ぷんかんぷ

零れたもの

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記事一覧

ばいばい

「私たちの軽さをあなたが示したのですから、 終わり方に謝罪は不要かと。 私の気持ちに決して嘘はなかった。 あなたを心から信じていた、子供みたいに。 一緒にいる未来…

ぷんかんぷ
2か月前

 股から赤が滴る。  普段はナプキンに吸収されてから酸化して茶色になっていたり、水で薄まってピンク色にしか見えないそれが、私の白い足をつたって排水溝へと流れてい…

ぷんかんぷ
3か月前

sleep tight, my love.

海はすべてを知っていて、 風はすべてを見ている。 過去も、未来も。 私やあなたが逃げ出したことも、すべて。 海に触れたその瞬間に、 私たちは溶け出して、 かたちを持…

ぷんかんぷ
5か月前

塩、砂糖、オリーブオイル。

[言葉 文章 ストーリー] ストーリーを重視しすぎて。 文章の構成にも、言葉の選択にも、 意識が向いていない。 [音 フレーズ 曲] 曲を重視しすぎて。 フレージングにも…

ぷんかんぷ
5か月前

私だけの夏

 夏が終わったらしい。ろくに外に出やしないで過ごした8月は、私の記憶の中で唸りをあげている。液晶に映し出される輝かしい同級生からの通知は、今日も眩し過ぎて見るこ…

ぷんかんぷ
5か月前
1

酸素はあなた。

他者に興味を持てない、 と言うと随分厨二病的な痛さを感じる。 言うなら感情が無い、のようなそんな感じ。 それに実際そんな奴はいなくて、自分と他者の関係に皆興味津々…

ぷんかんぷ
5か月前
1

紡ぐなんてたいそうな。

 「言葉を紡ぐ」なんていう人は大抵、スカスカなニットをつくっている。バーゲンセールで30%引きになっても売れ残る感じのやつ。デザインに惹かれることも、機能性を評価…

ぷんかんぷ
5か月前
1

水になる

 水になりたい。  美しく日を透かす水になりたい。  決まった形を持たずに、  ただ周りに流されて。ただ周りを流れたい。  色もない。ない方が綺麗って言われたい。 …

ぷんかんぷ
5か月前

ばいばい

「私たちの軽さをあなたが示したのですから、
終わり方に謝罪は不要かと。

私の気持ちに決して嘘はなかった。
あなたを心から信じていた、子供みたいに。

一緒にいる未来は
私の中でもうしんでしまいました。

結局嘘でしたが、
束の間のあたたかさをありがとう。

どうか私の知らぬところでお幸せに。」

恋に終わりはあってもいい。
ただそこに裏切りはあってはならない。
どうか心だけは殺さないでくれ。

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赤

 股から赤が滴る。
 普段はナプキンに吸収されてから酸化して茶色になっていたり、水で薄まってピンク色にしか見えないそれが、私の白い足をつたって排水溝へと流れていく。想像以上の赤。と言うより黒に近い。シャワーを出さずになんとなく、私からこぼれ落ちていく体の一部だった赤をずっと眺めている。腹が冷えて痛い。ナプキンを履き直せば、ゴワゴワした紙に、ドロっと膣から溢れ出る液体が吸収しきれずにいるのを感じる。

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sleep tight, my love.

sleep tight, my love.

海はすべてを知っていて、
風はすべてを見ている。
過去も、未来も。
私やあなたが逃げ出したことも、すべて。

海に触れたその瞬間に、
私たちは溶け出して、
かたちを持たない記憶に呑み込まれていく。
水から流れ込む記憶は、
地球そのもので、あなたそのもので。
波にさらわれた言葉は、
海の時間の中に永遠を孕ませている。

風は私たちを吹き抜けて、
最奥のやわいところに触れたことがある。
生まれた頃の産

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塩、砂糖、オリーブオイル。

塩、砂糖、オリーブオイル。

[言葉 文章 ストーリー]

ストーリーを重視しすぎて。
文章の構成にも、言葉の選択にも、
意識が向いていない。

[音 フレーズ 曲]

曲を重視しすぎて。
フレージングにも、音の質にも、
意識が向いていない。

[私 あなた 人生]

人生を重視しすぎて。
あなたにも、私にも、
意識が向いていない。

本当に大切にしたいものは、
言葉、音。
それなら、もしかしたら、
私もかもね。

私だけの夏

私だけの夏

 夏が終わったらしい。ろくに外に出やしないで過ごした8月は、私の記憶の中で唸りをあげている。液晶に映し出される輝かしい同級生からの通知は、今日も眩し過ぎて見ることができない。数少ない見栄を張った写真を私もポストして、必死に自分を肯定する。私はちゃんと生きている。誰が聞くでもない疑問に、答えを横暴に押し付けて。

 夏は嫌いだ。死を運ぶ暑さでさえ煌めくレジャーのスパイスに成り代わる。私の心さえも燃や

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酸素はあなた。

酸素はあなた。

他者に興味を持てない、
と言うと随分厨二病的な痛さを感じる。
言うなら感情が無い、のようなそんな感じ。

それに実際そんな奴はいなくて、自分と他者の関係に皆興味津々で、どうにか自分を大きく見せようとしているはずだ。

それは酸素がないと人間が生きていけないのと同じくらい普遍的なこと。

例に漏れず私も他者を生活の中で常に感じており、間違っても自分が他者に興味がない人間だとは思わない。

寧ろ他者を

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紡ぐなんてたいそうな。

紡ぐなんてたいそうな。

 「言葉を紡ぐ」なんていう人は大抵、スカスカなニットをつくっている。バーゲンセールで30%引きになっても売れ残る感じのやつ。デザインに惹かれることも、機能性を評価されることもないけれど、ニットを持っていなければまあ、欲しい人もいるかもしれないなってくらい。いやそもそも服になる以前の問題で、網目もめちゃくちゃ、毛羽だった糸が絡み合ってるだけなんて場合もある。でもその、がんじがらめになったその中に、ご

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水になる

水になる

 水になりたい。
 美しく日を透かす水になりたい。
 決まった形を持たずに、
 ただ周りに流されて。ただ周りを流れたい。
 色もない。ない方が綺麗って言われたい。
 匂いもないし、味もないけど。
 それが良いって言われたい。
 海にもなりたいし、川にもなりたい。
 日を受けてキラキラする影を
 水底に作りたい。

 水になりたい。
 誰も気にも留めない水になりたい。
 ペットボトルに囚われる水へ、

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