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20歳代、4割が「貯蓄なし」

前回は、日本人の所得の中央値が423万円という話を書きました。
所得が423万円だと、どのくらいの貯蓄ができるのでしょうか。

すべての世帯の平均貯蓄額は1,150万円


金融広報中央委員会では「家計の金融行動に関する世論調査」を公表しています。

令和4年分の同調査によると、日本国内のすべての世帯の金融資産保有額の平均は1,150万円でした。
金融資産保有世帯に限ると、なんと1,593万円

※金融資産とは…預貯金、金融商品などの保有額のこと

結構みなさんしっかり持ってますね。
貯金か株かわかりませんが、老後に2,000万円は必要だそうですから、これだけあればなんとか乗り切れるのではないでしょうか。

でも、こういう数字は「平均」ではなく「中央値」で見るのが重要なのでした。

※中央値とは?
データを昇順または降順並べたときに、ちょうど真ん中にあたる値のこと。
(1番目から100番目をならべたときの50番目です)

平均値は、極端に低かったり高かったりする数値が入ると影響を受けてしまいます。所得や貯蓄のように外れ値が大きいデータは、中央値を見るほうが、一般の実感に近い値を得られます。

中央値を見てみましょう。

○金融資産保有額(金融資産保有世帯) 中央値 629万円
○金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む) 中央値 280万円

…??

がくっと下がってしまいました。
ということは、一部の超富裕層の保有額が、全体を押し上げていたということですね。

どのあたりが、各世代の「リアル」なのでしょうか?

20歳代の4割が貯蓄なし

それでは、世代別の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を見てみましょう。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」総世帯(令和4年)

まず注目してほしいのが、20歳代の4割が金融資産なしという衝撃の事実。

つまりは貯蓄なしということですが、
ほぼ2人に1人が、生活がカツカツで貯金がないという状態。

100万円未満の21.9%と合わせると、6割の20歳代が手元に100万円がないということです。
これはまずいのではないか。

それでは30歳代。結婚している人も多いでしょう
……が、金融資産なしが26.7%
その後、100万円未満が15.1%
100〜200万円未満が9.8%、
500〜700万円未満が8.6%と続きます。

少し二極化の予感。

40歳代も相変わらず、
金融資産なしが28.4%
100万円未満が12.0%、
1,000〜1,500万円未満が7.5%と続き、
はっきりと二極化しています。

というか、金融資産なし世帯が50歳代で28.4%、60歳代で23.1%、70歳代で21.8%と、
だいたい2割はいるのですね。

日本人の生活は、想像以上に苦しいのではないでしょうか。

この図表を見ると、40歳代以下・200万円未満と、50歳代以上・1,000万円以上にボリュームが集まっており、二極化していることがよくわかります。

なかでもシングルがヤバい

それでは、単身世帯はどうでしょうか。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」単身世帯(令和4年)金融資産保有額
(金融資産を保有していない世帯を含む)


全年代で、独身者のうち金融資産非保有は34.5%にものぼります。
シングルの貧困は、本当に深刻な問題です。

30歳代のうち、3人に1人が貯金なし
金融資産を100万円未満しか持っていないという人は、18.5と高い割合です。

40歳代は、35.8%が貯金なし。
金融資産は100万円未満という人は、14.8%…。

正直、結婚しようと思っても、金銭的な理由で諦めざるを得ないという人は多いのではないでしょうか。
子育ても難しいと思う。
本当に現代は、結婚も子どもも贅沢品だと感じます。

50歳代シングルの金融資産なし39.6%は、もう何と言っていいか。
この人たちが定年を迎える十数年後、日本はどうなっているのでしょうか。

お金のために働かざるをえない高齢者たち


間違いないのは、この人たちは「リタイア」ができないということ。

かなりお年を召した人が、炎天下のなかで肉体労働をしているのをよく見ます。
なぜ働かないといけないかというと、それはやはり経済的な理由ですよね。

年金と貯金だけでは暮らしていけないということです。

マック最高齢女性クルー、“スマイル”の秘訣」などと、美談にしないでほしい。

この記事にある通り、働く高齢者は30年前から倍増しています。

「働く理由では『収入がほしい』が45・4%で最多だった一方、『体に良い。老化を防ぐ』23・5%『仕事が面白い。知識が生かせる』21・9%▽『友人や仲間を得られる』4・4%――など生きがいや健康作りの回答も目立ち、高齢者も働きやすい環境整備が求められている。【山口桂子】」

働く理由のダントツ第一位は「収入がほしい」で、ほぼ半数です。
なぜなら、日本の社会保障が貧しすぎるから。
政治が失敗しているから、65歳を過ぎてもリタイアできないのです。

それに言及せず、2割そこそこの数字を取り上げて「生きがいや健康作りの回答も目立ち」とはどういうことか?

求められるのは「高齢者も働きやすい環境整備」ではなく、
経済的理由から働かざるを得ない高齢者を少しでも減らす政策」では?

これが毎日新聞の姿勢ですか?
山口桂子記者はどう思いますか?


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