洗濯機は、水回りの都合で、設置する場所が決まっている。

　それは一応、屋根はあるけれど、どちらかといえば屋外になる。

　さらに、その場所の大きさが決まっているので、今よりも大きくて、布団が洗えるような洗濯機の購入を考えたこともあるけれど、そのサイズの限界によって、あきらめた。

水漏れ

　水道の蛇口のところに、洗濯機を購入したときに、電気屋さんにセッティングをしてもらって、全自動洗濯機が使えるように、高い圧力でも耐えられるような構造になっている。

　だから、庭に水をまくなど、水道をそのまま使うときには、その装置のようになっているホースを、音がするように動かして、外す作業が必要になる。

　その洗濯機と、水道の蛇口を、強化ホースでつないでいる部分があるのだけど、最近になって、水漏れがするようになった。

　もちろん、水道の栓を開けなければ大丈夫なのだけど、それを開けて、洗濯を始めると、その間に、そのつなぎ目あたりから、チョロチョロと水が漏れるようになった。

　その漏れていく量が少しずつ増えて、しばらくたったら、洗濯が終わるまでに、小さなバケツの３分の１くらいは水がたまるようになってしまった。

迷い

　その水を止めるには、洗濯機を購入したときに、水道の蛇口に取り付けてくれた装置のような部分がゆるんでいるので、それを直さなければ、と思った。

　確か、何年か前に、その周囲の小さいネジを絞めたら、水漏れが止まったことがあったので、その作業を再び試みた。

　そうしたら、今回は、そのネジはプラスドライバーを必要としていたのだけど、そのネジヤマが、かなりボロくなっていて、それ以上、強く締めるのが難しくなっていた。

　だから、そのネジの頭の部分をペンチのようなものを使って、無理にでも回さないといけないのか、と思い、だけど、そのことによって、ネジ自体、もしくは、そのホースをつなぐ部分が壊れてしまわないだろうか。

　そんな怖さがあって、それ以上、力を振り絞れなくなり、それならば、電気屋さんにお願いして、この部分を新しく変えるか。だけど、それだけで呼ぶのも、工事費もかかってしまうから、次に、新しく洗濯機を購入する際に、その作業をしてもらった方がいいのではないか。

　そんなせこい計算もしていて、なんだか、迷っていた。

観察

　そんなことをグダグダ思って、解決の引き伸ばしをしてしまっていたのだけど、洗濯をするときに、漏れている水が、ただ排水口に流れていかないように、そこにバケツをセッティングして、その水を、妻に庭にまいてもらうことで、微妙に、気持ちの動揺を抑えていた。

　だけど、洗濯を始め、水が漏れ始め、どうにかしないと、と思いながら、だけど、念のために、それまで、あんまり注目していなかった、その漏れているところを見てみたら、思った場所と違うところが水が漏れていることに気がついた。

　水道の蛇口の、回すハンドルの根本の部分から、水が噴き上げるように漏れていて、それが下につたっていた。

　これまでは、洗濯機のホースを固定するための蛇口につけた装置の部分から水が漏れていて、だから、そこにあるネジを絞めないと、だけど、古くなって、無理に回したら、壊れちゃうかも、どうしよう、で思考が回って、止まっていた。

　でも、それ自体が間違っていた。

　漏れている場所が違うのだった。

　それに気がついたこと自体が、なんだか、うれしかった。

道具

　とはいっても、水漏れが直ったわけではない。

　ただ、漏れる場所が違うのであれば、締めるところがかわってくる。

　蛇口のハンドルの下の、大きめのナットのようなものを、スパナで締めてみようと思って、家にある工具箱をみたら、何種類もスパナが並んでいるけれど、ちらっと見ただけでも、一番大きいものでも、とても水道の蛇口の部分には足りない。

　観察して、原因が分かったとしても、道具が足りないとダメなのか。と、ちょっとがっかりしつつも、妻に、スパナのことを聞いたら、水道関係で使う、大きく開く、しかも挟む場所がゴムのようになっていて、滑らない加工になっている、特殊なペンチのようなものがあると、教えてもらった。

　以前、蛇口を変えたときに、それを使ったことを思い出した。

成功体験

　そして、その道具を使って、蛇口の上の部分を挟んで、少し回した。

　そのナットのような部分は、全然、動かない。だけど、蛇口全体が、ちょっと傾く。

　とても古い木造建築の、いつからついているか分からないような蛇口だから、あんまり負荷を加えると、根本から折れるのではないかという恐怖心がある。

　だから、今度は、蛇口を持って支えて、その上で、もう少し力を加える。

　ちょっと動いたような気がして、蛇口のハンドルの部分から、少し水が噴き出る。

　怖くて、それ以上、回せなかった。

　グッと、というような手応えを感じなかったので、これ以上は、何もできない、と、ちょっとした落胆とともに、洗濯を始めた。

　ウソのように水が漏れなくなった。

　自分で疑いながらも、洗濯中も、洗濯のあとも、バケツをみても、水がたまってなかった。

　こんなに漏れないなんて、といったことを、やっぱり疑いつつ、ただ、それから、何日か経って、何度も洗濯をして、まだ一度も、水漏れをしていない。

　うまくいったみたいだ。

　とてもささやかだけど、こんなに目に見えて、成功したのは、記憶にないぐらい久しぶりだった。もしかしたら、初めてかもしれない。

　やっぱり、なんだか、うれしい。

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