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aiko「カブトムシ」 ー 曲名の凄さ

 冒頭から言い訳になり、申し訳ないのですが、これから述べることは、すでに誰かが書いている可能性もあります。さらには、熱心なファンの方から見たら、中途半端な知識と見方をしていると不快にさせてしまうような内容かもしれませんが、どうしても伝えておきたいと思いましたので、ご容赦くだされば、幸いです。

カブトムシ

 「カブトムシ」は、何度も聞いたことがあります。
 aiko 本人が歌っているだけでなく、カラオケで聞いたこともありますし、一時期は、「女子が男子に向けてアピールするのに適した曲」などとも言われていて、それが肯けるほどメロディーも歌詞も「甘く」聞こえます。

 それでも、少しでも注意深く聞けば、この曲の中には、人を好きになった歓喜だけでなく、好きになったことでの不安とか、時間や年月がどうしようもなく過ぎてしまうことへの薄い恐怖や、老いや死まで自然に歌われていて、やはり、一瞬と永遠の両方を感じさせる曲だとも思います。

恋愛と昆虫

「カブトムシ」の凄さについては、自分でもどこまで分かっているか、分かりませんが、それでもまずは、「曲名」です。

 恋愛を描いた曲で、「ムシ」はなかなか出てきません。というよりも、昆虫と恋愛は、蝶やテントウムシを除けば、元々は、そんなに相性がよくないと思います。

 だけど、それ以外で、可能性があるとしたら「カブトムシ」だったと、aikoが楽曲にしてくれたおかげで、改めて気が付かされました。

 それこそ「男子」にとっては「憧れの昆虫」でもあるし、デパートで売られているくらい価値が高い。「カブトムシ」が発表された頃は間違いなく、そうした存在でもあったので、曲のタイトルに使われることによって、「男子」にとっても、自分に関係がある曲と、おそらくは無意識のうちに思わせる可能性があります。だから、「男子」にアピールできる曲、と言われていたのも分かる気がします。

 それでも、どこか言葉の響きとしてはゴツく、使いにくいはずなのに、今では「カブトムシ」という響きが、この曲と完全に引き離すのが難しいほどになっている印象もあるので、昆虫のチャンピオンでありながら、この楽曲のために、「カブトムシ」という存在さえも、すでにロマンチックな色彩を、少し帯びているのかもしれません。

 さらに、タイトルは「カブトムシ」とカタカナですが、歌詞カードでは「かぶとむし」とひらがなになり、歌詞全体への「溶け込み具合い」まで考え抜かれていると感じます。

カブトムシは雌?

 タイトルの「カブトムシ」は、歌詞をみていくと、どうやら「あたし」であって、「女性」の設定らしいと気がつきます。そうなると、「カブトムシ」とはいえ、あの一般的なイメージの「カブトムシ」ではなくなり、「ツノ」のない「雌のカブトムシ」の姿になるはずです。

 だけど、「カブトムシ」というタイトルだけだと、反射的に、あの「ツノ」と共に思い出しますが、それは、あくまで「カブトムシの雄」で、だから、このタイトルは、さらに厳密にすれば「カブトムシの雌」になるのかもしれません。

 ただ、そうしたことは明確にせず、しかも、それがどちらだとしても、イメージとして「カブトムシの雄」が浮んだとしても、この楽曲に関してはマイナスにならないところが、すごいように思います。

ビートルズ

 それでも、どうして「カブトムシ」を選んだのだろうか?という気持ちは残ります。

 これも、もしかしたら、すでに言われていることかもしれず、そうであれば申し訳ないのですが、これだけ若い時から才能のある「音楽の人」でもあるので、「カブトムシ」は英語だと「ビートル」なので、やはり「ビートルズ」も関係あるような気がしてきます。

 この歌詞の中で、「あたし」自身を「カブトムシ」としているのは、この曲を出した頃、20代前半の若いaikoが、これからも音楽家として生きていく、という決意や覚悟も含めて、「ビートルズ」の「ビートル」として「カブトムシ」を選んだのかもしれません。

 ただ、本人がそれを知ったとしたら、考えすぎと笑われてしまうような気もします。

桜の木の下

 言葉の選択や、並び。遠景や近景や、内面と外界。現在と過去と未来、さらには一瞬と永遠が盛り込まれながらも、自然に感じさせるような音楽なので、例えば、「カブトムシ」が入ったアルバムのタイトルが「桜の木の下」となっていると、同じタイトルの楽曲は収録されていないので、余計にいろいろなことを思ってしまいます。

 梶井基次郎「桜の樹の下には」(リンクあり)というごく短い短編があり、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という著名な書き出しで、私自身が、この小説をどこまで読めているか分からないものの、生と死についても書かれているように思えるので、そのことを意識して「桜の木の下」というアルバムタイトルになったのではないか、とも考えたりします。

レコードショップのディスプレイ

 とても個人的なことですが、家族が病気になり、気持ちが固まったようで、何を見ても心が動かなくて、ただ憂うつで、それで大阪と東京を往復している時期がありました。

 そのころ、それだけ気持ちが落ちていても、移動の費用を少しでも浮かせるためというセコい動機で、大阪のモノレールの駅前のチケット屋に行った時、そのそばにレコードショップがありました。

 その時、発売されたばかりの「桜の木の下」のキャンペーンのために、桜の花びらが、そのショップの大きなガラス一面に散ったような演出がされていて、そこにaiko「桜の木の下」のポスターがたくさん貼られ、春を感じさせるディスプレイがされていました。

 その光景は人工的ではあったのですが、とてもきれいで、気持ちが少しだけ楽になったのを覚えています。だから、そのことで、感謝する気持ちも残っています。


「桜の木の下」のリリースが2000年3月1日なので、あれから、21年たっているのに、その間も長期休養をすることもなく、外から見る限りでは大きな崩れもなく、コンスタントに音楽を生み出し、その質も落ちることもなく、さらに新しい試みもしているのですから、「aiko」という存在は、とてもすごい音楽家であるのだ、と改めて振り返ると、気がつきます。それは、わざわざ私のような人間が言うまでもないことだとも、同時に思いました。



他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んで下さるとうれしいです)。



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