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鯉の追い込み漁・コイ料理・自然に恋する人々。

鯉の追い込み漁をして料理して食べるイベントをした。
簡単に言えばひと文だが、詳細を語るとそれなりに長文になるかもしれない。
けど書きたいんで書きます。助走をつけてグワーッと書いていく。

・はらぺこkitchen

というイベントでの鯉漁に、ゲスト料理人?として参加したんです。
このイベントはコオロギラーメンで有名な地球を味わうレストラン”ANTCICADA”の食材調達担当、豊永裕美さんの個人的なイベントでして

参加者がみんなで様々な生き物を捌いて食べて、食にまつわる環境や問題を知ったり、料理や漁を楽しむイベントです。(すごいザックリ説明)
説明が難しいんで、詳しくは裕美さんのSNSをチェックしてみてね。

https://instagram.com/harapeko64chan?utm_medium=copy_link

場所は内田さんという仙人のような方の畑やその周り。
狩猟や川漁の達人で、なんでも知ってるすんごい人。

裕美さんと内田さんのツーショット。
かっこいい大人。


・始まりは2年前??

ある冬の日、「牡蠣パーティーをするからこない?」という素敵な誘い文句に釣られ彼らのシェアハウスに遊びに行ったのが始まりだ。
そこはANTCICADAという昆虫食の料理屋メンバーのシェアハウスで、遊びに来たはずの俺は家に入って数分、鯉を渡されて料理をする事になった。

なんでこんな事になってるのか…
そもそもその頃の俺はANTCICADAのメンバーとはほとんど面識が無かったし、突撃で料理する事はあっても鯉を渡されるなんて全然想像してない。
ま、皆さんが面白くって最高だったから結果オーライだけどね。

なんとか捌いたり料理したりができた。
そして驚く。

「こんなに鯉って美味いっけ??」

そう、この鯉はめちゃめちゃ美味いのだ。
臭みというより香り、川魚らしい香りはあれど嫌じゃない、むしろクセになる。
洗いにしないでも生で食えるというのは想定外なのだ。

俺の中の寿司魂が叫ぶ「寿司にしろ!!」と。
そう言われちゃ~やるっきゃねえ、寿司にしてみた。
シャリにはゴボウの漬物、塩揉みしたカブの葉、柚子の皮と果汁。
タレは茹でてバラした鯉の卵を辛子酢味噌にまぜた物。

正直マ~ジで美味かった。
こんな美味いんかってくらい美味かった。
シャキッとした歯応えと爽やかな川の香り、川魚らしい脂、どれもがよかった。

そして、その味が印象的だった事が今回のイベントに俺を誘った理由らしい。
めっちゃ嬉しい。味で覚えててくれるって光栄すぎる。

・用意、試作、バレンタインには鯉を送ろう。

数ヶ月前、ANTCICADAに食事に行ったら裕美さんに「2月に個人的なイベントで鯉の追い込み漁するから料理してよ~」的な誘いを受けた。
「もちろん、よろこんで!!」

それから何度か連絡して、料理の予定やイメージを作り上げていった。
どんな食材なのか、定番の組み合わせはなにで今回はどうするか、そんな事を想像してどんどんイメージを膨らませていく。

そしてイベントの約10日前にコイが届いた。
たまたまバレンタイン。
なんだ、バレンタインはチョコ以外もいいじゃないか。ねえ。

まずは捌いてバラして、構造を把握していく。
小骨が多いし変な形だから抜くと身がボロボロになっちゃうのよね、、、
ハモやアイナメのように骨切りが必要な魚やな。

アイデアを片っ端から試作。
焼いた骨で出汁、焼いた骨で蒲焼きダレ、蒲焼き、蒲焼きの棒寿司、葛打ちのお椀、腹身のエスニック椀、揚げ焼きのお椀、ゆでワンタン、ワンタンスープ、卵の旨煮、卵の煮付け、身と卵のワンタンスープ。。。。

色んなバージョンや組み合わせを試してみて、今回のイベントには何が良いかを考える。
食べる人、料理する場所、手間暇、時間、みんなでできるか、、、様々な事を考えなくてはいけない。

卵を混ぜてワンタンで包んでみたりもした。


色々悩んで決めたのが
鯉寿司、焼き棒寿司、揚げ焼きのお椀、茹でワンタン、卵の煮付け。
この5品だが、捕れるかも料理する時間がどれくらいあるかも未定なので(仮)という感じで、あとはその場で臨機応変に。

材料や調味料、調理器具などなど、色んな状況に対応できるように用意。
なるようになるべ~とは言うけど、どんな状況でもできるだけ美味い物を食べたいし作りたいから用意は入念にして当日を待つ。
(蒲焼きタレを忘れたのは失態だったが…)

・鯉の追い込み漁

やり方はシンプル。
一方を網でせき止め、もう一方から人が追い込んでいくというなんとも分かりやすいやり方。

ただ、この水路は沼が深いので胴長を履いてても危ない。
足が取られるし、転びそうになる。

上から見るとこんな感じ。
時間をかけて追い込んでいく。

詳しくは俺も分からないが、場所は農業用の水路みたいです?多分。

胴長を着ててもしっかり寒い。
胴長が穴開いたりしたらヤバいですよ、俺は左足の方に穴が開いてて大変だった(泣)さみ~~

投網も数回。
投げ方がホントに綺麗。職人技。

2キロ~6キロくらいかな、様々なサイズのが捕れた。
フナは惜しくも捕れなかった…
雷魚にも会えなかった…

けど、鯉がちゃんと捕れて一安心。

立派な鯉。
びっちびち。こりゃ身が締まってていいぞ~

投網以外で、一番最初に鯉を捕れたのは俺でした。いえーい。
中学時代にガサガサしまくってた経験がここで生きてくるとは思わなかった。

・待ち時間には鶏を捌いて

鯉漁をする時は胴長が必須だが、人数分は無いので前半後半で交代してやった。
その間の空き時間は昼飯用に鶏を捌く。
内田さんの飼っている鶏のしめ立て。

皮が破れないように毛を毟っていく。
絞めたての鶏は温かくて、改めて生き物である事を実感する。

内臓も綺麗に処理していく。
構造がよく分かる。

身はもちろん、脂がめっちゃ綺麗で生の時点で美味しさが想像できて腹が減る。
(※いくら新鮮でも鶏の生食はやめましょうね、マジで!!)

この鶏は昼飯としてスープにした。
バラして圧力鍋で炊いたんだけど、脂がすっごくてオリーブオイルのような色合い。
塩を入れないでもめちゃめちゃ美味い、過去1美味い鶏。
身がムチムチで味が濃くて、脂の香りも強くて、出汁も最強。
身体の芯から温まる。


今度、全然違う用事で軍鶏の養鶏所に行くので、それも楽しみだ。

・まずは鯉こく。

王道にして最強の鯉料理、それが鯉こく。
作り方は様々だが、今回は時間の関係でウロコを引いて内臓も外して作った。
輪切りにして、ゴボウと生姜と一緒にコトコト数時間。
柔らかくなったら味噌で味付けて完成。

ただ、完成した写真を撮り忘れてて…
変わりと言ってはなんだけど、数日前に店で食べた鯉こくの写真。

時間があればウロコ付きでやりたいし、もっと時間があれば内臓ごといきたい。
けど、今回はみんなが食べやすい感じです。
本気のは内臓ごとだし、野菜もいれないらしいです。それも食いて~


・鯉のお寿司を握ってみよう!

今回のメイン料理。
寿司をよく作る俺が寿司の握り方を教えて、みんなで握る。
ネタの切り付けと、シャリを合わせるのさえやっておけば以外と簡単(奥は深いが…)

川の鯉は寄生虫の問題で生食はNGなので、今回の寿司には養殖の鯉を使いました。
臭みが弱いけど、しっかり脂が乗ってて美味いので幅広く愛されそう。

工程を説明しながら握り方を見せる。
左手でネタをとって、右手でワサビを塗って、シャリを乗せて、返して、あーしてこーして……
ってな感じで教えつつみんなで握る。

形も大きさもバラバラ、個性的な握り。
それもまた楽しみ。

小骨が気になる部位は開いて握ってるので、骨はそんなに気にならない。
味は川魚らしい草の香りと、白身の旨味。
シャリはほんのり赤酢を混ぜたの正解だったな。合う。

炙ったのも美味かった。
寒いからか脂が硬くなっちゃって、炙るとトロッとなるのよ。
いつか俺の握りたてを食べて欲しいなぁ。なんて思ってるのでいつか寿司のイベントもしよう。


・鯉焼く人々

めちゃめちゃ良い写真だな…

鯉の蒲焼きをこさえた。
本当はこれで棒寿司しにようと思っていたが時間が無くて蒲焼きで食らう。
寿司にするならシャリに有馬山椒を混ぜるのが良さそう。

3枚おろしにして、骨切りをして串を打って焼く。
焼くときは骨切りした身をなるたけ広げると綺麗に焼ける(広げないで焼くと縮んでくっついちゃう)

両面をカリッと焼いて、甘辛いタレをのせていく。

何度もタレを塗ることでタレが乗って、照りが出て、美味くなる。

試作の骨で作った鯉用のタレを家に忘れたのは本当に不覚でしたが、その場でいい感じに合わせれたのでまぁヨシ!

ちょっと焼きすぎたのもあるけど、照り照り。
川らしい臭みはあるけど甘辛い味と合わさって美味い。

このシリーズはみんなでできるし、美味いし応用が利くので色々やってみたい。
スイートチリソースと醤油を混ぜたタレで焼きたい。
青唐辛子とナンプラーとミントもいい。
アロスティーニ的なスパイスもいいな、クミンと唐辛子。
やりたいことはたくさんある。

・チタタプと団子とワンタン

今回のイベントはみんなで料理するので、捌くのになれてない人もいる。
けどいいのだ!!なんっつても骨に残ったのをこそげちまえば良いんだから。

骨に残った身、使いにくい尾の身、薄すぎる腹身、その他余りやすい部分をまとめて叩く。
ゴールデン○ムイ的な感じに「チタタプ チタタプ」って叩くわけです。
楽しいのよコレ。

鯉は小骨が多いのでしっかり叩くのが大事。

叩いて粘りが出てきたら刻んだネギや生姜、味噌、醤油、塩、砂糖、ゴマ油を加え更に叩き混ぜていく。
味噌を入れるのは俺の好み。こういう料理に味噌があうんよ~

そんでコイツをワンタンの皮に包んでいく。
みんなでやると早い。速攻で90個できた。

ワンタンは一面をしっかり濡らして包むのが大事。
具がミチミチ詰まってるのも良いけど、今回はほどほどに。

包みきれない分はそのまま団子にしていく。
鯉の骨で引いた出汁をベースにしたスープで茹で、仕上げにセリとポン酢とゴマ油をひとまわし。

むちっとした鯉の身と川魚特有の香りと旨味、セリの爽やかさ、ポン酢とゴマ油の香り。
それらが混ざって美味い!
骨もほとんど気にならない!!

これはワンタンへの期待が高まる。

ワンタンを茹でる。
しっかり火を通し、茹で上げる直前にセリを投下、サッと火が通ったら水気を切りながら掬っていく。
セリはちょっと火を入れるくらいで馴染みが良くなる気がする。

どーーーーん!!!!
はい!これ最優秀賞です。
なんでこんな美味いんか分からんくらい美味い。

茹でたてに自家製のポン酢と、岩井の濃口ゴマ油。
チュルンとした皮にジューシーな種、火をいれたセリの良い香り、タレの酸味やコク、バランス良くうんまい。

団子でも充分美味かったけど、ワンタンにすると臭みが一気に和らぐ。
体感だけど半分以下になる。
なんでかは謎、むしろ包まれそうだが??
けど何はともあれ皮で包むのはアリです。めっちゃ美味い。

あの臭みが大好きな人には物足りないかもだけど、この食べ方はいい。
今後もクセ強食材にあったら試してみよう。

・自然に恋する人々

魚を捕るのも、野外で料理するのもかなり久しぶりだった。
大人になったからとか、忙しいからとか、そういう理由をつけて向き合うことが減っていたけど、やっぱり楽しいし俺の料理の大切なパーツでありベースだと改めて実感。

社会人になる前は料理に次ぐ趣味だったのに、少しずつ都会に染まったのか、忙しすぎたのか、大好きな野外料理や魚捕りができてなかった。
気付けば休日にすることの選択肢からも避けるようになってしまった。

けれどやっぱり好き!!
外で火を焚いて料理する時間の多幸感よ。
数週間できないだけでキャンプが恋しい~!となっていたあの頃を思い出すほど楽しい。

あとね、料理が美味いんです。
普段の料理も美味いんだけどね、野外だとまた違うんだなぁ、、
お店でじっくり味わうのも良いけど、野外でワイルドに食う幸せってのを忘れずに生きたいですね。
こういう食の楽しさを再確認できたのも大きな収穫。

全部美味しかったなぁ。
みんなで作った料理も、自分で作ったのも、皆さんが作ってくれたのも、ぜーーんぶ美味かった。
野外で食べる甘い物や、焚き火を眺めて飲むワインも最高すぎたので次回も楽しみ。

内田さんにはもっと色んな事を教えて貰いたいので、また会いに行きます。
かっこいい大人、凄いなぁ。憧れる。

鯉という魚は身近だけどいざ食べるとなると別物、生命力の強さを感じています。
こないだ奥村土牛の日本画の展示にいったとき、鯉の絵がすごい素敵だったのを思い出す。
今見たらまた違った観点で見れるのかなぁ。見たいな。

彼もまた鯉の姿に魅了されたのかな。なんだかグッと身近に思える。
鯉は美しく逞しい魚、恋しい


最後になりますが、イベントに関わってくださった皆様ありがとうございました。
このnoteの写真は皆様が撮ってくれたものです。愛を込めて。

鯉団子をこさえてる俺、お気に入り。



不安な時間は安らげる音楽を聴きたいね。

おしまい。

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