父が店を閉めてから会わなくなった人は多い。それでも日常うろつく生活圏内が重なる場合であると、道端でばったりなんていうこともごくたまにある。
　今日はそんないくつかのうちから、わりと最近のものでも書いてみる。

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■栗山先生（仮名）の場合／シチュエーション　道端で遭遇
「あら、お嬢ちゃん久しぶりやねえ。お父さん元気？　そうね。近くでもぜんぜん会わんもんねえ。おい（長崎弁。俺）この間脚ば折ってさ、へへ、入院しとったとよ。やっと退院したとばい。（笑っている）
ねえねえ、コンちゃん（助手的な女の子）のこのジャケット、おいんとやったとばい。カッコよかやろ、着せてみたらちょうど良かったし、気に入ったっていうけんさ。
（コンちゃん「えへへ、いいでしょコレ。センセーから奪っちゃった」）
あ、お嬢ちゃんそっち行くと？　じゃあね、またね。たまには遊びにおいで、セブンのコーヒーばごちそうするけん。お父さんによろしくね」

　栗山先生は、歯科医である。いつもだいたいニコニコしていて、会うときはたいていコンちゃんを連れて、休憩に行くか帰るところだ。遊びにおいでと言ってくれるけれど、デンタルクリニックにはなかなか遊びに行きづらいのでまだ行ったことはない。

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■カワノさん（仮名）の場合／シチュエーション　電話
（リンリン　※電話の着信音）
「あ、もしもし？　・・・アレ？　もしもし？　間違えたかなあ（小声）」
（私「こんばんわ、片山の娘ですよ」）
「あ！　娘ちゃんやったね、ごめんごめん！　片山にかけたつもりやった、びっくりしたあ。久しぶりやねえ、元気にしとる？　お父さんの店のなくなったけんさ、顔ば合わせるところのなかもんねえ。おいも行くところのなかけん、お父さんの後ばしてくれたらよかとに。仕事はまだ同じところに行きよると？　そうねえ。いやあ久しぶりやったねえ。夜遅くにゴメンねえ、寝とったろ？　お父さんにかけてみるけん。じゃあまたそんうちにね」

　カワノさんは父の同級生で肉屋をやっている。このときはお酒が入っているようで、ゴメンゴメンといいつつゴキゲンだった。
　そういえば以前、ちょっとしたことでカワノさんはある疑いのため留置場に入れられたことがあった。その一件は冤罪というか、まあそんなようなことでカワノさんは悪くなかったのだけれど、そのとき周りの人の態度が変わったり、離れていくという経験をしたらしかった。そんななかでうちの父はまったくいつも通りだった。しばらく身動きの取れないカワノさんを気にかけたり、疑いが晴れるよう働きかけていたような記憶がうっすらある。
　そんなことがあってそのときのことを恩におもい、何かの話題から、娘（私だ）が店ば出すなら自分に言ってくれれば力になるから、みたいなことを言ってくれていたと聞いた。
　久しぶりの（間違い）電話での会話から、そんなことを思いだした。

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■ウラミチさん（仮名）の場合／シチュエーション　姿を見かけて声をかけた
「おお、緑紗ちゃん！　気づかんやったばい。久しぶりねえ。変わらんねえ。おいコロナに2回かかったとばい。きつかった～。元気しとった？　今ね、仕事しよるとばい。今日は休み。ナミちゃん（私の姉、仮名）はどがんしとる？　相変わらずね、そうね。お父さんも相変わらずやろう。ナベちゃんの引越しから会うとらんとばい。
そいにしてもコロナは後遺症が大変やったとよ。味のせんとばい。カフェオレば飲んだらお湯のごたった（ただのお湯みたいだった）。緑紗ちゃんも気をつけてね」

　ウラミチさんも父の同級生である。昔はやくざ屋さんをしていたこともあって、しばらくの別荘暮らしのあと地元に戻り、今はひとりで暮らしている。そんな過去から両手の小指はないけれど優しいおじさんである。たいていいつも仕事を見つけたり、見つけても続けるのに苦労しているようだけれど、元気そうで何よりだった。

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■トヨ姉ちゃん（仮名）の場合／シチュエーション　メッセージのやりとり
「緑紗ちゃん明けましておめでとう、今年もよろしくね」
（正月に姪が撮った、父と兄の写真を送った）
「いい写真だね！　マスター、元気そうで安心したよ。ずっと気になってたんだよね。でもちょっと痩せたみたいだけど体調はいいのかなあ。ちゃんと食べてるかな？　私も最近は前みたいにたくさん食べられなくなっちゃった。緑紗ちゃんはまだ若いから、おいしいものいっぱい食べてね！
ナミちゃんやリエさん（母のこと、仮名）は元気？　ふたりとも仕事してるのかな？　みんな集まっていいお正月だったね。今度帰ったら連絡するから、また会おうねー」

　トヨ姉ちゃんは私が保育園の年長から小学校低学年くらいのころに、店にアルバイトに来てくれていたお姉ちゃんだ。当時彼女は大学生で、マコト君という彼氏をよく連れてきていた。いつも店でひとり遊びしていた私をよくかわいがってくれていて、今は東京住まいである。
　ちなみにメッセージで彼女が「いい写真」と言ったそれは、中2の姪がふざけて撮った、動物の耳つきエフェクトばっちりの写真である。いい写真・・・。

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　それぞれ、ホントはもっとしゃべるなどしたんだけれど、全部書いてもしょうがないし、っていうかこれおもしろいかなあ。
　トップ画像は、年末に父を連れて行った彼ら（というのは父と母）の後輩の喫茶店のコーヒー。飲み干すごとに注ぎ足されて、わんこそばのようであった。

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今日の「中2」：ところで正月に会ったとき、この姪に彼氏がいるというのを聞いてヒェーとなった。