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コンコルドの爆音?

 最初は、夢が形になったような印象だった。
 コンコルド。
 初めて、音速を超えた旅客機だった。

コンコルド効果

 それから長い時間が経って、コンコルドは、ある意味では呪われたような言葉になっていた。それを、飛行機とは関係なさそうな本を読んでいる時に知った。

元手を考えてあきらめられなく思考を「コンコルド効果」と呼ぶ。
 搭乗できる定員数は少なく、搭乗費用は高額、燃費はすこぶる悪く、さらには呪われているかのごとく不具合が相次いだ。
 コンコルドは“史上最悪の旅客機”という烙印を押されて生産中止が叫ばれたが、イギリスもフランスもこの旅客機を最後まで手放さなかった。互いのプライドがそれを許さなかったし、これまで費やしてきたコストを考えると簡単に手を引けなかったのだ。
 あげく、乗員乗客全員が死亡するという大惨事が起き、ようやく2003年に世論に押される形でその不毛な歴史に幕を下ろした。

 こうしたことを知ると、本当に最悪な出来事の一つだと思う。それは、言葉にして残した方がいいことだと思ったが、恥ずかしながら、「コンコルド効果」という表現までされていることは知らなかった。

 一度だけ、コンコルドの爆音を聞いたことがある。(と思っている)。

全英オープン

 1980年代後半。私は、2年目のスポーツ新聞のゴルフ記者として、全英オープンの取材に来ていた。それはゴルフ界の「ビッグイベント」であり、「4大メジャー」の一つであり、「ジ・オープン」と呼ばれるような世界最古の歴史のある大会でもあった。

 日本からは、中嶋常幸が出場し、最終日・最終組で戦った時でもあった。

 その舞台は、スコットランドのターンベリーというゴルフ場だった。

ゴルフの取材

 その時の私は、アメリカのゴルフツアーの取材をしてから、イギリスに来た。

 ゴルフの取材は、日曜日が最終日だけれど、大きな大会であれば、その6日前の月曜日から現地入りして、ゴルフ場のこと、そして、現地に入ってくる各国のプロゴルファーたち、周辺の関係者たちへの取材がある。

 大会が始まるのが現地での木曜日。

 その前に、それぞれのタイミングで、大げさでなく、世界各地から人が集まる。
 これが、世界的な大会で、しかも歴史の長いイベントだから、単なるスポーツの試合以上の意味合いがあることが、取材経験が2年という、まだ未熟な人間にも伝わってくる。

 日本からも、ベテランの記者の方たちも大勢くる。そして、取材の合間に、タイミングよく、ショップに通っている人もいて、まだ慣れていない私は、いつショッピングに行っていいのか分からず、何しろ取材を続けていた。

 今になってみれば、すでに何曜日か分からないが、ちょっとザワザワしていた日があった。ここまでも、いろいろな話題があったのだけど、今日は、ちょっと違う種類の話なのは分かった。

 コンコルドが来るらしい。

コンコルドの爆音?

 どこに着陸するのか、それに、このへんに飛行場があったのだろうか。本当にコンコルドが飛んでくるのか。

 確かに、「お金持ち」と言われる人間が世界から集まってくる場所でもあるのだから、特別に、近くに着陸してもおかしくないのだけど、なんだか、どこかで疑っていた。

 窓が揺れ始めた。

 ホラー映画や、災害映画だと、この場所にいる人間は、全部が死んでしまうほど、さらに揺れが大きくなって、さらに、爆音が聞こえてきた。

 それは、とても高い音も混じり合って、聞いたことのない複雑な音質なのは、分かった。

 しばらく近くの人と会話ができないくらいの音と、災害の予感がするような揺れがしばらく続く。

 急に終わった。静かになった。


 今になってみれば、その時のターンベリーの近くのどこにコンコルドが着陸したのか。それとも近くを通り過ぎただけなのか。さらには、本当にコンコルドだったのか。

 すでに、いろいろなことが、はっきりともしないものの、完全に非日常的な「コンコルドの爆音」を聞いた記憶だけは、それが事実かどうかとは別に、ほんの少しだけど、今も体に残っているような気がする。





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