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【コーダ あいのうた】印象に残ったシーン①〜② そして兄の言葉

本作での主人公は17歳のルビー(エミリア・ジョーンズ)。監督はシアン・ヘダー。
どちらかと言えば本作を既に鑑賞済みの人向けに感想文を書いたので、あらすじは割愛する。これから観る人はネタバレありなので、鑑賞してから読んでもらえると嬉しい。ネタバレありの内容でもよければどうぞ。
背景音は「青春の光と影」でお願いします。

家族の通訳として存在するコーダの悩み

[自分が家族の耳になる]という事が当たり前だったルビー。きっと幼い頃は手話で会話する事が普通で、周りの健聴者の方が特殊に見えたんじゃないだろうか。


普通ってなんなんだろう。ごくありふれたもの、それが当たり前である事。だとしたらルビーにとって手話は、家庭の中では普通であり、一歩外に出ると特殊なものになってしまう。
それを繋ぐのが自分の役割だと、「通訳」が「普通」の日常になっている。

監督はここにスポットを当てて、大切な家族を愛するが故に、思い通りにいかないティーンエイジャーのジレンマを上手に表現したと思う。

印象に残ったシーン①

合唱クラブの発表会で、耳の聴こえない人の世界を表現したようなシーンがあった。

ここはもう、顎が震えて、しまいには痙攣するんじゃないかと思うくらいシビれた。

ルビーの家族が、周りにいる観客達の変化に気づきはじめる。

皆がルビーの声に酔いしれ、賛美へと変化していく‥


ルビーの歌の上手さに全く気がついていなかった家族は、観客たちの反応と共に、「あれ?あれ?みんながルビーを讃えている?」と、戸惑いながらも嬉しくて一緒にスタンディングして拍手を送り続ける。


なにゆえ監督が、家族の演者をキャスティングする際「実際に聞こえない俳優」にこだわったのか。
このシーンを見ると、それが少し分かったような気がする。彼らにしか出来ない見事な演技に涙が止まらないのだ。


この心の震えを、どう表現したらいいんだろう。

人は、ある程度想像する事はできても、本当に体験した事しか完全には理解できないという持論を持っている私。
それでも、想像だけでも、涙が止まらない。

印象に残ったシーン②

父が、ルビーに「今ここで、合唱クラブの発表会で歌った曲を歌って欲しい」みたいな事を言っていた夜のシーン。
父親がルビーの首筋に手を当て、振動を感じる。

この時、父親はルビーの大学進学を応援する決意をしたんじゃないだろうか。
子供が成長し旅立つ姿は、しみじみと感じ入るものがある。

印象に残った言葉

兄の「家族の犠牲になってはいけない」みたいな言葉

この場面では、兄は妹が大切だからこそ、これまでどうり通訳としてここに残ると決めたルビーに対して不機嫌になったんだろう。


今までと同じようにしていたら、今までと同じようにしかなれないことを、兄はちゃんと分かっているのだ。
40過ぎの私の心にもズシンときた。

まとめ

多様性と言う言葉をよく聞くようになった。耳が聴こえる人、聴こえない人、サポートする人、差別、偏見、障がい者、健常者、所得格差、外見、能力、まだまだ数えきれないほど色んな違いがあって、分断がそこらじゅうで起こっているけれど、そんな生きづらさを抱えながらも、やはり誰かと互いに支え合って生きていく大切さみたいなものをこの映画は教えてくれたように思う。

ちなみに下ネタも多くて、ジョークも面白いし、暗くならずにテンポ良く観られる良作だった。
この監督の次回作は、期待しちゃうな。

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