰巳(2015)が調査したところ

「高等教育機関退学者の内訳を確認したところ,高等教育機関を退学した437 名のうち,233名は高等教育機関を卒業していることが明らかになった。これは,高等教育機関内で転学していると考えられる」*2

と、53%はその後に高等教育機関を卒業していることを示しました。ただし、この論文を読んだ時にも、私には別の世界の話であったように思う。

【2つ目の大学在学中に福祉と出会う】


そうした思いを抱えながらも、いつの間にか学童保育の指導員として福祉分野に足を踏み入れます。そこで私は、社会福祉士という資格に出会いました。ただし、その受験資格は大学卒業相当が求められ、私には受験資格を満たすものがなかったし、養成校も大学卒業が前提でした。その後の流れはこんな感じです。

2013年
社会福祉主事任用資格の取得のため養成コースに入学

2014年
社会福祉主事任用資格を取得

2017年
2年間の実務経験を経て、社会福祉士の短期養成コースへ入学

2018年
社会福祉士合格・登録

2019年
精神保健福祉士の短期養成コースへ入学

2020年3月
精神保健福祉士合格・登録

2020年4月
専門職大学院入学

2021年3月
大学院修了 福祉マネジメント修士(専門職)の学位を取得
→探求が面白くて4月以降も大学院に所属

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2018年の社会福祉士取得で、ある程度は満足していたものの、やりたいことは大学に在籍していた時からの思いである現場と政策をつなぐことであった私は、次の道を模索していた。そんなとき出会ったのが、専門職大学院への進学でした。

【具体的にどんなルートだったの?】


当時、大学中退の私が大学院に行くことは困難だと思っていました。そこで光が差してきたのが、今持っている国家資格を活用できないかとのアドバイスであった。

私が通った大学院には、高卒の人が入れそうなルートとして3つのパターンがあると思われた。

①医療や福祉の資格を取得後3年以上の有資格者入学
(ただし、これは3年以上経っていないので私は非該当)
②大学卒業相当者が3年以上の実務経験をもって受験ルート
(ただし、大学卒業相当者は4年制以上の高度専門士や学士が該当で、こちらも非該当)
③学内推薦ルート。

たまたま精神保健福祉士の受講をその大学院がある通信教育科でしており、私は③のルートで大学院進学を目指すことに。

受験時に事前提出することになっている「研究計画書」なんてものは書いたことがなかったから、知り合いの大学教員に相談をしながら、試行錯誤していました。もう、わけわからんと思いながら。

なんせ、進学を考えたのが12月、試験が3月で、その間に通常の仕事と、精神保健福祉士の国家試験が待っていた。研究計画書はなんとか体裁を整えたものの、最後まで周囲からは「大学独自の書き方があるかも」と言われつつ、入試に臨んだ。

そして、入試は無事に終わり、1年間の実践研究と修了要件以上の単位取得を経て大学院を修了しました。

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【中退しても学ぶことをあきらめなくていい】


大学院の個別審査に関しては、各大学院によるところが大きいけど、決して大きな業績や、有名人だから、お金があるからといったものではありません。現に、私は有名人でもお金持ちでもないです。

大学院の入学には、研究分野に対する思いの言語化と、それを思いから研究へと昇華させていくことが求められます。そして、入学後には、授業に付いていくだけの学力がやはり必要だれど、そうしたサポートはいまだに充実しているとは言い難いものがあります。東京には、専門の予備校なんてものがあるけれど、地方には少ないものです。

中退後からの大学再進学にしても同じことが言えます。
どこを選べば、自分のライフスタイルと合うのか、4年次編入が可能なのか、それとも1年次からなのかなど、多様な通学スタイルがある。それこそ日本の大学の数だけでも900近い大学数があるのだから、そこへのガイドは必須だと感じています。※当たり前だけど、通ってる間の金銭的支援も必要。(奨学金や給付金など、実はいろんな支援はあるので相談してほしい)

大学進学にしても、大学院進学にしても、決してすべての門が閉ざされているわけではないので、どうか迷っていたり、悩んでいたりする人がいたら、周囲に相談してみてほしいと思います。
ただ、相談する中で否定的な声を聞くこともあるとは思う(実際、私もあった)けれど、少なくとも・・・私は進学してよかったです。

だからこそ、これから考えている人にはエールを送りたいと思う。

【一般化はできないけれど】


この話はあくまで個人の経験談で、個別性が強く、普遍化して語れるものではありません。また誰しもができるとも思っていません。

むしろ、どう考えても恵まれている部類であるのは間違いないです。少なくとも、2003年当時の大学進学率47%の時代に高等教育機関へ進学している時点で恵まれていたと思います。その後、2つ目の大学は自費で支払っていたとはいえ、進学ができるチャンスと周囲が許してくれたこと。また、社会福祉士にしろ、精神保健福祉士の資格取得にしろ仕事と家庭など、社会生活が曲がりなりにもできていたという時点で恵まれていることは疑いようがないです。ただ、決して「ラッキーだった」、奨学金の支払いはあるものの「恵まれた環境だった」で片づけていいとは思いません。

大学進学や、大学院進学だけがよいと言いたいのではないし、ここは誤解のないように書いておきたい。なら何で書いてるのと思われるかもしれないです。けれど、やっぱりOECD諸国の中での大学進学率だけを見ても、決して高いとは言えないことは国*3も認めるところだし、何よりも、周囲には私のように中退をしている若者は多いし、再進学を志す40代、50代の仲間たちも増えて(=個人的なものであり、統計上の数とは別)います。そうした人たちが学びたいときに学べる環境を作っていくことこそが大切だと思うし、作っていきたいと思います。

そして、道はひとつじゃないよ!とエールになればと思い、ここに書き記そうと思います。かなり恥ずかしいけれど。

この個人の語りが少しでもお役に立てたら幸いです。
(それでも、やっぱり書くのはしんどい)

*1 文科省Webサイト
*2辰巳 哲子『大学中退後のキャリアに影響する大学入学以前の経験』Works Review Vol.10(2015),1号p.1-10
*3 大学進学率の国際比較 (https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2013/04/17/1333454_11.pdf)

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