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美味しく食べて貰った記憶1.鹿のスペアリブ

鹿肉を食べたことあるだろうか?

最近でこそレストランや飲食店で食べる機会が増えているが、一般的に食べる事はまだまだ少ない。


俺が初めて鹿を捌いたのは高校1年の春だ。
いや、正確には捌く手伝いをしたと言うべきだろう。
それから2年半後、高3の秋に初めて自分で捌いた。

所属しているボーイスカウトのイベントで鹿をやりたいという話があり、捌くのを依頼されたのだ。

中学生世代が対象のキャンプの一環で、鹿を捌くのを見せ、食べることで命と食の繋がりや、食事への向き合い方を考えるのが目的だ。

皮を剥ぎ、頭や骨を外し、肉をバラし、、、、
グロテスクに感じる人がいるのは承知しているので、ある程度の距離を取りつつ見せた。

鹿についての話もいくつかした。
想定内だが鹿を食べたことがある人は少ないし、食べる事にあまり良いイメージを持っていない人もいた。

まぁ、日本では牛豚鶏以外の肉はあまり馴染みが無いし納得だが、食べてくれるか少し心配だ。


若い鹿でかなり淡泊だったので色々と工夫をして調理をした。
もも肉は見た目のインパクトを大事にしたくて丸焼き。
ハーブやスパイスを混ぜて下茹でしてから焼いた。

ヒレ肉や細かい部分はシチューに。


あばら肉(スペアリブ)は骨付きでタレ焼きに。
これが1番美味かった。
若鹿なので肉は少ないが旨味が強い。

味付けは醤油にマーマレードなどを混ぜた
甘辛い味だ。
骨付きで焼くと身の縮みが少なくて
美味く焼けるのだ。


そして食べて貰う瞬間。
鹿に距離感があった人も、捌く姿を可哀想だと言った人も、みな食べた。
疲れも空腹もあったろうし、美味しそうだったのもあるだろう。

可哀想だと言った子が、スペアリブに齧り付いていたのを俺は忘れないと思う。
はじめての鹿肉、可哀想という気持ちを食べる事で供養するというか。
残さず食べきるという考えが伝わる囓り方だ。
もう何も無いだろという所まで骨をしゃぶり食べ尽くしていた。

料理人としてあの瞬間に立ち会えたのは本当に貴重だった。

そんな瞬間を見たくて今日も料理を続ける。

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