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「重いコンダラ」……みんなが同じ番組を見ていた頃の「伝説」。

 河川敷では、高校の野球部が練習をしている。
 その隅には、懐かしい物体がある。
 
 グランドを整備するための「整地ローラー」といわれる道具らしいが、これを「コンダラ」という名前だと思っていた人が一定数いた、という「都市伝説」のような話があった。同時に、そのことを、かなり大勢の人が知っていた頃があった。

 それは、みんながテレビ番組を、今より熱心に見ていた時代だった。

 自分が子供の頃、それに若い時は、テレビをみる時間は、とても長く、自分だけではなく、みんながテレビに夢中だった時代が確かにあった。

 でも、それは、バブル期まで、という印象がある。

テレビの視聴時間

 テレビ離れと言われながら、 2000年以降、テレビの視聴時間は3時間半に迫る勢いで高い水準を維持してきました。この長時間視聴は、視聴時間が長い高齢者の割合が増加したことが主な要因です。ところが、2010年から2015年にかけて、3時間28分から3時間18分へと、30年ぶりにテレビの視聴時間が減少しました。
 高齢化は続いているにも関わらず、なぜテレビの視聴時間は減ったのでしょうか。

 テレビを毎日見ていると、今は高齢者しかテレビを見ない、と言われているから、自分が余計に歳をとった気持ちになるが、数字で見ると、印象よりも、意外とテレビ視聴時間は減っていない。

 それでも、2021年には、おそらくは、これからの変化の決定的な分岐点になるかもしれないデータが出ている。

 平日については、「インターネット利用」の平均利用時間が、初めて「テレビ(リアルタイム)視聴」を上回る結果となっている。

 もしかすると、実感の方が先に行き、実態の方が遅れて続くのかもしれないが、この傾向は、これから先は強くなっても、弱くなるような気はしない。

視聴率

 テレビの視聴時間は、思った以上に減っていないのだけど、テレビの重要度は、特に21世紀に入ってから、崖を落ちるように下がっているような印象がある。

 それは、視聴率という視点から考えると、より分かるかもしれない。

 2021年秋のドラマの視聴率のトップは、「ドクターX」で、「平均視聴率:16.2%」になっている。そして、第10位は、「SUPER RICH」で、「平均6.9 %」

 現在の視聴率は、分単位だったり、誰が見ているのか、といった視聴質のようなものにまで、以前とは比べものにならないくらいに、精密な分析がされているという噂を聞いたことがあるけれど、それでも、視聴率は、年代を超えて、比較の材料にはなると思う。

2000年のテレビドラマ

 例えば、2000年のドラマで最も高視聴率だったのは、木村拓哉・常盤貴子主演「ビューティフル・ライフ」で、平均視聴率32.3%。

 木村拓哉さんと常盤貴子さんがW主演を務めたドラマ。有名店に勤める美容師の男性と難病に冒されて車椅子生活を送っている図書館司書の女性の恋愛模様を描いたラブストーリー。
 最終回で視聴率41.3%という驚異的な数字を残した後世に語り継がれる名作ドラマ。

 この年のトップは、やや例外的な存在かもしれないが、ドラマの視聴率ベスト1010位でも、「平均視聴率:16.9 %」で、2021年の秋ドラマのベスト1よりも、高い数字になっている。

10位:お見合い結婚(主演:松たか子 ユースケ・サンタマリア)
結婚のためにキャビンアテンダントの仕事を辞めたものの恋人に逃げられてしまった女性が、大手商社に勤める男性と気乗りしないままお見合いするが、実はそれが運命の出会いだったというストーリー展開。


みんなが見ていた

1位:『積木くずし』(45.3%/1983年)
2位:『水戸黄門 第9部』(43.7%/1979年)
3位:『半沢直樹』(42.2%/2013年)

 高視聴率のドラマは、2000年代より以前に集中している印象がある。昔のテレビほど「みんなが見ていた」と思うし、その番組について、「みんな」が共有できて、そのことで「一体感」を生んだ時代は、確かにあったと思える

 だから、「半沢直樹」の高視聴率は、かなり例外的な存在であり、「みんなが見ていた時代」の完全な終わりの象徴になるような気がする。

 ただの個人的な実感に過ぎないけれど、「半沢直樹」を見ていた人たちのほとんどは会社員、それも中年以上の正社員の男性ではないだろうか。私も勧められて見たのだけど、続けて見る気持ちになれなかったのは、会社内での争いを見ていると、早く辞めて独立したほうがいいのではないか、などと思ってしまったからで、それは、自分自身が、組織にあまりいなかったせいだと思う。

「半沢直樹」のことを、さらに考えるのは、自分の能力を超えそうなので、もう一度、テレビ視聴のことに戻ると、総合的なテレビ視聴時間よりも、ある特定の番組を「みんなが見ること」がなくなっていったのが、この30年で、それによって、テレビへの熱のようなものが、冷めたように感じているのかもしれない。

巨人の星

「巨人の星」というアニメがあった。それは、主人公が恵まれない環境から、才能と根性でプロ野球界で活躍するという、いわゆる「スポ根」ものといわれるような作品だった。高度経済成長期の1960年代後半から、70年代にかけて、毎週土曜日の午後7時から30分放映されていて、放送は、3年半に渡った。

 子供にとっては、永遠に続くのではないか、と思えるアニメだった。

 視聴率も高い。約180話の中で、ベスト20は、全て30%を超えている。

 だから、特に放送開始からの1年ほどは、「教室の話題」としては、「みんなが見ている」番組でもあった印象がある。

重いコンダラ

 そのアニメの冒頭は、まずはバットでボールを打つ「カキン」という音が入ったシーンから始まり、スライディングに続いて、応援の声援が流れ、それから、テーマ曲のイントロが始まる。

 その後に、歌詞が流れ始めるのだけど、そこで、主人公が、グランドで、整地ローラーを引いているシーンになる。主人公は、小柄なので、より、それが重く見える。

 そこにテーマ曲の、最初の歌詞が重なる。

思い込んだら」

 これに「試練の道を」という言葉が続くのだけど、そのシーンを見ていた子供は、映像のイメージと重ねすぎて、主人公が引っ張っている「整地ローラー」のことを、「重いコンダラ」と覚えてしまった。

 そんなふうな子供が続出した、という「都市伝説」のようなことが、いつの間にか言われるようになった。

 それは、どこまで本当か分からないけれど、それを聞いて、多くの人が知っていて、そのシーンまでが浮かんで、その「伝説」も共有されていたのが、もしかしたら「テレビの時代」なのかもしれない。

 ただ、この「重いコンダラ」の話も、どの世代までが知っているのだろうか?と想像するのだけど、40代以下は、知らないかもしれない。でも、情報に関する時間軸がフラットになっているから、意外と大勢が知っているのかも、という気持ちもある。

 どちらにしても、「みんなが同じ番組」を見ているよりも、それぞれが違うものを見ている現在の方が、健全なのでは、と思ったりもする。



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