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三日坊主の僕がいかにしてLINEスタンプを完成させたか

web系アシスタントデザイナーの山口です。

突然ですが、LINEスタンプを販売開始しました。

https://store.line.me/stickershop/product/3841510/ja

LINEスタンプ、前からずっと作ってみたかったのですが、40個もイラストを書かないといけないというハードルを超えられず、今まで幾度も挫折してきました。が、ついに今回、僕はそのハードルを超えることができたのです。

ではなぜ、世界一の三日坊主である僕が今回だけは、このハードルを飛び越えることができたのか。そこにはこんな壮絶なドラマがあったのです。

冒険の夜明け:会社のiPadを触る

ある晩、会社で残業を終えた僕は、ふと会社のiPad proを触ってみたくなりました。前々からいじってみたいとは思いつつも手が出なかったのですが、その夜は社内に自分しかいなかったことで勇気を振り絞れたのです。なんとなく、procreateというお絵かきアプリを使って、落書きを描いてみました。その時描いた落書きがこちら。


本当に落書きです。もちろん本気ではありません。こう見えて僕はあの難関と言われる武蔵野美術大学の滑り止め科目と名高いデザイン情報学科をデッサン入試で受かったというすごいのかすごくないのかよくわからない実力の持ち主です。でもデッサンは一通りできます。こんなイラスト、本気ではありません。でも僕の心の奥底で声が聞こえました。

「ヘタでいい。もっと描け」

僕はその声に従って、こんなレベルのイラストを何枚か描きました。僕は、去年の春に就職してしばらく、「好きに絵を描く」ということをしていませんでした。その夜は、とても楽しかったです。もちろん、「誰も見ていないから」です。「下手だ」という人も「これは何のキャラ?」と聞いてくる人もここにはいない。楽しいから、絵を描くのだ。僕はそのことを数年ぶりに思い出していました。

そして、僕はその日の夜、友達とご飯に行った時、この落書きを友達に見せてみました。また心の声がしたからです。

「その絵を、褒めてくれそうな人に見せなさい」

と。その友達は、きっと褒めてくれるだろうと思ったので見せました。友達は褒めてくれました。「とっても可愛い」と、心から言ってくれました。あれはたぶん、心からでした。僕はいい気分になりました。「描いた絵を人が褒めてくれる」というのもまた、久しぶりだったのです。

調子の波に乗れ:Instagramに投稿する

いい気分になったので、Instagramに投稿してみようかな、と思いました。が、ここでまた、完璧主義で三日坊主の(←まじでタチが悪い)僕は、こう思いました。「これからイラストを継続して投稿しようかな」「頑張ってみようかな」「だったらイラスト用アカウントを作ったほうがいいかな」「でもいざアカウントまで作ってまた三日坊主で飽きたらかっこ悪いな」などなど…考え始めて1分後くらいに、また心の聖なる声が聞こえました。

「そういうの考えるのヨクナイ!」
「一番、めんどくないやつを選べ!」

そこで僕は、とりあえず思考が追いつかない速度で指を動かし、今の自分のinstagramアカウントに投稿しました。その投稿がこちら。

本文もハッシュタグも適当です。

そういう投稿をいくつかしてみました。

すると1晩か2晩くらいで10件ほどのいいねがつきました。僕は俄然やる気が出てきました。その時、昔カナダの友達が教えてくれたinsta術を思い出しました。「ハッシュタグは人気のやつを30個つけて、毎日最低1つ投稿しろ」というものです。

僕はそれから、同じようなレベルの落書きを毎日1投稿、人気のハッシュタグをつけまくって投稿しました。
こんな感じ。

#イラスト #アート #絵 #落書き #イラストレーション #イラストレーター #スケッチ #ドローイング #絵描きさんと繋がりたい #線画 #イラスト日記 #かわいい #フォローミー #art #design #drawing #artist #illustration #sketch #love #instagood #happy #cute #instadaily #japan #ペン画

「人気ハッシュタグ」とかでグーグルで調べて、手当たり次第に日本語と英語の人気ハッシュタグとお絵描き系ハッシュタグを混ぜて入れました。すると、投稿して5分以内に最低でも20いいねはもらえるようになりました。instagramすごい!

僕はどんどん調子の波に乗り始めました。すばらしいことです。

調子の波を見逃すな:iPadを買う

乗りに乗っています。こんなに調子の波に乗っているのは年に数回しかないことを26年生きてきた僕は知っています。心が「奮発するなら今だ」と叫びました。僕は、この年に数回しかない波を維持させるためにできることはなんでもしようという所存で、iPadを購入しました。apple pencilとセットで。

わからない人にはわからないかもしれませんが、完璧主義で三日坊主の人間の人生が潤うことは難しいです。始めては挫折し、また始めては挫折し、悪循環を続ける限り、自己嫌悪サイクロンが終わることはありません。(本当は「サイクル」が正しい表現だろうけど、災害感を出したくて「サイクロン」と呼んでみました。)このサイクロンを打破し、一度「やる」と決めたことを最後までやり抜き、こんな自分を好きになってあげることができるならなんだってします。たかが6万ちょっとでその可能性をあげられるなら安いものです。

僕はiPadを即買いしました。これで、いつでも好きなお絵描きをすることができます。「やる気はあるのに道具がない」という失敗ルートをひとつ、断つことができたのです。

今ならこだわってもok:絵のクオリティにこだわり始める

さて、iPadを手にし、より確かな継続性を得た僕は、カナダの友達の言いつけを守り、毎日1投稿、ハッシュタグ30をつけ続けていると、平均して50いいねくらいはもらえるようになり、フォロワーも毎日平均5人ずつ増えるようになりました。もうこうなるとテンションアゲアゲです。本当に毎日が楽しい。お絵かきが楽しい。

また心の声が聞こえてきました。

「もう、こだわってもいいよ」

僕は完璧主義で三日坊主なので、「こだわる」というのが最大の敵です。こだわり、納得行かず、楽しくなく、やる気が減り、やめる、といサイクロンが最大の敵です。やめるくらいならクオリティ低いものを完成させたほうが100倍自分の成長に繋がります。なので今回も、「クオリティは低くていいからとにかく発信しよう!」と思ってインスタグラムを更新していました。絵は、会社から家に帰る電車の中で5分くらいで描きあげていました。iPadからiPhoneにデータを書き出す時、見直して、「あれ?なんか頭の形がおかしい」とか気づくことがあっても、「クオリティより継続性」の鉄則を思い出し、心を鬼にしてそのまま書き出し、インスタにアップしました。これは今振り返っても、必要な心構えでした。

でも、もう大丈夫です。こだわってもいいのです。今なら、これだけ波に乗れている今なら、描き直してもそれくらいでこの習慣が止まることはないと予測できます。でも、やっぱりまだ少し不安。これでまた終わってしまったら、途中までうまくいっているがゆえ、終わってしまった時のダメージが大きい。「始めてもどうせ最後まで続かない」という自己嫌悪だけでなく、「始めて、途中までうまくいっても結局は最後まで続かない」という自己嫌悪も抱いてしまうから。続けば続くほど、終わりにくくはなるけれど、終わってしまった時のリスクも大きくなっていく。

なので、僕はすこーしずつこだわることにした。
まず、体のバランスをなんとなーく整えた。だいたい、体は頭の2.5倍の長さ。だいたい、目と口が三角形になるように意識する。だいたい、目と目の間の距離は目1こぶん。

そういう絵のルールを、毎日1つずつ増やすようにした。「今日は頭の形だけこだわろう。他は気にしないとこう。どうでもいい。ほんとどうでもいい」と自分に言い聞かせながら、「毎日投稿する」ということを第一に、「クオリティ」を第二に、ブラッシュアップを続けました。

ある日こんな投稿もしてみました。


実は、毎日色んなポーズを描くのがしんどくなってきたので、既存の絵を使って「解説画像」でネタを稼いだのです。そうこうしながら、少しずつ、僕は自分の満足する絵を継続して描けるに至ったのです。

戦いの始まり:LINEスタンプを作ろう!

さて、この突如始まった「毎日インスタに絵を投稿する」という活動に何かゴールをつけたいと思い、すぐに思いついたのが「LINEスタンプ」です。美大生や絵を描くのが好きな人なら誰しも一度は思ったことがあるはずです。LINEスタンプを作ってみたい、と。僕も今まで何度も思っては、描いてみては、挫折を繰り返してきました。

しかし。インスタグラムで毎日投稿がすでに数日続いているんだから、この調子で描けば大丈夫だろう。LINEスタンプを販売する時、その個数は8、16、24、32、40の中から選べるらしい。「16個作ろう」と思いました。16個ぐらいなら、「この習慣が2週間ちょっと続いた頃に、今まで投稿したやつを集めて送るだけでできる!」と思ったのです。

「16個作ろう!」と意気込むと確実に失敗しますが、「毎日1投稿して、16日経った時にLINEスタンプに登録しよう!」であればなんとかクリアできそうです。さらにその時、「『16日経った時、登録する前に16個分を見返そう!』とか絶対考えない!」と決めました。そんなことしたら僕のことだからどうせその「見返す作業」の途中で挫折するからです。そんなことになったら16日の努力が水の泡です。

そうこうして、ついに16個できました。なんなら18個ぐらいできました。LINEクリエイターズスタンプをよく使っている姉に相談し、選別してもらって、登録すべき16個のスタンプが完成。あとは登録するだけ。ここまで来たらひやひやものです。自然と鼓動が高鳴ります。なんとか自分の心が「やっぱり気に入らない!手直ししたい!」とか言い出す前に申請ボタンを押さねばなりません。

と、そんな時、姉から一通のLINEが。

「やっぱり40個作ったら?」

本当の戦いの始まり:40個セットのLINEスタンプを作ろう!

敵は身近なところに潜んでいました。まさか身内に裏切られるとは。その一言がどれだけ僕を苦しめることになるのかこの人はわかっておいでか。ここで挫折してしまったら僕はついに「僕なんか一生LINEスタンプ作れるわけない」というレベルで自己嫌悪になる。自分で自分を信じてあげられなくなる。

僕の「そもそも40個あっても使うのは16個ぐらいだったりせん?」という取って付けたような反論も虚しく、彼女の正論が並ぶ。

「40個見慣れてるから、少ないなあと思った」
「色んな表情作ってあげたら?」
「泣くとか怒るとかも2段階くらいあっていいんじゃない?」

うむ。いまLINEを見返してみたけど、優しい言い方しかしてない。優しいお姉さんだ。これはそそのかされてやる気になっても仕方がない。

というわけで、姉にまんまとその気にさせられた僕は、当時の「16個作って即販売する!こだわるべからず!」とか言ってた心意気はどこへやら、「40個作る」という戦いを始めてしまったわけである。

ちなみに、「身内に裏切られるとは」だの「そそのかされて」だの悪い言い方をしてしまったが、こういう、「自分の背中を後押ししてくれる人」の存在には本当に感謝しかない。最初に「可愛い」と言ってくれた友達も、お姉ちゃんも、いてくれなかったらこのLINEスタンプは完成し得なかった。まるで舞台作品やWebサイトみたいだ。一人で作るわけじゃない。みんなで作るんだ。LINEスタンプは総合芸術なのかもしれない(ごめんこれは嘘。多分違う)。

最後の戦い:40個描きあげた後、戦いは終わらない

そうこうして、40個ついに完成した。ぶっちゃけ、途中で何度も挫折しそうになった。興味が他に移りそうにもなった。毎日投稿するというのも、最初からずっと継続させられたわけでもない。たまに何も投稿しなかった日もあった。全然関係ない写真をインスタに投稿して「これで今日の分おわり」とか言ってた日もあった。しかしついに、僕はやり遂げたのだ。「40個絵を描く」という快挙を。

振り返れば、会社で一人、落書きを描いたあの夜から約2ヶ月経っていた。三日坊主でいつも自己嫌悪サイクロンに苦しんできた僕が、ついにここまできたのだ。一歩一歩、目の前の階段を一段ずつ踏みしめてきただけ。でも振り返ってみれば、思っていた以上に遠い位置に来ていた。絵のクオリティも、満足できるレベルになっている。それが40個、揃っている。その時の僕は、喜んで「40個を見返す作業」をやった。もう怖くない。ここまでやれたんだから、40個を見返して今から2,3個描き直すなんてわけない。もう、自己嫌悪サイクロンも怖くない。

ちょっと、泣けてきた。

さて。40個見返して、絵のクオリティも満足、あとは申請するだけ。。と思いきや、戦いはまだ終わってはいなかった。

まず、絵をすべて「透過png」にする必要がある。背景を透明にする。僕はwebデザインが本業なのでphotoshopは慣れたもの。なんとか手早く終わらせられた。

次に、「全部左向きで作っちゃったけどこれでいいのか」という壁。LINEスタンプは、「送信する側」と「受信する側」とで画面の右端に表示されるか、左側に表示されるかが変わる。キャラクターはすべて「送信する側的にしっくりくる」ことを優先して左向きにして描いたが、これまた姉に相談して、「相手のセリフに返答する系」のみいくつか右向きに反転させた。

さらに、「スタンプ画像のリサイズ」「メイン画像とサブ画像の作成」「LINEスタンプショップに表示するスタンプタイトルや概要文の設定」などの作業が必要だった。ぶっちゃけ、これらの「申請直前の作業」だけで何度も折れそうになった。最後の敵はクリエイティブの外側にいたのだ。

だがそれもなんとか今まで築き上げてきた自信が背中を押してくれた。「ここまでやれたんだから、もう一息だ」と。自信のマネジメントって大切だなあと思う。

そしてそして、ようやくすべての設定を終えることができた。ちなみに最後の最後の難関は「タグづけ」だった。スタンプに「ありがとうタグ」をつけるとLINEで「ありが」とか打つとスタンプが変換候補的に表示されるようになる。これを40個分つける。非常にめんどくさかった。でもそれも終えて、ついに後は申請ボタンを押すだけ。

いざとなると緊張する。ボタンを押したらもう戻れない。後からスタンプの致命的ミスなんかに気づいてももう戻れない。僕は怖くなって、「一晩置いて、また確認してから申請ボタンを押そう」と決めた。

…だから言ったのに。

結局僕は何の意味もなく三日三晩くらい置いてしまった。「やべえこのままこんなとこで消え去る」と危機感を感じ、慌ててまともに確認せず申請ボタンを押した。ふう。あぶないあぶない。もう少しで最悪のバッドエンドを迎えるところだった。慌ててまともに確認せず(さーっとだけ確認して)申請ボタンを押すことでことなきを得た。この三日坊主ときたら油断も隙もない。

そうして、僕の長い戦いは幕を閉じた。

振り返ってみれば、いろんなドラマがあった。「40個絵を描く」とだけ言えばドラマなんてなさそうなものだが、ここまで多くの人が(多いのかは知らないけど)途中で挫折しているのを考えると、やはりそこには何かあるのだ。何か、というのは、たぶん「継続力」の不足だ。そして継続力の不足は、環境で補えられる。まずクオリティ低いのを作る。それでも褒めてくれそうな人に見せ、褒めてもらい、いい気になる。それを繰り返して、クオリティは後追いで少しずつあげていく。そういうやり方もアリだと思う。僕みたいな三日坊主は、そうでもしないとそもそも「ものを作らない」。それが一番の停滞であり、恐怖だ。作ろう。お互いに支え合いながら。

後日談

ちなみに審査は1週間くらいで済んだ。聞いていたとおり、最近は早くなってるらしい。せっかく販売開始したので、友達とラインをする時は必ず使うようにしている。個人的にはキティちゃんに匹敵するぐらい可愛いと思っているのだが、会社の先輩方の感想を聞く限り、そうでもないらしい。やっぱり社会は厳しい(どーん!)

買ってくれなくてもいいので、成果を見てほしいです。紹介します。ヤコヴレヴィチくんです。名前は呼びづらいけど、使いやすいです。

ヤコヴレヴィチくん購入リンク↓

山口インスタグラムアカウント↓

https://www.instagram.com/guchion93/

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