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脱力とリラックスの違い?楽器演奏に必要なシステム最適化

「脱力しろ」という言葉は、楽器練習をするうちに必ず聞くような言葉ではないでしょうか。

力任せではなく脱力することで、表現の幅が広がり、怪我も起こしにくくなります。そのため脱力は基礎練習で取り組むべき課題の一つとして、ピアノやドラム、ギター、ベース、管楽器など様々な音楽教室で取り扱っています。

今回の記事では、脱力の意味をバイオメカニクス的に理解します。さらに、脱力から発展したリラックスの意味を、構造デザインから発想を得て考えていきます。そうすることで、最終的にはグルーヴと呼ばれる音楽演奏上の複雑な現象も理解しやすくなります。

現代のバーチャルとフィジカルがつながった世界において、リラックスにはとても重要な考え方が詰まっています。ぜひ楽器を演奏したことがない人にも読んで頂きたいです。新たな発見がここにはあると思います!


脱力と構造安定

脱力とは、リラックスと異なり精神的なものは除外され、人体の物理的な状態を表します。

ここでは医学的に正確な筋肉の仕組みではなく、より力学的にモデリング(モデル化)した構造を考えてみましょう。

◆ 骨と関節
機械工学や建築工学では、影響を無視できる材料を省いて、シンプルな構造材のみでモデル化します。

人体も同様で、モデル化を行って解析することができます。生物の特性を損なわないようにモデル化した生体組織の力学は、生体力学バイオメカニクスと呼ばれています。

その主役の一つが骨です。

たとえば尺骨しゃっこつ(radius)と橈骨とうこつ(ulna)は、前腕を構成する骨です。

下記の動画で注目すべきは、上腕や手との接合部です。ヒンジや回転ジョイントを上手く組み、前腕の回転を実現します。上下運動だけでなく回転の自由度を得ることで、楽器演奏に必要な細かな腕の動きを作れます。


ジョイントへの関心は、日本に古くから根付いていました。阪神淡路大震災では粗悪な設計により木造への信頼度は堕ちてしまいましたが、日本建築の伝統的な構法では、金具を使わず木のジョイントを十分に考慮することで耐震性の優れた建築を多く作りました。

人体も同様で、これら関節の働き方を把握することは、脱力への一歩となります。耐震性、すなわち楽器演奏における振動にバランスが崩れない鍵がここにあります。



◆ 伸筋と屈筋
骨が静止しているとき、重力など様々な荷重に対して、骨はバネのように微細にひずみながら応力を発生させて、各部分で力が釣り合っています。

そして骨に作用する荷重としては、筋力が支配的です。

骨格筋はゆるんだ状態から、電気信号に反応して緊張し、筋肉から骨に張力を働かせます

収縮によって四肢を曲げる方向にモーメントを作る筋肉は、屈筋くっきん(flexor muscle)と呼ばれます。同様に伸ばす方向にモーメントを作る筋肉は、伸筋しんきん(extensor muscle)と呼ばれます。

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◆ 構造安定と最小化
ここまで骨と関節と筋肉という単純な構造物がどのような力関係であるかを確認しました。

そして脱力とは、骨と筋肉によってできた構造物が、必要最低限の力を使って安定していることを言います。

構造安定性structural stabilityとは、小さな外力が作用したときに構造が崩壊しない性質のことです。そのための構造の釣り合う位置(平衡点)を定める静的な準備段階、つまり手の置き方などはとても重要になります。



ちなみに、よくピアノ教室において「おばけの手」というワードで脱力を説明されることがありますが、これは間違いを含んでいます。

おばけの手は、ゴムなどによって霊的に手を引っ張り上げて釣り合わせているため、この外力を取り除くと構造が崩壊してしまいます。そのため、おばけの手は構造不安定です。

子供のころに私もやったことがあり、面白い練習法なのですが、脱力まではあと一歩届かずでした。


もちろん脱力は、演奏中などの動的な安定dynamic stabilityも考慮します。このときも筋肉は、最小限の作用で最大限の影響を与えるように調節されなければいけません。

すなわち脱力とは、力をゼロにするのではなく、条件下で力を最小化するテクニックであることがわかります。



リラックスとバイオテンセグリティ

ここまでは脱力が最小化問題になることを確認してきました。ここからは、リラックスという概念はどのようなもので、脱力とどう関係しているのかを考えていきましょう。

◆ 自己組織化
誰かに「リラックスしてね」と言われると、どこか体の部位というよりも、全身で呼応してしまうのではないでしょうか。これは脳や筋肉だけでなく、からだ全体の組織としての現象です。

そこで、まずは組織について考えていきましょう。

物質や個体が集まって自律的に秩序を作り出すことを、自己組織化self-organizationといいます。

さらに自己組織化により乱雑さ(エントロピー)が一定に保たれる系を散逸系dissipative systemと呼びます。


たとえば自己組織化は生物や社会だけでなく、氷の結晶や泡の形態などの無生物の形態にも現れる現象です。

アントニオ・ガウディAntoni-Gaudíフライ・オットーFrei-Ottoは、自己組織化の形態検出form findingを行いました。

そのひとつの成果である極小曲面minimal surfaceは、非常に軽やかな構造デザインに応用されています。



◆ リラクゼーション
自己組織化の形態検出は、さらに数理的な最適化問題optimizationとして扱えるように発展していきます。

動的緩和dynamic relaxationと呼ばれるアルゴリズムでは、コンピューターシミュレーションによって、すべての力が平衡状態にある形態を見つけ出します。

グレートコート

大英博物館とダイナミック・リラクゼーションによる形状検出(Henrik Green & Daniel Lauri MSc Thesis in Mechanics, Department of Mechanics, KTH Royal Institute of Technology Stockholm 2017)


動的緩和をした形状は、先程定義した脱力がシステム全体で可能となった構造をとっています。

すなわちリラックスとは、自己組織化された人体の散逸系において、各点が脱力された状態といえます。



◆ テンセグリティ
人体のリラックスとよく似た構造として、テンセグリティがあります。

テンセグリティtension+integrityは、構造システムが破綻しないように部材を減らしていった最適形態として、バックミンスター・フラーBuckminster-Fullerによって提案されました。

特徴としては、ピンと張られた膜やケーブルの網目の中に、圧縮を受ける棒材が孤立して浮いているという、構造の有機的な柔らかさです。



◆ バイオテンセグリティ
さらにスティーブン・レビンSteven-Levinによって、バイオ・テンセグリティbio-tensegrityと呼ばれる、テンセグリティの生体力学への応用分野が生まれました。

バイオテンセグリティ構造では、筋肉や筋膜のネットワークの中で、骨は連続的な圧縮を受けることなく孤立して浮いています

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バイオテンセグリティの利点は、体幹やインナーマッスルという概念の理解が簡潔であるということです。

冒頭の脱力の章では、伸筋や屈筋のように用途に応じて理解していた筋肉を、ここでは全体を構造的にリラックスさせる筋肉として捉え直すことができます。

たとえば足を上げる屈筋であった大腰筋(腸腰筋)は、バイオテンセグリティの立場で見れば、構造の中心で身体をバランスさせている二足歩行動物にとって最重要な筋肉であることがわかります。

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すなわち、バイオテンセグリティの構造安定性に重要となる筋肉のことを、体幹やインナーマッスルと呼んだりしています。
(体幹とインナーマッスルは本来意味が異なりますが、バイオテンセグリティ的な重要性では違いがありません。)



バイオテンセグリティにより手や肩の不調が、脚の動きにまで影響がでるような、一見理解し難い問題にも納得がいきます。

一度テンセグリティの模型を簡単に作ってみるとその全体最適化の妙技に感動し、人体のテンセグリティを実感できます。

ストローと輪ゴムですぐ作れるので、一度下記の動画を参考にして作ってみましょう。



フィードバックとサイバネティクス

リラックスの特に面白い点は、生体力学系だけでなく、神経系にも適用できる点です。神経は脱力できませんが、リラックスできます。

◆ 神経系
これまでは筋肉や骨に関するリラックスを一般に知られる心理学的方法ではなく、力学的もしくは形態学的な側面で見てきました。

ここからはさらに神経系を制御工学、通信工学的にモデリングするところから始めてみましょう。

電気回路が発展に従って電子的に情報を扱えるようになったように、生物も神経細胞ニューロンを接続して複雑な情報処理を行える神経系をつくりました。

神経系には、中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(体性神経系・自律神経系)が存在します。

外界とやり取りを行う、効果器や受容器も存在します。

効果器effectorは、これまで見てきたような筋肉にあたるものです。

効果器となる、いくつかの筋繊維と、それを支配している1つの運動ニューロンとをあわせて、運動単位とも呼ばれます。


受容器receptorはたとえばにあたるものです。

音波は、蝸牛内部のリンパ液を通る波となり、基底膜へ振動パターンを伝えます。周波数の高いものは入口側、低いものは蝸牛の奥で振動が生じます。そうして基底膜の有毛細胞によって、神経インパルスに変換されます。




受容器に刺激があると、感覚神経末梢神経系が発火して、中枢神経系へと伝ります。逆に中枢神経系で命令があれば、運動神経末梢神経系を通り、効果器に信号が伝わり反応します。

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◆ フィードバック
神経系の制御に関わる生体機構バイオメカニズムには、運動制御理論と呼ばれるいくつかの研究分野が存在しています。

中枢神経系として、小脳や脳幹、脊髄を経由した反射reflexは古くから研究されています。

たとえば伝統的な実験では、大脳などを一部切断・除去した動物を使い、自発的な行動(随意行動)を消失させて反射のみを観察するものがあります。


実際これらの除脳動物、もしくは脊髄動物の実験により、脊髄反射回路は対数的に見れば線形な回路と等しいことが分かっています。

これは人間が対数的に音などの刺激に反応するという、精神物理学の基本法則(ウェーバー-フェヒナーの法則)と対応しているかもしれません。

ウェーバーフェヒナー


反射を基本とした運動制御モデルに、サーボ仮説というものがあります。

サーボとは、現代ではビジネスでも一般に使われる用語であるフィードバックを使った機構のことです。つまりフィードバックをもとに位置や姿勢を目標値へ追従させる自動制御装置です。

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◆ サイバネティクス
サーボ仮説のようなフィードバックによる自動制御は、20世紀の一つのムーブメントでした。

ノーバート・ウィーナーNorbert-Weinerによって提唱された通信・制御の時代の学問は、サイバネティックスcyberneticsと呼ばれ、分野を横断する一大研究となりました。

ウィーナーの著書、「サイバネティックスー動物と機械における制御と通信ー」では、サーボ機構をはじめ、記憶装置についてや機械学習について、さらには神経系についての研究などを行い、生物と機械の壁を取り払うことに貢献しました。

もはや古典的名著であるこの本は、第二次世界大戦直後の情報科学の黎明期に執筆されたため、今の情報革命前夜に戻ることができ、非常に面白いです。


しかしながら、フィードバックによる循環する過程に注目が集まりすぎたために、神経系の反射reacitonについての実験研究が盛んとなり、随意行動actionへの研究が疎かになってしまった功罪がありました。

言うなればドラム練習における、リバウンドばかり練習して、ふにゃふにゃの打面で自力でバウンドさせる練習をサボってしまったようなものでしょうか。


現在の運動制御理論では、計算論的な神経回路の研究が行われています。そこで反射は、随意行動の部品として考えられています。

まず大脳皮質において、連合野で目標設定が行われ感覚野と運動野においてフィードバックされるという、大脳による高位な運動制御が行われます。

さらに小脳の神経回路(ニューラルネットワーク)において運動の学習がなされ、軌道の予測をフィードフォワードして速く滑らかな運動を制御します。そして計算処理の省力化のために反射回路が補助しています。

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この運動回路においては、ただ刺激に対して反射する循環システムではなく、自己創出的システムオートポイエーシスになっていることが分かります。

オートポイエーシスは、人工知能においての重要な難問である、フレーム問題を生命は突破していることを示します。


そして運動回路における神経系のリラックスとは、神経回路の自動制御装置が学習によって最適化された状態といえます。(いわゆる自律神経系のリラックスは今回取り扱っていないことに注意してください。)


さらに面白いことに、脱力は動的平衡力学的リラックスは自己組織化精神的リラックスはオートポイエーシスとなり、自己組織化理論における発展に従っていることが分かります。

ここまでをまとめると以下のようになります。

脱力とリラックスのシステム最適化


個人的には、このように順序立ててまとめれただけで満足感は強いのですが、以上の話を踏まえた上で考えたい話題があるので、最後の章を付けたいと思います。



グルーヴとデジタルファブリケーション

ここからはグルーヴと呼ばれる、複数個体の関係性に関わる最適化を考えていきたいと思います。

まずはいま一度、科学の歴史を見てみましょう。なぜなら、科学は必ずその時代の技術や芸術と結びついているからです。

◆ サイバネティックスから非線形科学へ
分野横断的な理論として、18世紀ごろまではニュートンやライプニッツのように一人の学者によって哲学と数学と物理が連携していました。

19世紀の蒸気機関の時代に専門分野へと科学は散り散りになってしまいますが、再び近づくきっかけをサイバネティックスは与えてくれました。1940年代に始まるサイバネティックスでは専門家集団によって理論が構築されていきました。

そして20世紀には非線形科学へそのバトンが受け継がれたと言えるかもしれません。実際、「サイバネティックス第2版」が出版された時には非線形への補足が付け加えられていました。


ちなみに非線形科学とは、一般に方程式を解析的には解を導けず、コンピューターによる数値解析を必要とするため近年になって勢いを増してる科学分野の総称です。

線形と非線形の対応関係は、スティーブン・ストロガッツ(Steven Strogatz)の解説が分かりやすいです。力学系をいくつの方程式が支配しているかで分類しています。

線形と非線形



◆ グルーヴと同期現象
以前、同期現象とグルーヴを良くする方法についての記事を書きました。


同期現象(syncronization)とは、ウィーナーやストロガッツが研究した分野で、振動子(メトロノームなど)の集合について振る舞いが自律的に同期する現象です。

同期現象は、複雑系科学の中でも実用化が最もできた分野の一つとして面白いです。「SYNC」は、一般読者向けに書かれたストロガッツの書籍です。



音楽用語のグルーヴ(groove)ポケット(pocket)というのは、脱力やリラックス同様に、一種の最適化が複数の振動子になされてたどり着く状態と考えられます。

先程の記事ではグルーヴの三大要素として、周期性、同期性、対話性を示しました。

周期性は、単振動にも現れますが、これは線形です。単振動は、足し合わせることによって、様々な周期性をデジタルに表現することができます。もちろん単振り子のように周期性のある非線形も存在しますが、近似やコンピュータを使い扱うことができます。

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次に同期性について、周期性のある振動子に対して、それぞれが相互作用をおこすようにする、すなわち結合振動子として扱うと複雑系になります。



最後に対話性について。

対話性こそサイバネティックスに最も抜けていた要素と言えるかもしれません。これはフィードバック機構を無意識に制限していたからでしょう。

反射と随意行動の違いにも近いのですが、もう少し確認してみましょう。



◆ 脱・人間機械論
ウィーナーは、サイバネティックスと同時に、「人間機械論」を述べています。



人間機械論は、今まで見てきたような人間の数理的なモデリングを行えることを前提とした理論です。これにより人間と機械の二元論を加熱させました。

よって機械は、便利な自動装置から、人間から職を奪うものと認識されることとなります。


この人間機械論の欠点は、モデリング手法が各個体で閉じていた点です。

閉じたシステムにおいては、感覚器と効果器を使った相互作用しか起こすことができません。すなわち中枢神経系同士の相互作用を生むことができないのです。

中枢神経系は対話性の相互作用を生みます。これが人間機械論を脱構築する手がかりとなります。



◆ デジタルネイチャー
脱・人間機械論を行って、すなわち対話性を満たした人間と機械の関係を論じた書籍として、落合陽一の「デジタルネイチャー」があります。


スピノザの汎神論のように、知能と知能を繋ぐ理として、デジタルネイチャーは存在しています。

デジタルネイチャーでは、個体のモデル化ではなく、関係性のモデル化を主軸とします。そのため個体の差異、つまり人間と機械の対立を超えることができます。


この理論が可能となった要因は2つあります。ひとつはインターネットによる個体を超えた集合知という考え方が生まれたこと。もうひとつは深層学習ディープラーニングにより、関係性を自動的に記述する技術が生まれたことです。


◆ 機械との対話による学習
知能同士の対話はすでに利用可能となっています。

たとえばTodoリストのアプリケーションは、過去の履歴から新たな予定を提案してくれたり、ネットからのリコメンドをしてくれます。

機械の知能と人間の知能とのフィードバック機構は、コーチングの仕組みをつくります。おかげで私も楽器の独学をスムーズに行うことができています。


独学が最適化されることは、音楽講師の職を奪うようにも一見みえます。しかし、個別学習塾の様子などを参考にすると、案外そう単純でないように思います。

人間は考えるよりずっと多様です。様々な見方で分布上のマイノリティを生みます。統計的な全体最適化ではどうにもできない、機械の補助として人間は創造的な心遣いを差し伸べなければいけません。



◆ デジタルファブリケーション
人間と機械の知能は、デジタルネイチャーによって関係性を記述することができました。

デジタルな知能の領域と、アナログな物質の領域をつなぐ関係性は、受容器による量子化によって表されることも確認してきました。


では、複数個体における物質と物質の関係性はどのように表せるでしょうか?

これこそがデジタルファブリケーション(degital fabrication)です。


デジタルファブリケーションとは、バーチャル空間上にモデリングしたオブジェクトを物質空間に出力する、デジタル工作機器を用いたモノづくりのことです。略してファブとも呼ばれます。

具体的には、3Dプリンタやレーザーカッター、ロボットアームを用います。3Dモデリングソフトで作ったデータで簡単に動かすことができるため、市民が一般利用できるファブ施設(ファブスペース、メイカースペース)なども全国に展開されています。

先日も、オンラインとなりましたが、「Maker Faire Tokyo 2021」が開催することができました。マイコンなどの電子工作と組み合わせてモノづくりをすることで、様々な創意工夫が行われています。



デジタルファブリケーションの最大の強みは、人間と機械のフィードバックを細かくできたことです。これは神経回路で言う、小脳や脊髄反射が可能にした計算処理の高速化に近い考え方です。

これまで前半で見てきたような学術的知識を用いた工業製品のように、社会レベルでのフィードバックしか起こせなかったモノづくりが、個人利用できるサイズになってきました。

自分のパソコンをプログラミングして改造するような感覚で、モノをハックすることができる時代です。

以上の利点から、これからはウェブ社会からファブ社会へとも言われています。



◆ ドラムンベースの先見性
驚くことに、デジタルファブリケーションの考え方を独自に最もはやく実践していたのが、音楽分野です。

以前「ドラムの歴史」で作成したチャートを見ると、その類似性に驚きます。

特にドラムンベースと人力ドラムンベースの関係性は、他の記事でも詳しく述べてきました。さらにモーションキャプチャーやロボットアームによる研究も進んでいます。

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音楽は科学や技術と最も接近した芸術分野です。

ピタゴラスはギリシャ時代の幾何学を用いて、ピタゴラス音階を発見しルネサンス初期まで使われる音階となりました。

さらに18世紀ごろのニュートンの時代には、物理学が発展し、時計技術が向上しました。その最先端の時計技術を使って作られた自動制御装置が、オルゴールです。



さらに近年では、人工知能を用いた作曲の研究もすすみ、初心者向けのAI作曲書籍も出始めています。デジタルネイチャーな世界が音楽に広がっていく様子が見えます。



ドラムマシンやサンプリングによるフィードバックによって、ドラムンベースは一時代を築いたといえます。

前回の「ドラムンベース集合論」の最後には、次の進化のダイナミクスが起こる準備ができていることを述べました。

本格的なデジタルファブリケーション社会の到来とともに、ドラムンベース、そして音楽の宇宙全体が動き出すのではないでしょうか。



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